非デザイナーも知っておきたいデザインにある葛藤とホンネ

デザイナーが視覚化しているところ以外である『水面下にある大きな氷山』。そこから作るプロセスにいくには、関わる人全員の理解とインプットが欠かせません。複雑な人間関係の中で最適とされるコミュニケーションの仕方を見つけ出すのもデザインプロセスに関わるすべての人にとって重要な課題です。

去年から恒例イベントになっているWebSig 1日学校。古い学校の校舎を使って正に学校で学んでいるような気分で参加できるこのイベント。今年は「デザイン視点のコミュニケーション術」というタイトルで講師をさせていただきました。主催者からの依頼が非常に難易度が高く、扱うトピックからスライドの完成まで悩みながら作りましたが、そのプロセスで見えたところもたくさんあり、イベントも含めて学びと出会いがたくさんありました。

なぜ『作る』以外について語ったのか

デザインの氷山モデルデザイナーの仕事はレイアウト、UI、ルック&フィールなどを作る人。コンセプトや潜在的にあるものを視覚化出来る人と捉える方が多いと思います。作り出すことがデザイナーの能力ではありますが、語られる部分が「作る」という部分に集約してしまいがちです。しかし、実際のところ「作る」部分というのはデザイナーの能力のほんの一部でしかなく、それ以外が重要だったりします。IBM のデザインの氷山モデル(右図)を見ると分かるとおり、デザインにおいて重要なのは見えない部分にあたる利用者の指向や関係性を見出すことです。

使うツールや制作のメソッドは『科学』ですし、Web上でもたくさん共有されています。しかし、そこにたどり着くまでの道のりは『アート』で、捉え難いところから理解に時間がかかります。氷山の下に隠されている『アート』には一体どのような葛藤があり、どのような条件をくぐり抜けて「作る」という課程にいけるのかということを解説しました。

デザインは政治である

この言葉を授業内でしたときに目が点になった方もいたかもしれません。
しかし、デザインにある様々な葛藤や条件を振り返ってみると、政治的な要素が絡んでくることは必然ではないでしょうか。たとえフリーランスであっても人間関係から逃れることが出来ませんし、デザインはデザイナーだけでに任せるには大き過ぎるわけですから人の関与は避けられません。作るだけでなく、人間関係を把握して誰に何をどのように訴えれば響くのかを考えることはデザイナーだけでなく、他の役職でも同じことです。ただ、目に見えないモノ・コトを視覚化し作るという難しいポジションにいるからこそ、デザインに関わるすべての人にとって重要なことだと思います。

自分の意見を通すことだけ考えるのではなく、彼等がどのような立場で話しているのか、同じ単語をどのように解釈して使っているのかを知ることで、理解・コミュニケーションが円滑になることがあります。

デザイナーは「作るヒト」だから、人間関係や影響力なんてディレクターやプロジェクトマネージャーに任せれば良いことではないかと考える方もいるでしょう。制作に携わっているヒトは「作る」こと以外は関係のないことと考えてる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。通るべきあなたの作り出した素晴らしいモノが、人間関係が要因で通らないこともあります。編み出したおもしろいアイデアも、耳を傾けてもらえないこともあるかもしれません。

同じことを数年前から言っていたのに、有名な方が口にすると皆耳を傾ける・・・ということがあるように、人は非合理で不条理な生き物です。自分が考える素晴らしい『作品』をただ作れば認めてもらえるわけではないところが人間臭いところであり、デザインを完成させる上での不確定要素なのでしょう。

どのポジションにいる方でも利用者やビジネスのことを考えて制作をしています。しかし、どの部分をどう強調しているのかは人それぞれですし、微妙なニュアンスの違いが実は大きな見解の違いということもあります。人それぞれ「正しい」「あるべき」姿を描きながら制作プロセスに参加しているわけです。

デザイナーはその中からエッセンスを引き出して作り出してはいるものの、デザイナー自身の好みが入ってしまうことがあります。また、関わる人たちの意見を反映することでらくだをデザインすることになる可能性もあります。「サイトのゴールを達成させましょう」といっても、正しいと考えれるゴールの辿り着き方はひとつではなく、それぞれが正しい中でデザインを進めていくわけですから、政治そのものです。

自身という存在をきちんと知ってもらい、影響力をつけることで、通るべきあなたのアイデアや制作物がクライアントの先まで響くようになると思いますし、より多くの方にデザインプロセスの理解を深めてもらうキッカケになると思います。

非デザイナークラスという名目で授業はしたものの、WebSig に参加している誰もがデザインに関わる重要なメンバーであるということを認識していただきかったですし、「自分には関係ない」という領域は実はどこにもないということを気付いて欲しかったところです。デザイナーが視覚化しているところ以外にある『水面下にある大きな氷山』を知っていただくことで、非デザイナーの方にも共感していただきたかったですし、そこから水面上にある作るプロセスにいくには、関わる人全員の理解とインプットが欠かせないこともキヅキが少しでもあれば幸いです。

スライドはいつものように SlideShare で公開しているので、参考にしてください。

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
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