全面リニューアルの幻想と、取り組むときの注意点

全面リニューアルを通して、見た目を良くしたり、使い勝手を向上することはできます。しかし、見た目も使いやすさも『良いコンテンツがある』という基盤がなしでは活かされません。

Ready to Redesign?

リニューアルでは何も変わらない

Webサイト制作の仕事で、いつの間にか当たり前になっているのが『リニューアル案件』。2, 3 年おきに見た目の衣替えをしたり、使い勝手の向上のためナビゲーションや情報構造の見直しをします。

テクノロジーだけでなく、Web を取り巻く文化や社会が目まぐるしく変わるので、定期的なリニューアルをして『追いつく』ことは必要なのかもしれません。しかし、ただ見た目を変える、情報構造を変えるといった「作る」「作り直す」ということが目的になることがあります。リニューアルをすれば何かが変わるという淡い期待感が寄せられることがありますが、費用対効果が良くないことがあります。

第一印象はとても重要です。
全面リニューアルを通して見た目がよくなれば、印象は良くなるかもしれません。しかし、デザインを変えたからといって、コンテンツも自動的に良くわけではありません。最初の印象がよくても、訪問者のニーズが満たされていないのであれば、金メッキはすぐに剥がれてしまいます。

また、リニューアルが話題性があるのかというと、それほどではないことがあります。刺激的なグラフィック、先進的な演出があっても、同業者や関係者だけがそこに注目しているということがあります。話題になることが目的になってしまい、利用者のニーズを満たしたり、設定したゴールに貢献しているのかというと疑問が残ります。

デザインだけでなく、使い勝手についても同様のことがいえます。ユーザーテストを繰り返して、会員登録のフローを改善することはできるでしょう。しかし、会員登録をしたいと思わせるようなコンテンツがなかったり、うまく伝わらない見せ方であれば、たとえ会員登録フローを良くしても十分な結果を得ることができません。

最近では社内に Web チームを抱える企業が少しずつ増えてきました。それにより、全面リニューアルではなく、部分的に改善したり、長期的にサイトの見直しをするという動きが生まれました。作ることを目的としない、小さなリニューアルを続ける仕事が今後増えてくるかもしれません。そのときコンテンツの設計ができる人が必要とされるでしょう。

リニューアルをするタイミングを見極める

しかしながら、全面リニューアルをすることが良くないとは言い切れません。以下のような場合は、部分的にリニューアルするより、全面的な見直しのほうが良いです。

コンテンツをゼロから作り直す場合
現存サイトのコンテンツすべてを洗い出し、状態を検証するコンテンツ・インベントリー。ひとつひとつ見直すというやり方もありますが、時にはすべてを捨てて作り直したほうが良い場合があります。そのときは「インベントリーを作らないと」と考えず、まっさらな状態で全面リニューアルを検討したほうが良いでしょう。
導線を改めて整理したい場合
どのようにコンテンツを伝えれば、行動してもらえるでしょうか。具体的に何をしてほしいでしょうか。部分的に利用者導線を改善できる場合がありますが、サイト全体の導線をより明確にしなければならないときがあります。利用者の動きと、それに合わせるコンテンツを検討しながらのリニューアルになります。
マルチデバイス対応を見直したい場合
Web サイトをレスポンシブにして、多様化するデバイスアクセスに対応したい場合があります(どの範囲のものにするかはケースバイケースです)。デスクトップファーストから『レスポンシブ化』をするのは困難なので、全体の再設計が必要になります。

全面リニューアルを通して、見た目を良くしたり、使い勝手を向上することはできます。しかし、見た目も使いやすさも『良いコンテンツがある』という基盤がなしでは活かされません。コンテンツは既にあるものではなく、後で入れれば良いものでもありません。

コンテンツの運営のことも含めて整理・設計することは、デザインや使いやすさを考えるのと同じくらい、時間がかかる大仕事です。中・長期を見据えた Web サイトの運営や戦略を考えるのであれば、時間がかかる作業でも基盤からじっくり進めると、デザインを変えたときのインパクトはより大きなものになるでしょう。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。