核の共有がデザインやコンテンツ設計に役立つ理由
撮影: 田中舘 一久
10月19日、CSS Nite in SENDAI, Vol.7 が仙台で開催されました。今までありそうでなかった こもり まさあきさんと一緒に講演できました。私と彼の切り口も話し方も異なりますが、共通のメッセージが含まれているなと、勝手に親近感を抱いております。
無言語の言語化
今回は、Webサイトの核をデザインするための最初の一歩 と題して、ニュアンスがなんとなく伝わっているだけのコンセプトを、共有できるように言語化してデザインに繋げていこうという話をしました。最近コンテンツ設計の話が多かったですが、今回はその前にやらなければならないことを中心に掘り下げて解説しました。
誰もが企業・団体の良さを引き出した Web サイトを作りたいと思っています。しかし、「企業・団体の良さ」や「良い Web サイト」の定義があやふやのまま、制作フェイズに入っている場面を見かけることがあります。その結果、流行に流されたり、個人のテイストでデザインが決まったり、「企業の良さをお客様の価値に合わせて見せる」という視点が失われた情報構造になることがあります。コンセプトという無言語を言語化することは、デザインしていく上で重要なステップです。
9月の Samurai Startup Island の講演でも、ただ作れば良いわけではないという話をしました。共有されているようで、意外と共有されていないコンセプト(ビジョン)を言葉にすることで、デザインの議論がしやすくなるという講演内容でしたが、CSS Nite in SENDAI では、そこをもう少し深堀りした内容になりました。
「なぜ」が語れる企業が生き残る
講演でも紹介したサイモン・シネック氏の「ゴールデン・サークル」。素晴らしい企業は、「なに」ではなく「なぜ」から考えはじめていると、シネック氏は考えています。誰でも「なに」は語れますし、そこがセールスポイントだと考えているところが多いですが、人が魅了されるのは「なぜ」を語り、形にしている企業です。「なに」では差別化が難しい今だからこと重要な視点だと思います。
一見、企業向けの内容にきこえるシネック氏の講演ですが、Web サイトデザインやコンテンツの見せ方・選び方にも関係しています。今あるコンテンツが、自分たちが掲げたい価値と合うのかという品質チェックに役立つだけでなく、必要なコンテンツが何で、どのように見せるべきかという判断基準を与えてくれます。「なぜ」は、制作するときのデザイン原則を固める上で重要な意味をもっているわけです。
意外と難しいのが、コンテンツの品質チェックです。アクセス解析を活用した、コンテンツの数値評価は、数字という共有できるデータがあるので分かりやすいですが、質の評価は数字でうまく表現できません。そこで、企業の「なぜ」を言語化した「デザイン原則」や「メッセージシート」が役に立ちます。こうした共有ツールがあっても、ブレることはありますが、「なんとなく良い感じ」というあやふやなことは避けることができます。
「なぜ」を探求し、言語化することは、ときには時間のかかるプロセスです。作るだけの案件では導入しにくいですが、今後ビジネスパートナーとして、ビジネスの一部として機能する Web サイトを作るためには無視できない部分だと思います。期間が短い案件でも、すべてのコンテンツが見れる文書をつくり、ここから利用者はどのように企業を見てるのかを話し合う機会をもつと、問題点がみえてくるはずです。