組み立てるだけのサイト制作プロセスを変えるヒント

コンテンツが出揃っていないのにも関わらず締め切りという名の下にとりあえず形だけ作らなければならないプロセスから脱するにも、コンテンツをまず最初にしっかり考える雑誌の発行プロセスは参考になります。

書籍や雑誌をはじめとした印刷物。TVやラジオで見られるような広告。デスクトップで動作するソフトウェア。これらの制作プロセスは Web サイト制作において影響を与えてきてモデル。テクノロジーやノウハウが蓄積され独自性も多少出て来たものの、Webサイト制作プロセスは基本的なところは10年くらい変わらないのではないでしょうか。

配布してしまったら終わりの印刷物。一瞬でもインパクトがあればそれで良いテレビCM。企画といっても仕様や機能を決める話になり、始めたら後に戻りにくいウォーターフォール式のソフトウェア開発。いずれのプロセスも長所はありますし、それぞれの形に合っているから使われているわけですが、人と人、情報と情報、そして人と情報が常に双方向に繋がり続けている Web という有機体にはいずれの方法も適していません。

流動的に変化を続ける Web だからこそ、アジャイルソフトウェア開発が受け入れられたのかもしれません。開発陣によるこうした活動に影響されるかのようにデザインプロセスもプロタイプやユーザーテストを繰り返した反復型に変化してきました。アジャイルのように、完成までのプロセスの中の1フェイズが進化している部分はありますが、全体的なプロセスやお客様 / クライアントの関係が従来のままなので長期的にうまく運営できないサイトも出てきています。

他媒体の制作プロセスを参考にして独自に進化することは良いのですが、Webサイト制作プロセスで問題なのは、手を動かして作るという部分だけのプロセスのみ参考にした点にあるかもしれません。以下に雑誌が出来るまでのプロセスを簡単にまとめてみました。

雑誌が完成するまでのプロセスを表した図

書籍ではなくあえてここで雑誌にしている理由があります。雑誌は1誌を出すという意味では出しきりで終わりなのですが、次号という短期的なプランだけでなく、半年・1年先を考えてひとつの雑誌に対して戦略を練ることがあるからです。最初のフェイズである「企画・プランイング」にしても読者層に何を向けて今回は情報発信をするかだけでなく、今後どのように雑誌を前進させていくかも最初の段階で考えるわけです。そしてコンテンツ(文章だけでなく写真や映像も含む)が完全に整った後に初めて設計・制作というフェイズにはいります。

私たちは後半2フェイズの話をすることはありますが、最初の半分に対してどれだけ注力しているでしょうか。コンテンツ開発にどれだけ時間を割いているところがあるでしょうか。

コンテンツへ時間を割かないのに SEO やソーシャルメディアの利用を積極的にしようと考えるのは、妙な話ですよね。

なぜ、Webデザインが装飾デザインになりがちなのかというと、コンテンツが出揃っていないのにも関わらず締め切りという名の下にとりあえず形(箱)を作らなければならない場合があるからです。コンテンツがなくても、他に似たようなサイトがあるわけですから、全体構成を作れなくてはありませんし、ページの情報構造も設計出来なくはありません。しかし、コンテンツがないまま形を作ってしまうばかりに、コンテンツを詰め込んだ後にまた別の制作プロセスが発生するということがあります。

雑誌であればインハウスでライターを抱えている場合もありますし、ライターのネットワークをもっています。しかし、クライアントがそういった人材をもっているケースはまれですし、制作側も文章に手を加えたり、別のアプローチを考えるところが少ないです(原稿のやりとりが出来ない関係になっていることもあります)。今もコンテンツ制作まで引き受ける会社は増えて来ていますが、今後さらに増えてくるでしょうし、サイトを利用した中長期のビジョンを語れる人材も必要になってくるでしょう。

プロモーションで Web を利用するだけであれば、その場を盛り上げる企画があれば十分かもしれません。しかし、中・長期的な関係作り(コミュニケーション)をするのであれば、従来の制作プロセスでは不十分ですし、雑誌の出版までのプロセスは参考になるのではないでしょうか。

コンテンツを先に考えてから制作・開発が出来ないプロセスであれば、投げ捨ててしまったほうが良いかもしれません。

関連記事: コンテンツの質を上げるための第一歩

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。