スマートフォンは実生活のためのリモコンである

利用者にとってスマートフォンの体験は、アプリから始まっているのではなく、スマートフォンを持った瞬間から始まっています。アプリの画面設計でも、アプリを開く前のことを考えなくては、何を最初に見せるべきなのかも見え難くなります。

様々なリモコン

Techcrunch で、「Great Mobile Apps Are Remote Controls For Real Life(すばらしいモバイルアプリは実生活のためのリモコンである)」 という記事が公開されています。リモコンは、ただボタンを1回押すだけでチャンネルを変えたり、利用者が求めている操作を実現することができます。すばらしいアプリも同様に、面倒な操作や画面遷移を辿ることなく、リモコンのように1タップで済むものであると解説しています。その一例として、最近日本でもサービスを開始した Uber が挙げられています。サイトに「ボタンをタップするだけで、Uber アプリはお客様のドライバーを探します。」と書かれているとおり、リモコンのような手軽さが、人気の秘密なのかもしれません。

昨年の記事ですが、今のスマートフォンの存在を上手に表現していますし、スマートフォン向けのアプリや Web サイトの設計の際に重要な意味をもっています。

忘れてはならないのが、利用者にとってスマートフォンの体験は、アプリから始まっているのではなく、スマートフォンを持った瞬間から始まっているという点です。リモコンに例えるなら、アプリはリモコンのボタンを押した後の状態であるべき、ということになります。アプリを開いて、最初の画面を見たとき、利用者の目的が達成できているでしょうか。もしくは、目的達成のための道筋が明確に示されているでしょうか。たとえアプリの設計をしていたとしても、アプリを開く前のことを考えなくては、何を最初に見せるべきなのかも見え難くなるわけです。

ontent First, Navigation Second「コンテンツを活かすためのUI設計」という講座で、Content First, Navigation Second について解説しました。

コンテンツ講座の終盤、UI 設計の話も少ししていますが、そのとき Content First, Navigation Second について解説しています。これは、「ナビゲーションよりコンテンツのプライオリティを高く」という意味で、コンテンツの表示領域を増やしたり、ナビゲーションの配置を下にする手法を指します。この考え方を画面設計に適応することで、アプリやサイトを開いた直後に、目的を大きく分かりやすく提示することが可能になります。一見、当たり前のように聞こえるわけですが、アプリを開いた瞬間に画面全体にナビゲーションが敷き詰められているアプリは少なくありません。利用者からすれば、リモコンのボタンを押したら、リモコンがまた出てきたようなものです。

スクリーンサイズが大きいだけでなく、利用者の集中力も高めなパソコンの Web 体験。こうしたことから、ナビゲーションをとりあえず上に数段並べたり、複雑なタスクを要求することが可能でした。小さなスクリーンで、どのような環境で使っているか予測ができないスマートフォンでは、どうすれば利用者に集中してもらえるかという UI の課題と、彼等がアプリやサイトを開いた直後に求めているものを的確かつ簡潔に示すというコンテンツの課題が重くのしかかります。また、こうしたスマートフォンにおける設計思想が、徐々にパソコンにも移行しはじめているので注意が必要です。

「自分たちがつくっているアプリや Web サイトが、リモコンのボタンのひとつだとしたら、それは一体何か?利用者が、ボタンを押したとき、何を提供すればいいのか?」

これくらいのフォーカスが、スマートフォンをはじめとした小さなスクリーンサイズのデバイスの画面設計には必須だと思います。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。