変わりゆく「保存」の存在
アプリケーションに必ずあるコマンドのひとつに「保存」があります。このメタファーとしてフロッピーディスクが長く採用されています。採用された当時は「フロッピーディスクのアイコンがあるから何かを記録するものだろう。よってこれは保存するという意味だ」と関連づけすることが出来たと思いますが今はその逆で「保存をするには、このアイコンをクリック」という認識になっているかと思います。
フロッピーディスクが姿を消してしばらく経ち、知らない人も多いのにも関わらず、このメタファが使われ続けられているのも、ひとつの理由として、アイコンが意味を示すものではなく、意味を示すためのアイコンになり、広く認知されているからかもしれません。Office 2007やGoogle Docsのような比較的新しいアプリケーションでもフロッピーディスクでも採用されているのも、そのひとつの表れでしょう。
Apple製のアプリケーションだと、少し違うアプローチをとっています。Mail.appでは、下書き保存のアイコンは、紙を少し折り曲げた見た目になっています。送信ボタンが紙飛行機なので、なんとなく分かるメタファーではありますが、アイコンだけでは少し意味が伝わり難いです。
保存アイコンは残り続けているアプリケーションは少なくないですが、姿を消し初めているのも事実。例えばiWorkでは、保存はツールバーにもなければ、アイコンもありません。WordPressのようなウェブアプリケーションも、保存は UI として残っているものの、ツールバーから離れており、アイコンがないシンプルなボタンになっています。
特にウェブアプリケーションにある傾向ですが、そもそも「保存をする」という行為が必要とされなくなってきたと思います。自動保存が実装されているアプリケーションは増えてきていますし、操作することで既に記録されている場合も少なくありません。OmniFocusも保存はありませんが、アプリケーションを終了したからといってリストが消えることはありません。今は保存されているかどうかが重要というよりは、履歴がとれたり、復元が可能なのかといった部分のほうが重要になってきているのかな。
既に「保存」は、なくてはならない手動コマンドというより、コンピューターがあらかじめ行ってくれている自動コマンドになってきているといえます。そして、保存は現在の状態を記録するだけではなくなってきてる点も興味深いです。数年前からフロッピーディスクで保存のメタファーを表すのは時代遅れだなんて言われていました。アイコンにするためのメタファーは何が良いかというより、保存の機能そのものが変わりつつあるので、利用者が手動でやらなければならない機能なのかどうかという視点で改めて検討していきたいですね。