Waveから見えてくるGoogleの弱点

上手くいかなかった部分も多々ありますが、様々な可能性を示した Google Wave。しかし、開発中止の発表は「ソーシャルになれないGoogle」の象徴として捉えることが出来ます。

発表された当時から「なんかスゴそうだけど何かよく分からない」と言われていたGoogle Wave。常に細かな改善はされていましたし、今年の 5 月に開催された Google I/O 2010 では Wave を利用したカンファレンスの整理や情報交換に利用されていました。私も先月開催されたセミナー&ワークショップで Wave を利用していたわけですが、発表されてわずか1年でGoogle Wave 開発中止になりました。

一般公開されている Public Wave を見てみると結構盛んなやりとりをされているものも少なくなく、利用者の使い方を反映してどう改善していくのか楽しみだっただけに少し残念です。Wave の技術や学んだことは Chrome OS へ受け継がれるでしょう。

Waveが残したもの

開発が中止になったとはいえ、すべてが無駄だったとは言いきれません。デザインや技術的なところで学べるところはたくさんあります。以下に Wave がもたらしたインパクトをポジティブとネガティブに分類してまとめてみました。

ポジティブな点

HTML5の可能性を提示
Waveの功績は HTML5 に脚光を浴びせたところでしょう(良くも悪くもですけどね)。Wave が出てきた辺から Google サービスのモバイル版では先進的な動きが見られ始めました
超リアルタイムの実装
書いている課程をそのまま見れたり、Waveの成長を再生する機能など Web 上の「リアルタイム」に新たな側面を加えました。Waveではこれを上手く活かすことが出来ませんでしたが、今よりリアルタイムなリアルタイムサービスや時間軸を湾曲させたサービスが登場するかもしれません
Webアプリを拡張するという考え方
様々なWebアプリケーションが世に出回っていますが、機能を拡張出来る Web アプリケーションは少ないと思います。組み合わせ次第では特定のコミュニケーションに特化した「Waveアプリ」も作れたのではないでしょか

ネガティブな点

一言で表せなかった『謎』アプリ
やろうと思えば何でも出来てしまうのが Wave のスゴいところでしたが、何でも出来るが故に人に説明し難いアプリになったのは事実。「メールに代わる新しいコミュニケーションツール」という抽象的なコンセプトがありましたが、蓋をあけると機能がたくさんある何でもアプリでした
人はそれほどクリエイティブではない
開発者側からすれば「何でも出来る道具箱をあげるから、何かスゴいことしてご覧」という思いもあったのでしょう。ただ、Public Wave を見ると分かりますが、ほとんどが掲示板のような使い方です。Wave を使うことの明確なコンセプトもなければ、使うためのシナリオがあまりにも幅広いので、利用者は馴染みのある使い方に留まってしまったのでしょう
機能のスゴさでは満足しなくなった
Waveには様々な技術革新がありましたし、複雑過ぎるほど機能がたくさんありました。技術好きな方も最初はおもしろがっていたものの、徐々に離れていった理由のひとつとして、結局そこには技術しかなかったというところがあります。人が集まるような何かがなかったのでしょうし、それは技術や見た目の問題ではなかったのだと思います

ソーシャルになれないGoogle

先述した「機能のスゴさでは満足しなくなった」に繋がりますが、どうも Google は人を絡めたサービスを作るのが上手ではないようです。素晴らしい技術やインタラクションを実装することが出来ても、そこに人間的な要素(今風でいうならソーシャル的な要素)を加えた途端に意味がよく分からないアプリになってしまうことがあります。唯一、ソーシャルな分野で成功しているサイトといえば YouTube を挙げることが出来ますが、買収したサイトですし類似の自社サービス Google Video はご覧のとおり機械的で静かなサイトです。

ソーシャルアプリが作れないどころか、YouTube 以外に買収してうまくいっているものがないのも懸念点です。ロケーションサービス Dodgeball を早期買収はしたものの上手く軌道に乗らず、開発者は Google を出て foursqure を立ち上げています。他にも JaikuJotSpotBlogger など魅力的なサービスを買収しているものの、宙に浮いたような状態です。

開発者向けにブログを立ち上げたりコードを公開するといった社交性を示している Google ですが、いざアプリケーション開発になるとそうはいかないみたいですね。Facebook の Like ボタンは3億回クリックされていたり、Twitter も 200億ツイートを突破しました。Facebook や Twitter もそれぞれ検索サービスがありますし、利用頻度も増えています。このように、人の動きが大きく変わってきているということは、今までのような広告収入では上手く機能しない可能性があります。

Waveの開発中止の発表は「ソーシャルになれないGoogle」の象徴として捉えることが出来ますし、彼等が未だ開拓出来ていないソーシャルスペースに今後どのようなサービスを提供するのか注目です。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。