デザインプロセスに共通する4つの段階と必要とされる能力

どの組織でもつかえる無敵のデザインプロセスはありません。それぞれ自分たちに合うプロセスを探すことになるものの、どの場合でも共通している段階が大きく分けて 4 つあります。

共通するデザインサイクル

出すことを前提としたプロセス

製品のデザイン戦略を定義し、それを基に調査を実施。そこからプロトタイプを作成、分析・検証というサイクルを繰り返すといったデザインプロセスがあります。こうしたプロセスを早く効率的に行う手法としてリーンやアジャイルがありますが、それがすべての答えではありません。基本を知ることは重要ですが、「プロセスに沿って正しくやろう」「こうするべきだ」と固持しても結果に繋がらないことがあります。

手法と同じくらい重要なのが、組織の文化。どのようなスキルセットをもっているのかはもちろん、働き方、コミュニケーションの仕方が手法の取り入れ方に大きく影響します。「銀の弾丸」とも呼べる無敵の手法はありませんし、組織に合う手法を見つけ出すことが『ひとつの旅』と言えるかもしれません。

それぞれ自分たちに合うプロセスを探すことになるものの、どの場合でも共通していることは幾つかあります。今私が考える共通していることをまとめると上図のようになります。図には大きく 4 つの段階が含まれています。

アウトプット

手描きのスケッチからコードで書かれた動作するものまで、まず何かを作り出す段階を指します。「これはいけるかも」と思うアイデアでも、実際アウトプットしてみると「違うかも」と思うものがあります。経験や勘は重要ですが、それに頼り過ぎることで十分な検証ができないということがあります。頭の中の想像に頼らず、まず出してから考えるようにします。

プレゼンテーション

コアチームの中であれば「どうですか?」と尋ねるだけで十分かもしれませんが、ただ見せるだけでは的確なフィードバックを得れないことがあります。Keynote で豪華なプレゼンテーションを用意する必要はありませんが、作った人が意図を説明できることが重要です。

フィードバック

チームメンバー、クライアント、ターゲットにしているユーザーなどから意見を伺います。運営中の製品であれば、取得できるデータもいくつかあるので、それらをフィードバックと見なすことができるでしょう。フィードバックを得るには、必ずといっていいほどフィードバックの目的・仮説を定義しておく必要があります。それがなければ、ただ意見を伺うということになり、アウトプットが錯乱する恐れがあります。

インサイト

ただフィードバックを鵜呑みしても良い製品につながるとは限りません。利用者が発する言葉そのものではなく、その言葉を発した意図を探る工程が不可欠になります。インサイト(洞察)とは、表層的なものから真意を見出す能力を指すことだと思います。

これは、データにも同様のことが言えます。数値をただ鵜呑みにしただけでは、サービス全体の体験を損なう可能性がありますし、何よりも作る側としてのモチベーションを落とす可能性もあります。その数字から見出される人間像だけでなく、彼らの行動の「なぜ」を問うことで新しいアイデアを生む原動力になります。

製品にある死のサイクル

@Third Man Labs がツイートした図の意訳。『死の製品サイクル』はフィードバックへの洞察力の欠落が関係しています。

プロセスに参加するための課題

こうしたプロセス・考え方があれば、大丈夫ということはありません。それぞれの段階に応じて幾つか課題があります。デザイナーとして、それぞれの段階に必要なスキルセットがあります。

早く作れる能力(アウトプット)

紙に描くことから、グラフィックツールをインタラクティブにすることまで、1 秒でも早く作ることが求められます。100% に近づけるために頑張るのではなく、20% の段階でも良いのでアイデア(方向性)を見せるようにします。

もちろん「早く出せ」という指示ではうまくいまきませんので、早く出せる状態を作ることも必要です。例えば、デザイナーより先にアイデアを出すことからスピードの重要性を伝えたり、あまり上手ではないスケッチを出して質は拘っていないことを示すのもひとつの手段です。また、現段階でどのようなフィードバックを得るために作っているのかを知らせることで、アウトプットの作り方も変わるはずです。

伝える能力(プレゼンテーション)

デザイナーとしては当たり前かもしませんが、作品を通してだけでなく、言葉を通じて伝えなければデザインの意図は通じません。そのためには、タイポグラフィが素晴らしいといったデザイナーにしか分からないようなこと以外で伝えなければいけなくなります。

ひとつのトレーニングとして、競合や自分が好きなサイト・アプリについて話をすると良いです。自分が作ったものではないので、客観的になりやすいですし、「好き」「嫌い」といった表現以外でデザインの魅力が語れる機会を作ってくれます。

耳を傾ける能力(フィードバック)

相手からの意見を聞くのは辛いことがあるかもしれませんが、これができないとデザイナーとしてやっていけないほど重要です。デザインを作り出すのはデザイナーの仕事ですが、辿り着くまでのプロセスはデザイナーが独占するものではありません。自分だけの領域ではないと認識するだけでも聞き方が変わるかもしれません。

また、話し方や進め方を工夫することによって変わることもあります。デザイン学校に通っていないと、デザインの批評を体験する機会は少ないです。デザインについて語れる批評をするコツを実践することでフィードバックの出し方を学んでもらうことも必要になるでしょう。

理解する能力(インサイト)

洞察力をもってフィードバックからアイデアに生み出す … と言うのは簡単ですが実践は難しいです。データとクリエイティブの間にアイデアが潜んでいるはずなので、デザイナーはデータに触れる場をもっていたほうが良いでしょう。データ主導ではなく、データに補助された(Data informed)クリエイティブを発揮することで、アウトプットの自信に繋がります。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。