ひとりから始めるデザイン批評

ひとりでする場合も、複数人で行う場合も、デザイン批評の価値は新たな視点を発見できるところにあります。デザイン批評は複数人で実践するのが理想的ですが、ひとりで自分のデザインを批評することもできます。

アイデアが生まれる瞬間

孤独だから見えにくい

デザインは孤独な作業になりがちです。ひとりでデザインファイルと向き合う時間が長いので、自分がつくったものに対し感情的な繋がりができてしまうことがあります。また、プログラムのように、ひとつのファイルを何人かが触るということも少ないので、ある程度のステージに到達するまで誰もデザインを目にしないことがあります。つまり、『完成品』しか提示されないので、その間どのような試行錯誤がなされたのかも分からないわけです。

自分の視点だけに閉じこもることを避けるために、デザイン批評を通して、何が改善できるかをクライアントや同僚と話し合いをおこないます。批評を意識した会話は、ひとりのデザイナーとしての成長にも大きな影響を及ぼしますが、誰でも会話ができる環境にいるわけではありません。フリーランスはもちろん、まだデザインの会話を始めにくい環境で働いている方もいるでしょう。

デザイン批評は複数人で実践するのが理想的ですが、ひとりで自分のデザインを批評することもできます。

セルフチェックから始める

自分で自分のデザインを批評しても、客観的な意見にならないかもしれません。しかし、自身にどのような質問を投げかけるかで得られるものがありますし、自分の試行錯誤を繰り返したデザインプロセスの振り返りとしても役立ちます。自分ひとりでデザイン批評をするための方法が4つあります。

1. 反対のことを考える

最善を尽くしたデザインでも見方を変えると新たな発見があります。ミニマムな装飾でタイポグラフィを尊重したデザインに対して、あえて「これはミニマムではないかも」と問いかけてみるとどうでしょう。自分の意図とは反対の視点からデザインを見ることで、エッセンスをさらに磨くことができるようになります。

2. 使用デバイスから見てみる

同じデザインなのに、使用デバイスから見ると印象が大きく変わることがあります。たとえ静止画でも、パソコンの Web ブラウザやスマートフォンなど、実機で見る癖をつけておいたほうが良いでしょう。Skala Preview や、Inspect のようなプレビューアプリは幾つかありますし、Pixate のようにプロトタイプツールがプレビューアプリを提供していることがあります。デザインツールだけで見た目を確認せず、実機で見ることで新たな課題が見つかることがあります。

3. よくありそうな質問を考える

自分がクライアントだったら、どのような質問をするでしょうか。彼らが目立たせたいと考えているコンテンツはどれでしょう? 見た目はクライアントのブランドに合っているでしょうか? こうした質問に答えることができないのであれば、自分が作ったデザインの意図が不十分という可能性があります。

自分のデザインを説明する際に、わざわざプレゼンテーションスライドを用意して詳細な説明をする必要はありません。しかし、見ただけでは判断が難しい箇所は短い文章でも構わないので解説を加えておくと良いでしょう。

4. 「もしも」を考える

Web サイトやアプリは印刷のようにすべての要素が固定配置されていることはありません。コンテンツによって見た目が劇的に変わることがあります。デザインツールで描いた『理想の世界』をそのまま形にすることは困難ですし、それを永続的に運用することはまず不可能です。

ビューサイズが変化したらどうなるのか? コンテンツの量で見た目がどのように変化するのか?コンテンツとデザインに関する様々な課題に答えなければいけません。すべてのパターンを考慮したデザインを提示することは難しいですが、「もしも」が発生した際にも耐えられるようなデザインを予め考えることはできるはずです。

まとめ

ひとりでする場合も、複数人で行う場合も、デザイン批評の価値は新たな視点を発見できるところにあります。パソコンと睨めっこした状態が続くと、視野が狭くなりがちです。一歩離れたところから自分のデザインを見るとき、デザインの何を見るかを知っておくだけで、後に続く作業の仕方が変わります。

まずは、ひとりでデザイン批評を始めてみてはいかがでしょうか。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。