アドビさんへ2

新しいバージョンの価値を機能を増やすことだけでしかアピール出来ないのであれば、今後のアップグレードも期待出来ません。使う道具を増やすのではなく使い心地の改善が急務です。

以前「アドビさんへ」という記事を書きました。当時 Dear Adobe という Adobe 製品の不満や改善点を共有するサイトが話題になり、私も記事内で提案を幾つか書きました。そして、その記事を書いたおよそ1年後のAdobe MAXCS5 がほんの少し紹介されました。一体どのような改善点が見られるのか楽しみにしていたのですが、結果はガッカリする内容でした。

もちろん、今回が CS5 のすべてではないですし、Flash Catalyst を中心とした RIA 戦略が話題の中心でした。失望するには早すぎますが、Photoshop CS5 の魅力を紹介するのがパフォーマンスではなく使うかどうかも分からない『スゴい』機能についてだったのは残念ですね。あると良い機能というのは確かですが、絶対必要でもないですし、そのせいでパフォーマンスが落ちているのであれば微妙なところですね。

Adobe 製品は以前は使うのが楽しいかったですが、今はどうでしょうか。立ち上がるのも何かをするのもワンステップ遅いですし、メモリ不足の警告やクラッシュを心配しながら仕事をしなければいけません。CodaPixelmator を使うときのような楽しさはありません。それでも使うのは「楽しかった」という思い出や感覚が残っていますし、Adobe を信じているからかもしれません。しかし、利用者が待ち望んでいるアップデートは Adobe が今プロモーションしているものではないような気がします。

では、Adobe は Dear Adobe をはじめとしたコミュニティの声を聞いていないのかというと、そうではありません。国内外関係なく彼等は耳を傾けていますし、扉はいつも開いています。評判が悪かった Adobe Updater も大幅な改善がなされるそうですし、Firefworks の不満に丁寧に応えたりと素晴らしいのひとことです。日本スタッフの知っている方は頭の切れる方ばかりですし、彼等が働きかけているから Adobe も好きと感じることすらあります。オープンな Adobe なのですが、それが製品開発に繋がっていないような気がします。

特に Adobe のような巨大な国際企業となると製品開発とビジネスは切り離せない部分があるでしょう。実現するべきことも視点が変われば違ってきます。しかし、今の Adobe のソフトウェアモデルは機能面でみてもデザインでみてもズレているような気がします。OS X 10.4 (Tiger) あたりから感じていましたが、OS や周辺アプリの完成度と Adobe ソフトにズレがあるんですよね。極端な言い方をすれば OSX 上で Classic 環境のソフトを動かしているかのような感覚です。今っぽい見た目で素晴らしい機能が盛りだくさんなのですが、感覚がなんとなく古いというか合っていないというか。

個人的に見てみたいのが、もし Adobe が CS 的なソフトウェア開発の呪縛から逃れることが出来るのであれば、どんなソフトを作るかという点にあります。Windows には Windows。Mac には Mac の利点を活かした機能や体験を提供することが出来たら?仕事に必要だと考えられるものをすべて実装するのではなく、仕事を終わらせるために必須になる機能とパフォーマンスを実現出来たら?バンドルではない別の料金体勢やリリースサイクルを提供することが出来たら?

まぁ私のような隅っこにいるような人間の言葉を本気で聞き入れる必要はないでしょうけど、機能を付け足すだけが価値ではないですし、それに気付いてフルプライスを支払う方はたくさんいると思いますよ。私は喜んで払いますし、喜んで払えるソフトウェアが Adobe からリリースされるのを今も期待しています。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。