デザインが機械化されても心配しない理由

個人的にデザインの自動化は歓迎していて、デザイナーが本来しなければならないことに集中できるのではと期待しています。作ることに費やした膨大な時間を、問題解決のための機能を設計するために費やすことができる機会を与えてくれるからです。

それって本当にオリジナル?

レスポンシブ?フラット?ビデオをつかった背景?CSSアニメーション?ゴーストボタン?いろいろな『トレンド』を見て勉強している間に、すべて導入されている 14ドルのテンプレートをすぐに手に入れることができます。 CMS を活用して情報が更新しやすいレストランサイトを構築したい?専用の WordPress テーマを使えばすぐに完成します。英語だからダメと思うかもしれませんが、UI のローカライズが簡単できるように工夫されているので、使うことを諦めることはありません。

制作者の視点で語られる『オリジナルのデザイン』には、ひとつの矛盾があると思います。最新のデザイン動向を追いかけ、それを実践することが良いデザインに繋がると考えることがありますが、トレンドになる表現はすぐにコモディティ化されていきます。オリジナルを求めているつもりが、誰でも使えるものをゼロから手作りにしているだけという場合があります。手作りのほうが良いという場合はありますが、それが問題解決のためなのか、制作者のエゴなのか分からないことがあります。

目新しい表現もすぐにコモディティ化する

作ることだけがデザイン?

今年はデザインの自動化が目につく年でした。
手軽にロゴを制作できるSquarespace Logoをリリースされたのは今年の初めです。ロゴをわざわざ自分でデザインさせない Tailorを使えば、幾つかの質問に応えるだけで良い感じのロゴを幾つか提案してくれます。10月に話題になった人工知能で Web サイトを製作する GRID は、テンプレートデザインのひとつの方向性を示していると思います。

ネイティブアプリも App Press のように、手軽に作ってリリースできる道具が少しずつ出てきています。

制作者が最新の表現や手法を導入しても、素人目には違いが分からない無難なデザインがすぐに手に入る時代です。むしろ、手作りのオリジナルデザインのほうが、更新を続けなければならない Web サイトにおいて足かせになることがあります。制作者にオリジナリティのある素晴らしいデザインを発注しても、更新ができなければすぐに埋もれて忘れ去れてしまいます。

個人的にこうしたデザインの自動化は歓迎していて、デザイナーが本来しなければならないことに集中できるのではと期待しています。目新しい表現やトレンドを見て、私も「こういうのを作りたい」と憧れることはあります。しかしこうした考えは、本来しなけれればならない問題解決のための設計と実践から目を背けることになる可能性があります。

スティーブ・ジョブズが言った「デザインとは見た目のことだと思っている人がいる。だがデザインとは、何よりも機能そのものだ」を引用するのであれば、見た目に捉われたり、その見た目を作るためだけに力を注いでいるわけにはいかないと思います。制作部分の自動化は、作ることに費やした膨大な時間を、問題解決のための機能を設計するために費やすことができる機会を与えてくれます。

デザインシステムを作る

それでは、まったく作る必要がなくなるのかとえば、答えは「No」だと思います。しかし、それはその人にしか作れないオリジナリティの溢れたものとも少し違うかもしれません。他の媒体とは異なり、Web は公開後も流動的に情報が変化するだけでなく、アクセスするデバイスも多彩な変幻自在な世界です。こうした中、厳密な決まりごとがあるデザインをつくっても、特定のデバイスからだとデザインが崩れたりアクセスが難しくなる場合があります(もちろん、デザイナーがつきっきりで全デバイスのデザインを作り続けるなら話は別ですが)。

大枠は自動化ツールに任せつつ、ブランド独自の色を表現するためにデザインシステムの設計に注力する必要があります。Webサイトやアプリのようなひとつのモノを作るというより、他の人が使うための『道具』を作るというニュアンスのほうが近いかもしれません。持続可能なデザインシステムを設計し共有することは、今のデザインにある特有の挑戦であり、面白い仕事だと思います。

レンタルサーバーで簡単にサイトが立ち上げれるようになったとき。Dreamweaver のような WYSWYG のエディタが出たとき。Movable Type のような手頃な CMS が登場したとき。様々な節目で「手作りのほうが良い。オリジナルのほうが良い。」という声が出ましたが、私たちは時代に合わせて「自分たちにしかできないこと」を実践してきたと思います。今また進化するタイミングには来ているのかもしれません。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。