切り離せないデザインプロセスと完成品との関係

デザインという言葉は、名詞と動詞の意味が含まれています。デザインに関わる仕事の課題は、相互関係にある2つのデザインの意味を伝え、実践することだと思います。

Design and Design

デザインの話になると、とんち問答のような展開になることがあります。

「デザインとは設計である」「装飾はデザインではない」「付箋紙貼って考えるのがデザインなの?」などなど。デザイナーの間でも、デザインのニュアンスが異なるわけですから、専門外の方が限定した意味でデザインを捉えてしまうのは当然なのかもしれません。

デザインという言葉が捉え難い理由は、デザインがもつ二元性にあると思います。デザインは、名詞としての「デザイン」と、動詞として用いる「デザイン(する)」があります。

デザイン(名詞)
アイデア、加工物、プロセスを経た結果
デザイン(動詞)
考える、分析する、理解する、計画する、アイデアを遂行する

名詞としてのデザインと動詞としてのデザインは、別々に存在するものではなく、相互関係にあります。そして、相互関係であるからこそ、良いデザインが生まれると考えられています。デザインには二つの意味があるのではなく二次元性をもつと表現したのもそのためです。プロセスがないまま何かを作ったとしても、中身のない装飾(ベニヤ板)になります。しっかりプロセスを踏んだとしても、目に見える型として残らないこともあります。

Holmes Book Cover

私たちは、このような書籍の装丁を見て、「素晴らしいデザインだ」と賞賛するでしょう。デザイナーであれば、その素晴らしいイラストやタイポグラフィを生み出すために、デザインプロセスが大きな影響を与えていることに気付くでしょう。それは「作り方」というプロセスだけでなく、「考え方・進め方」のプロセスも含まれています。

デザインの課題は、デザインの二次元性を伝え、実践することだと思います。多くの場合、デザインの評価は結果のみです。本の装丁であれば、その見た目でしょうし、Web サイトやアプリにしても、どう見えるのか・使えるのかが、評価の対象です。評価はそれで良いにしても、プロセスを理解しないまま、結果だけを求めると、質に大きな影響を及ぼします。

それでは、プロセスとは一体なにでしょうか。様々なデザインプロセスがありますが、デザインにおけるプロセスは以下の四点について考え、理解し、形作ることだと思います。

  • 人 : どのような人が、どのようなシーンで接点をもつのか?
  • ビジネス : そもそも、どのビジネスゴールを達成させようとしているのか?
  • 媒体 : 得意とする表現や伝達方法はなにか、不得意なことはなにか?
  • 仕組み : どのような技術が原動力になっているのか。伝達経路は?

プロセスがないデザイン、つまりベニヤ板のようなデザインになるときは、上記四点のいずれかが抜けている場合が多いと思います。

Web という特性を理解しないまま、紙やテレビ媒体と同じような見た目(結果)を追求したプロモーションサイト。利用者ニーズを考慮せず、自己満足で終わっている企業サイト。完成品のみを求めているデザインと、プロセスがあるデザインの質の差は大きいです。その質の違いは、クライアントは気付かなくても、利用者・消費者には痛いほど分かることがあります。

装飾を作る仕事もデザインの一部です。ただ、プロセスが抜けているのであれば、ビジネスにおけるデザインの役割を果たすことが出来なくなります。言い換えれば、プロセスがあることで「装飾を作る」という仕事が、今まで以上に良い結果を生み出しますし、二次元性をもつデザインをひとりで実践できる素晴らしい人材だと思います。

結果だけのデザインであれば機械化できますし、考えるプロセスにしても機械化・自動化・効率化になりがちなところがあります。機械化が難しいデザインとは、名詞としてのデザインと、動詞としてのデザイン両方を意味のある形で繋ぎ合わせることができるところなのかもしれません。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。