今後のWebデザインとの向き合い方

「Webデザインのウソ・ホント」と題して、未来を見据えた Web のデザインを行う上で必要な考え方や取り組み方法を紹介しました。今までどおりに幾つかの静的なカンプを作り続けながら対応するのか、それとも、Web らしくデザインするのか選択する日が近づいてきたと思います。

2012年2月25日 CSS Nite in TAKAMATSU vol.6 が開催されました。CSS Nite は、ツールの使い方や制作のノウハウなど、テクニックを扱うことが多いイベントですが、今回は全編を通してコードが出ないという珍しい構成でした。いつもとは少し違う雰囲気ではありましたが、他の CSS Nite にはない満足感を得た方も多かったのではないかという印象を受けました。イベントの様子はTogetterでまとまっているので参照してください。

私のセッションは、Webデザインのウソ・ホント ~ Web らしくデザインするためのヒントと題して、未来を見据えた Web のデザインを行う上で必要な考え方や取り組み方法を紹介しました。

今月はセミナーで登壇する機会が3回もあり、過密なスケジュールでした。準備は大変でしたが、3回を通して一貫としたテーマがあったかと思います。なんとなく「未来のWebデザイン三部作」と呼べる内容だったかもしれません。まず最初の福井での講演で、予想不可能な未来だからこそ身軽で早く動く体勢が必要であると解説。東京の公演では、未来への対応のひとつとしてレスポンシブWebデザインを紹介。そして先日の高松では、過去のWebデザインのあり方をおさらいしながら、未来への進み方を紹介しました。全部聴いた方はいませんが、通して聴くと繋がるところがある内容になったと思います。

技術とどう向き合うか

Webデザインに限ったことではありませんが、技術(テクノロジー)を抜きに語ることが出来ないのが、この分野のデザインを難しくしているところだと思います。ひとつの画像を追加したいと思っても、最適化やリクエスト数を考慮しなければいけませんし、様々なシチュエーションに適応したデザインの枠組みを構築するにも技術的なノウハウを必要とします。スクリーン上でキレイに見せたらそれで良いのかといえば、そうとは言切れないわけです。

ページをレイアウトするのではなく、Web というスペース(空間)に最適化した体験を構築することは、エキサイティングな工程ではりますが、技術を知らなければ高い品質に辿り着けないという難しさもあります。jQuery のプラグインを放り込んで後は考えなくて良い・・・というほど単純ではないところが、Webデザインを探求するための阻害になっていると思います。見えるところだけ考えれば良いという風潮もアクセシビリティと似たようなところがあります。

マルチデバイス化、タッチインターフェイスがこれからますます広がることにより、2次元的な『絵』で Web デザインを評価出来なくなりつつあります。未来へ対応したデザインを実現するには、どうしても技術を知ることが余儀なくされるわけですが、技術が一歩踏み込めない要因をつくっていることがあると思います。

最近は、国内外でハッカソンが開催されており、デザイナーが主催したり参加しているイベントもあります。よって、デザイナーは技術嫌いであるとは言い切れませんが、今後さらに技術と向き合う機会は増やしていくべきでしょう。習得しなくても、エンジニア/プログラマーとより密接に仕事ができる環境があるだけでも違いがでてきます。

記事や講義では、なるべく分かりやすく解説しようと試みていますが、技術の話を盛り込むことで、入り込めていない方もいます。技術をどのようにデザインに融合させたら理解が深まるのか・・・これは、今後の課題になりそうです。

静的なカンプは過去の手法

スクリーンサイズ、解像度、ユーザー設定など、様々な変化要素がある Web デザインですが、未だに静的なカンプをグラフィックツールで作られている場合があります。グラフィックツールでのテキストレンダリングは Web ブラウザのものと異なりますし、ツール上で作られたカンプは限定された環境でみた仮説に過ぎません。しかし、そこで作られた仮説が、あるべき姿として捉えられ、構築されています。作った後に評価が変わったり、作り直しが発生するのも、あるかどうかも分からない仮説を基にしているからなのかもしれません。

こうした状況から抜けるためにも、Webデザイン(又は Web そのもの)の再評価が必要だと考えています。昨年から少しずつ書き溜めている WD101シリーズもその一環です。絵を描くように Web サイトを構築していられない今、何をしたら良いのかという道しるべが必要ではないかと考えています。

グラフィックツールではなく、いきなり Web ブラウザで構築し始めるのがベストではありますが、グラフィックツールを使うことが間違いではありません。作り方は時と場合で変えていけば良いと思います。しかし、グラフィックツールを使うとしても、今後より Web という媒体への理解や技術的な側面の理解が不可欠になるでしょう。

そろそろ未来を考えよう

今までの作り方が許されていたのも、パソコンだけを考えてればそれで良かったからかもしれません。今はスマートフォンに注目が集まっていますが、今後さらに Web へ繋がるデバイスが増えていきます。そのときに、今までどおりに幾つかの静的なカンプを作り続けながら対応するのか、それとも、Web らしくデザインするのか選択する日が近づいてきたと思います。

Web らしく・・・それは、以下のようなことを指すと思います。

  • 見た目を同じにすることが目的ではない
  • 文脈に応じて最適化する
  • 体験は異なるが、情報にはアクセスできる
  • 全体の調和とバランスを考える
  • 利用者にコントールの余地を与える

当たり前のような話に見えると同時に、今までの作り方・考え方からの変化にどう対応すれば良いのか戸惑う人もいるかもしれません。制作者ではなくその周りの人たちにどう説明すれば良いのか分からない方もいるでしょう。

何事もそうですが、明日からすぐに変わることはありません。しかし、未来に備えて私たちは準備を始めるべきだと思います。仕事環境によっては「そんなことありえない」「自分には無理」と考える方もいると思います。ひとりで変えることが出来ない大きな課題があります。だからこそ、Web コミュニティを活用してほしいですし、声を出して情報発信をしてほしいと考えています。

私もこの場を通して、この記事を読んでいるすべての方の力になれば幸いです。

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
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