Webコンテンツを理解できる人になろう

Web の特性を理解してコンテンツの設計/制作をしなければ、せっかく作ったコンテンツが利用者のもとへ届かなくなる可能性があります。簡単なことではありませんが、これができるからこそWebプロフェッショナルと呼べるのではないでしょうか。

WDF Vol.15 の様子

9月13日に金沢で WDF Vol.15 が開催されました。今回はポッドキャストでおなじみのたにぐちまことさん神森 勉さん、そして初共演になる株式会社キノトロープの生田 昌弘さんとご一緒させていただきました。昨年はコンテンツに関する講演やワークショップをしてきましたが、今年は 1 月以来ストップしていました(最近はデザインプロセスの話が多かったです)。今回は久しぶりのコンテンツ関連の講演ということもあって「コンテンツとはなにか?」という原点に立ち返って話をしました。

「コンテンツ」と言うけど

コンテンツとはなにか?と尋ねられたら「訪問者・利用者のためになる情報」と応える方がいると思います。確かに利用者のためでなければいけないわけですが、立場によってニュアンスが異なる場合があります。

PR やプロモーションでは、自分たちをアピールすることで、お客様に商品・サービスの魅力を伝えるということがあります。つまり、自分たちを語ることこそ利用者のためになる情報ということになるわけです。これが行き過ぎると自己主張ファーストということになりますが、逆に訪問者が良いと思うようなコンテンツを続けることが、売り上げやサイトのゴールに直結するとは限りません。

つまり、「良いコンテンツを作りましょう」といった漠然とした表現でプロジェクトを進めると、照準がブレた内容になることがあります。バランスを見つけ、そのプロジェクトに適した「コンテンツ」を定義する必要があります。実はこれはすごく難しいことで、やらなければならないことも数多くあります。実際コンテンツを作る前にやらなければならないことも多く、「さぁ Web サイト作ろう」と思っている人には呆気にとられるかもしれません。

「コンテンツは王様」という表現が使われることがあります。利用者にとって最も重要なことであることを示しているだけでなく、王様のようなケアをしなければ形にならないということを意味しているのかもしれません。

Webコンテンツが分かる人は少ない

コンテンツを定義し、形にするための素材を用意し、編集を行う … ここまでであれば、雑誌や新聞の編集者がやっていることでしょう。しかしこれでは十分ではありません。 Web の特性を理解した上でコンテンツを管理・編集を行わなければいけないからです。

Web は、テレビや紙といった媒体に比べて非常に柔軟です。紙やテレビのように枠を作ろうとしても、スクリーンサイズ、ウィンドウサイズは様々。枠がない世界でデザインをしなければいけません。また、Web の見方/使い方はユーザーの自由です。雑誌のように表紙という概念もなければ、どのようにコンテンツを扱うのかも利用者が決めることができます。利用者によって、他のサイトやサービスへ共有したり、異なる場でコンテンツを消費することを好みます。

こうした、Web の特性を理解してコンテンツの設計/制作をしなければ、せっかく作ったコンテンツが利用者のもとへ届かなくなる可能性があります。デバイスの多様化が進む現在、「コンテンツへアクセスできるかどうか」という課題はますます深刻になります。

Webコンテンツを設計・開発することは簡単なことではありませんが、これができるからこそ Webプロフェッショナルと呼べるのではないでしょうか。Webコンテンツの仕事をする人はまだ少ないですし、まだハッキリしてないところがありますが、今後も引き続き執筆活動や講演を通して伝えていこうと思います。

今回の講演について

今まではイベント参加者が「得した」「良かった」と思ってもらえるように、なるべく情報をたくさん盛り込んでしまう傾向がありました。しかし今回は「コンテンツとは?」というひとつのトピックに絞って掘り下げるという構成にしました。40分の講演なのでいろいろ話そうと思えばできたかもしれませんが、あえて絞ることで、今までのやり方では難しかった「言葉や考え方の共有」を丁寧に話すことができました。

手法やツールといった表層的な情報は、わざわざイベントで聞く必要がなくなったと思います。そういった情報の価値は限りなくゼロに近づてきていますし、情報収集をする習慣があれば、乗り遅れるということはそうはありません。しかし、Web で紹介されている手法やツールの紹介も表層的な情報に過ぎません。それらを「なぜ」使うべきなのか、自分の環境に「どのように」適応させるのかといったことまで書かれていないことがあります。それを補う場としてイベントがあると思います。

表層的な情報を収集しているだけでは得ることができない「なぜ」について、今回の講演で伝えるように心がけました。スライドのデザインもいつもより派手さをなくし、話に集中しやすくなるようにスタイルもスタイルも変えてみました。わずかな時間の講演でできることは限られていますが、どのように考え、進めていくのかというヒントになれば幸いです。

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
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