簡単ホームページサービスと次へ導く難しさ

ダンプカーを押し売りしていないか

社会学者エベレット・M・ロジャーズ(Everett M. Rogers)のイノーベーター理論に当てはめると、今ホームページを作りたいと考える人たちは「レイトマジョリティー」もしくは保守的な「ラガード」に入ると思います。Web サイトを作るだけで多くの方が訪れる、ネットワーク効果でどんどん広がるというのは 10 年以上前の話。あらゆる専門家が思いつくことをやり尽くしている現在。「さぁ ホームページでも作ってみるか」と立ち上がってはみたものの、見渡す限り戦後の焼け野原といっても大袈裟ではありません。

今、ホームページを作るのはレイトマジョリティ?

日本ではほぼ普及しきったと言える web。そういう状態だからこそ安心して参入できると考えるのがレイトマジョリティーですが、競争も激しく小手先の手段では変化は生まれません。Web プロフェッショナル達が「ただ、作っただけでは意味がない」と語るのはそのためで、飽和状態の市場で勝ち抜くには、お金と人を十分につかった『全力の投資』が必要になる場合があります。

成功・失敗事例をたくさん見ているだけでなく、経験も積んでいるからこそ、作って終わりにしないよう働きかけるのが私たちの仕事ではあります。しかし、「作っただけでは意味がない」という論調を強くするあまり、やる気の火が付いた人たちを萎縮させてしまう可能性があります。自転車で十分と考える人たちに対して、ダンプカーがいるから大型免許を取りましょうみたいなアドバイスをしていないでしょうか。

  • 高性能・高カスタマイズしたシステムを提案してしまう
  • 書き方を教えないまま、ブログだけ設置してしまう
  • Web 解析ができるようにしたものの、組織内でうまく活用できない
  • 見た目は良いけど自分たちで改修ができないデザインを作ってしまう

JimdoWix のようなホームページサービスは、今まで作ることを諦めていた人たちの背中を押してくれる役割を果たしています。自分たちでやれることを選びながら、少しずつ積み上げることができますし、最近はテーマも豊富にあるので、デザインで失敗するのが難しくなってきています。

Web運用の次のステップが見え難い

最初の一歩は踏み出しやすくなったものの、飽和状態になった市場で戦わなければならない現実もあります。ホームページを立ち上げるという敷居は劇的に下がっていますが、本格的なコンテンツ運用をするという次のステップへ上がるのがより難しくなったように見えます。「簡単」を売りにしているホームページサービスは、作り始めと、ちょっとした web サイトの運用には向いています。より簡単に始めるための機能も充実させているので、ますますスタートダッシュは楽になるはずです。

しかし、本格的な運用を始めたいと考えると、『ホームページ』という枠組みのためだけにコンテンツを作るのは非効率に感じてきます。ソーシャルメディアはもちろん、増え続ける様々な web への窓口に自分のコンテンツを配信したいというニーズは高まるはずです。また、音声・動画などのメディアも運用していきたいですし、できれば一括管理をしたいと思うでしょう。関わる人も増えれば、体制管理も必要になるかもしれません。

Web サイトの成長と各ステージにある『壁』始める壁はほぼゼロになりましたが、続ける・増大させるための壁はまだ大きく立ちはだかっています。

飽和状態の市場だからこそ「始める」から「続ける・大きくする」へ行かなければならないわけですが、その術があまりないように見えます。DrupalMovable Type のようなシステムはありますが、これらは高度な技術力をもった制作会社と中長期的に付き合うか、内製できる人材を雇うことを前提にしていると思います。それが出来れば良いですが、他にも手段があっても良いはずです。

選択肢らしい選択肢が少ないので、ホームページサービスに居座りながらソーシャルメディアの運用をやりくりするという形になるのかもしれません。それはひとつの良い形ですが、web コンテンツをアクセスする手段が web ブラウザだけはなくなってきている現在、web ブラウザだけでしか観覧できないホームページをどう捉えるかは課題になります。

ホームページが必要ないという意味ではなく、人々が Google Home のような新しい手段でモノを注文をするようになったとき、なす術なしという状態は避けたいところです。レイトマジョリティーでも、成長のために新たな挑戦をしなければならないタイミングが来ると思います。そのとき、次のステップへ進める仕組み・機能は必要ですが、そこへ導くことができるアドバイザー・実践者の存在も欠かせません。

まとめ

ホームページ作成がひとりである程度できるようになったのは素晴らしいことですが、独りよがりなものになりやすいのも事実。また、サービス側が提供しているテーマも自己欲求を満たす演出豊富なものも少なくありません。結果、お客様が知りたい重要な情報が画面一番下に埋もれてしまっている場合があります。こうした情報設計・整理をしていくのも、「始める」から「続ける・大きくする」ために欠かせないステップですが、知る手段が少ないと思います。

作って満足してしまいがちなホームページ初心者達をどう導くか。そして「成長のために何かしたい!」と考える人たちに適したアドバイスができる専門家と、コンテンツ・企画をどう増やしていくか。

Jimdo や Wix はゼロからイチにするためのサービスですし、今後もそこを強化していって欲しいと思っています。では、イチをジュウへ増幅させるにはどうしたら良いのでしょうか。手段は無数にありそうですが、オーナーのモチベーションや資産を把握した上で、一緒に歩ける存在が必要なのかもしれません。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。