コンテンツから始める人間中心設計

コンテンツが枠組みには大きな時間を割くにも関わらず、肝心の中身に手がつけられていないことがあります。様々なデバイスに対応できるようにコンテンツが設計されていない今だからこそ、プロの視点でアドバイスする必要がある分野です。

amplifizrの様子

11月23日、岡山市で amplifizr, Vol. 3 が開催されました。ポッドキャストの第 51 回、54 回に出演された 大月さんが主催するこのイベント。 1 時間弱のセミナーが多い中、amplifizr は数時間つかってじっくり学べる場になっています。

今回は、「マルチデバイス化を見据えたコンテンツ設計 基礎講座」と名付けて、スマートフォンやタブレットという今流行のデバイスをはじめ、今後登場するであろう未知のデバイスを利用する人々に対して、どのようにコンテンツを配信したら良いのかという話をワーク(練習問題)も交えて行いました。今までも何度かコンテンツを話題にした講座を行っていますが、今回は長時間ということもあって、じっくり解説することができました。

コンテキストは未来。コンテンツは今。

今年は例年にも増してコンテキスト(文脈)という言葉を耳にしました。利用者がどのような環境で、何を使って情報へアクセスしているのかを読み取ることで、その人にとって最適なコンテンツを提供できるようになると考えられています。

2009年の IA をテーマにした講演以来、コンテキストに関わる記事を幾つか執筆し続けています。多デバイス化が進んだ今年は特にコンテキストは注目されたキーワードでしたし、私のほうでもモバイルにフォーカスした内容を取り上げて、コンテキストの重要性を訴えかけてきました。

今でもその重要性を信じていますが、コンテンツが様々なコンテキストに合わせることができる状態になっているのでしょうか。技術的な仕組みは出来上がっているものの、肝心の中身がコンテキストに乗り切れていないというのが現状だと思います。途中で切れて内容が分からない本文、重要なことが分からないタイトル、スキミングが難しい文体など、コピーをみるだけでも課題は幾つか見つかります。

また、ページという大きな枠組みに情報を詰め込むという考え方が今でも残っていることから、小さなスクリーンに対して情報を柔軟な形で配信できないという場合もあります。パソコン上でどう見えるのかだけを考えていると、今後人々の主要な Web アクセスの手段になるスマートフォンに対応できません。自動化ツールで省略・簡略化をするのも手段ですが、万能ではありません。

WYSWYGエディタWYSWYGエディタは素晴らしいツールですが、あまりに高機能だと今パソコンで見れる『ページ』としての状態を作り込んでしまうというリスクもあります。

Web サイトであれ、アプリであれ、コンテンツが入る箱には大きな時間を割くにも関わらず、肝心の中身に手がつけられていないことがあります。また、今見ているスクリーン上に情報をどう埋めるかということだけを考えているせいで、様々なデバイスで情報がどう移動し、どのように見られるのかまで設計されていない場合があります。システム・マークアップだけの設計だけでなく、コンテンツそのものの設計が必要になるわけです。

コンテキストは今後考えていかなければならない重要なトピックです。しかし、その前に様々なコンテキストに対応できるようにコンテンツを準備する必要があるでしょう。

利用者中心であればコンテンツを

最近は利用者がコンテンツをアップロードする形式が増えてきたところから、開発・デザインはアップロードの仕組みや、見せ方の設計にフォーカスすれば良いという考えもあるかと思います。また、利用者にとってより良い体験を提供するにはユーザビリティを向上させたり、UI を洗練させれば良いと考える方もいるでしょう。しかし、利用者が本当に必要なことは彼等のニーズを満たすコンテンツがあるかどうかであり、その道筋や手順が素晴らしいかどうかは二の次だったりします。

使いやすいほうが良いです。見た目が良い方が気持ちよく使えます。重要ではないと言っているわけではありません。

こうした全体の枠組みが作り込まれていたとしても、もし利用者の想いに応えることができるコンテンツがなければ意味がないはずです。既にコンテンツがあるという前提から、全体の枠組みの設計から始めがちですが、実のところコンテンツはないに等しい状態ですし、利用者に目を向けていない自己主張が強いコンテンツも少なくありません。

コンテキストにも対応しきれていませんし、コンテンツそのものも見直しが必要なくらい壊れた状態です。壊れているからこそ、Web や新しいテクノロジーを熟知したプロフェッショナルが直していかなければいけませんし、多デバイス化を見据えた設計がされていれば、ビジュアルデザインやインタラクションデザインの表現もより自由になります。

コンテンツもデザインマター

コンテンツは自分たちの仕事ではないと考える人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
今後の世界を考慮したコンテンツ設計することで、見た目や枠組みから始めるデザインプロセスから難なく脱却することができますし、デザインの捉え方も、ビジュアルがどうかだけではなく、コンテンツがどう引き立つのかということを具体的に考えることができる機会を与えてくれます。

今回はイベント告知用に動画を作りました。スライドの公開はないですが、こちらの方で少し雰囲気を掴んでいただけるかと思います。岡山以外でも同じような内容が出来ればと思っていますし、続編も予定していますので、興味がある方はお問い合わせください。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。