思考力を磨くためにライティングを始めよう

ライティングを『別のスキル』と捉えず、デザインの意図を伝えるため、さらにデザインに対する思考力を磨くための手段として続けてみてはいかがでしょうか。

書くことは思考すること

ピューリッツァー賞受賞の歴史学者デヴィッド・マカルー(David McCullough)は、ライティングについてこんな言葉を残しています。

Writing Is Thinking. To write well is to think clearly. That’s why it’s so hard.
書くことは思考することだ。うまく書くことは、明瞭な思考力をもつこと。だから難しい。

頭の中で想像していることをうまくアウトプットできない場合があります。ライティングはもちろんデザインでもよくあることです。頭の中では良い感じにまとまっていることでも、アウトプットしてみると「なんかは違う」という経験は誰でもあると思います。

デザインの場合、スケッチしたりデザインツール上で模索するなどアウトプットの量を増やすことで次第に思考とデザインのギャップを埋まります。同様にライティングもアウトプットの量を増やさなければ、なかなか考えていることを相手に伝えることができません。

デザイナーは作家のように美しい文章が書ける必要はありません。しかし、ドキュメンテーション、プレゼン、企画書など、デザインを文字で伝えなければいけないシーンは必ずあります。デザインの中に隠れている意図・目的・トレードオフは見ただけで理解するのは困難です。

思考とライティングのサイクル

「デザインの意図をきちんと書きましょう」と言うのは簡単ですが、いざやろうとするとなかなか書けない人もいると思います。デザイナーであれば常に思考していますが、ライティングを通して言語化・視覚化ができていない方は少なくありません。ライティングを通して思考を『見える化』することで、さらに思考が磨かれていきます。

書き出す習慣をつける

ここでいう「ライティング」は「上手に書く」ことではありません。ドキュメンテーションや企画書など、読み手に伝わるようなライティングスキルが必要になるシーンはありますが、まず考えていることを書き出すことを優先すべきです。簡単なことですが、意図的にしていないとなかなか上達しません。

ブログを書くより知識を育てる場をもつべきと書きましたが、言い換えるなら、安心して何でも書ける場所をもつことを指します。

ブログだけではありませんが、読み手を意識したアウトプットは構成や文体を気にし過ぎてしまい、自分の考えがなかなかまとまらない場合があります。中身が重要なのに装いばかり気にしてしまうわけです。

一方、自分しか読まない場であれば、自分さえ理解できればどんな文章でも構いません。誤字があっても構成がおかしくても誰も困らないので考えを書き出すことに集中しやすくなります。アウトラインのような短い文章が並んでいるだけでも良いわけです。

Draft スクリーンショット

私の場合、何か思い立ったら一旦 Drafts に書くようにしています。Drafts はその名の通り、テキストの一時的な置き場所(下書き)のような存在です。どこにテキストを書くべきか考えなくて済むだけでなく、アプリ起動後の画面が新規メモなのですぐに書き始めることができます。

最近は Roam Research にある Daily Note(日記のような場所)も併用しています。その日に学んだことや、読んだ記事の中で特に印象に残ったことを書き残すようにしています。ほとんどが引用や短い文章ですが、ちょっとしたことでも文字にする習慣づけになっています。

ライティングで最初に鍛えなければならないのは、文法でも構成力でもなく、頭の中でモヤモヤしている何かを形にすることだと思います。思考とライティングを繋げ合わせることで、自分が本当に伝えたかったことが相手に届きます。特にデザインの場合、文脈が少し変わるだけで良し悪しの判断が変わるので、ライティングによる補足は欠かせません。

いきなりデザインが上達しないように、ライティングもいきなり上手くなりません。自分の考えを書き出すのも簡単そうに見えますが、やってみるとなかなか文章にならない場合があります。ライティングを『別のスキル』と捉えず、デザインの意図を伝えるため、さらにデザインに対する思考力を磨くための手段として続けてみてはいかがでしょうか。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。