新聞サイトのコンテンツと広告領域

広告領域とニュースコンテンツのバランスを保つのは難しい課題です。広告モデルはこれからも残る重要な収入源ですが、それ以外の方法としてサービスプロバイダーの感覚を養うことで新たな可能性を示せそうです。

新聞だけではありませんが、雑誌をはじめとした紙媒体メディアではページの一部を広告として販売することによって収入を得ています。Webでもこの手法は流用されており、ページの場所や大きさによって値段が細かく決められています。Webにおけるこうした広告モデルは確立されていますし、すぐにお金が入るだけでなく比較的安定した収益が見込めます。Web サイトを運営するのはタダでは出来ないわけですから、広告はなくてはならない存在です。

しかし、ただ貼付けているだけの広告では読者のサイト利用の邪魔になりかねませんし、だんだん広告が「ないもの」として扱われる場合もあります。現状、日本の新聞サイトではどのように広告が扱われているでしょうか。以下のスクリーンショットは XGA (1024×768) の解像度で撮影したものです。スクリーンショットの下に書かれているパーセントは、表示領域に対して広告がどれくらい占めているかを示しています(ブラウザのボタンや検索フィールドは表示領域に含まれていません)。

広告領域を示したAsahi.comスクリーンショット朝日新聞: 32.7%
広告領域を示した日経スクリーンショット日経新聞: 15.5%
広告領域を示した毎日.jpスクリーンショット毎日新聞: 19.6%
広告領域を示した中日新聞スクリーンショット中日新聞: 27.1%
広告領域を示した産經新聞スクリーンショット産経新聞: 12.4%
広告領域を示した読売新聞スクリーンショット読売新聞: 43.2%

ほとんどのサイトで右上に大きな広告が表示されているのが分かります。右側にスクロールバーもありますし、視点は左から右へと移動するので、目が止まりやすいのが理由でしょう。新聞サイトだけでも多くのサイトでこの部分を広告スペースに利用しています。目立つので広告に最適ですが、同時に読者向けに何か機能やコンテンツを置いておくと便利な場所でもあります。広告をとるか読者の利便性をとるか、運営側として難しい判断だと思います。そのなか日経と毎日はこのエリアを広告ではなくコンテンツエリアとして確保出来ているのが印象的です。

新聞サイトといえば、ニュース速報のような『今』の情報を伝えることがひとつの役割です。鮮度がある情報がページのどれくらいを占めているのかを、上の広告と同じ方法で調べてみました(特集コンテンツや社説などのコラムは省いて、新着情報やランキングのみにしました)。

ニュース領域を示したAsahi.comスクリーンショット朝日新聞: 25.8%
ニュース領域を示した日経スクリーンショット日経新聞: 30.7%
ニュース領域を示した毎日.jpスクリーンショット毎日新聞: 48.1%
ニュース領域を示した中日新聞スクリーンショット中日新聞: 30.0%
ニュース領域を示した産經新聞スクリーンショット産経新聞: 45.6%
ニュース領域を示した読売新聞スクリーンショット読売新聞: 29.2%

何度もサイトを訪れているリピーターは、もしかすると頭の中では上記のスクリーンショットのようになってニュースを読んでいる可能性はありますね。こうしてみると、読むニュースが意外と少ないのが分かります。毎日新聞のレイアウトは他と大きく違いますが、ニュースコンテンツが中央にずっと続いているので、スクロールして次々と読むのには最適かもしれません。毎日新聞と同様、ニュースコンテンツ領域が大きい産経もトップ記事からランキングまで中央にまとまっているのでこちらも見やすそうです。共に広告領域が狭いのでコンテンツをそれだけ盛り込めたということでしょうか。

当然ながら新聞サイトはニュースだけでなく様々なコンテンツを提供しているので、パーセントが少ない読売がボリュームがないというわけではありません。どのサイトも読者に訪れてもらうための工夫(たとえば特集などコンテンツボリュームを増やしたり写真をたくさん使ったり)はしていますが、広告やタイアップ記事などとの関係をいかに保つかがとても難しいという印象を今回の比較から見受けられました。

ニュースといえば、新聞サイトだけでなくポータルサイトで読む方もいると思います。同じ方法で Yahoo! ニュースを調べてみました。

広告領域を示したYahooニューススクリーンショット広告領域: 11.4%
ニュース領域を示したYahooニューススクリーンショットニュースコンテンツ: 61.4%

どの新聞サイトよりも広告領域が狭く、どのサイトよりもニュースコンテンツ領域が広いのが Yahoo!ニュースです。幾つかのニュースソースを通して読むことが出来る利便性も高いです。たくさん置こうと思えば広告は置くことが出来るかもしれませんが、あえてひとつにしている Yahoo!。Yahoo!も新聞サイトのように広告で収益を得ていますが、それだけでなく有料サービスも多数運営しています。無料コンテンツ・サービスでトラフィックを稼ぎつつ、その中から質の高いサービスを求めている顧客へ有料サービスを提供する流れ。こうしたモデルは Yahoo! だけでなく多くの Web サービスが実施しています。

以前執筆した「ウェブらしい新聞サイトのあり方とは」という記事で、私は新聞サイトはサービスプロバイダーになるべきだと提案しました。今のような広告モデルでは収益に限界があるので、広告以外の何かが必要なのは以前から言われてる課題。特にニュースを得る場所がパソコン以外の機器の場合が多いわけですから、今のような広告の置き方では効果がなくなってくるでしょう (小さなスクリーンでは左上から表示されるので、右上の『一等地』は全然見えなくなります)。

Webユーザーはお金を払いたがらないことはありません。価値があると感じればお金を払うという点ではオフラインと何も変わりありません。ただ少し違うのが、支払う対象がコンテンツではなくサービスという場合が多い点です。コンテンツを提供しているサイトも単にコンテンツを有料にしただけでは支払ってくれませんが、そのコンテンツを便利に扱うことが出来るサービスと一緒であれば支払う方は多いでしょう。Yahoo! をはじめとしたサービスプロバイダーのようなモデルを採用することで、広告とコンテンツのバランスを今より上手く保てる可能性もあります。

もちろん、広告はなくなる必要はありませんし、これからも続く重要な収入モデルです。広告も読者に何か価値を与えた瞬間にコンテンツへと変化します。Google AdSense まで高機能でなくても、掲載されているニュースの種類、時間帯、読者の住んでいる地域、時事ネタに沿った情報など、少しでも読者に近づけた広告を載せることで無視されない広告になるはずです。

すぐに収入源になるとは言えませんが、まず何よりも Web 上の読者のことを第一に考えて新聞サイト / サービスを提供することが今より重要なことになるはずです。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。