結ぶWebを作っていこう

楽天トラベルサマーフォラム 2012で「Webは結ぶ場である」というメッセージを基に、基調講演、分科会、ミニセッションを行いました。人と人、人と情報、情報と情報を結び付ける場であり、それらの結びつきをいかにデザインするのかが、私たち Webの専門家たちの役割ではないでしょうか。

7月9日と17日に楽天トラベルサマーフォラム 2012が開催されました。全国の宿泊施設に関わるおよそ 2,000名の方々が、東京と大阪に集結。楽天トラベルという名のひとつのコミュニティの「お祭り」と言えるイベントでした。こうした大きな舞台で話すということで当日の直前まで緊張していましたが、基調講演後にあった名刺交換の列は、フォーラム史上最長の大盛況でした。お客様の中で「今までで一番良かった」と言ってくださる方もいて、正直ホッとしました。

フォーラムでは、基調講演、分科会、ミニセッションと3つの講演を行いました。大きな世界観の話から、実践的なことまで様々な切り口で話しましたが、ひとつのテーマとして「結び」があったと思います。

世界中の人々とネットワークで繋がっていることから、 Web は情報拡散や自己アピールをする場に適しているように見えます。Webを大きなインタラクティブビルボードのように捉えた作り方をしているところは少なくありませんが、私は Web のポテンシャルを最大限に引き出すのはアピール以外のところにあると長年信じています。Webは一方的なアピールをする場ではなく、人と人、人と情報、情報と情報を結び付ける場であり、それらの結びつきをいかにデザインするのかが課題だと感じています。

不特定多数にバラまくのではなく、小さく繋がる(結びつく)ことで、少しずつ広がるのが Webの特徴です。こうした考え方はオフラインでもありますが、成長・拡大が難しいとされていました。しかし、今の Webテクノロジーやソーシャルメディアを活用することで、不可能ではなくなりつつあります。誰でも手軽に情報発信が出来る時代だからこそ、情報をただ浴びせるのではなく、彼等の声を聞き入れた上で情報(コンテンツ)を提供するのが Webらしい情報発信だといえます。

Webサイト運営側の「伝えたい」想いと、利用者側の「欲しい」情報は、常にイコールではありません。利用者のためにと思ってサイトを作っていても、運営側のアピール心が先攻してしまうこともあります。コンテンツを Webサイトに掲載するときに、以下のようなことを考えると思います。

  • 施設がどれだけ素晴らしいかをアピールする
  • 施設を選んでいただく理由を示す

この2つの考え方は、ほんの少しのニュアンスの違いなのかもしれません。しかし、後者のほうが、より利用者のことを考えた上で何を優先してコンテンツを出さなければならないか考えるようになると思います。こうした利用者への歩み寄りが、結びつきに繋がるのではないでしょうか。

綺麗に着飾ったとしても、想いがなければ、結びつきは起こりません。しかし、結びつけることを意識したコンテンツを作り続けば、派手な演出をしなくても相手に響くことがあります。

今後、Webを介して人々と繋がるキッカケがますます増えていきます。Webに繋がるデバイスが増えるだけでなく、Webを便利に使うサービスも増え続けていきます。様々な状況にも想いが伝わるようにするには、想いという名のコンテンツをシンプルに作って伝えたほうが良いでしょう。つまり、今パソコンやスマートフォンのモニターに映し出されている全体的な見た目について考えるより、その中身をどうしたら良いのか、何が必要とされているのか、何が足りないのか・・・こうしたコンテンツの課題にコストを割くほうが費用対効果も高いと思います。

施設の方と少しお話する機会がありましたが、たった一人で、わずかな時間を使って Webに取り組んでいらっしゃる方がたくさんいました。小さなことから初めて、仲間を増やしていくためのヒントがフォーラムの中で見つけることが出来たのであれば幸いです。

さいごに

今回のプレゼンで注意した点は 2つあります。ひとつは、Webの専門用語を最小限に抑えつつ、いかに Webのコンセプトを伝えるのか。もうひとつは、自分たちが得意としていることが活かせる場であることに気付いてもらうということでした。

今回、基調講演のタイトルは「おもてなしから始まるWeb流コミュニケーションデザイン」。おもてなしは、私のようなデザイナーが語るべき言葉ではなく、施設の方たちが毎日の仕事でされていることだと思います。それでもあえて「おもてなし」という言葉を使ったり、Webを「結び」という言葉に例えて説明したのも、テクノロジーとバズワードの下に隠れている Web の世界は、施設での仕事やお客様とのやりとりと非常に近いものだと感じてもらうためでした。言葉から共感してもらい、「なるほど」という気付きに繋がるのではないかと思い、今回のプレゼンのシナリオを構築していきました。

もちろん、顔と顔を合わせて対話をするわけではないわけですから、難しいところは多々あります。また、どうしても技術のことや、Web特有の『結びつきのためのデザイン』を知らなければ先に進めない場合も出てくるでしょう。そんなときに、私たちのような Webプロフェッショナルが案内することが出来るのであれば、施設の方達は、私たちが出来ないと思うような「おもてなし」を Webで示してくるかもしれません。ホームページやアプリを作る以外のところでも、クライアントへデザインを提供する機会はまだまだたくさんあります。どのような形であれ、結ぶ Web を作るお手伝ができれば良いなとおもっています。

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
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