デザインにある繋げること、導くこと
行程の先にあるもの
コンテンツの仕事ばかりしていると、利用者のことを考えていないように思われてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。コンテンツと利用者は切っても切り離せない関係です。以前は電子書籍としてまとめることができるくらい UX のことを書き続けてたわけですから、利用者のことを無視するなんて考えられないわけです。しかし、最近は意図的に取り上げないようにしています。
UX について頻繁に書いていたときからそうですが、「UX デザインを実践したけど、そのあとどうするの?」という疑問を常に感じていました。プロセスを踏めば、ワイヤーフレームが描けるのかといえば、そうではないことがあります。そのあと、ただ作れば完成するのかというと違うと思います。利用者のことを徹底的に考え、同意を得たからといって、利用者のニーズに応えることができるのかといえば、そんなことはないわけです。
多くの方が『利用者』へ注目し始めていることは素晴らしいことだと思います。技術先行から人の視点や行動に注目して設計しようという考えが大企業にも浸透しはじめました。ただ、『利用者』へ注目が集まれば集まるほど、『中身』にある様々な課題へ取り組むことが出来なくなるのではと危惧しています。コンテンツの仕事をしている人が少ないのも、その兆候だと考えています。
以前紹介した、コンテンツ・インベントリーのようなの手法は、在庫管理が主な目的ですが、「UX のあと …」として以下の役割も果たしています。
- 今あるコンテンツすべてが、利用者像のニーズに合っているものではないと疑い、調査する
- 作り直すものは何か、新しく作るものは何か、プライオリティはなにかを、利用者像を基に決定する
- 評価項目に当てはまるコンテンツは何かを検討し、足りない場合は新たに作る
繋げる役割になろう
コンテンツと利用者は切っても切り離せない関係と先述したように、いずれかが重要という意味ではありません。利用者のことを考えたから、コンテンツが自然と生まれてくるわけではないですし、利用者のことを考えずに、コンテンツを作っても意味はありません。どちらもやらなければいけませんし、片方だけコミットすれば良いプロダクトが生まれるわけではないわけです。真の課題は「UX のあと … 」というより、 2 つの領域を繋げて導くことではないでしょうか。
「繋げる」「伝える」「導く」といった言葉について考えることがあります。
仕事柄、デザイナーや開発者だけでなく、SEO の専門家、マーケッター、Web 解析者と話をすることがあります。彼等との会話でよく感じるのは、目指したい場所は同じということです。話している言葉も違います。道筋も違います。しかし、その中に潜む意図は同じだったりします。そのはずなのですが、上手く他分野(他領域)へ伝えられていないと感じることがあります(これは私自身にしてもそうです)。
Web の仕事に限った話ではありませんが、ひとつのプロダクト / サービスを作るために様々な専門知識やスキルが必要とされる時代です。だからこそ、『繋げる』ことが、ひとつの分野を徹底的に掘り下げるより重要なことだと考えています。少なくとも今はそういう時期だと感じています。
UX を熟知している方は、プログラマーへどう UX を伝えるのでしょうか。フロントエンドエンジニアからみた UX はどのようなものでしょうか。SEO とデザインにはどのような関係があるのでしょうか。
自分が情熱を感じている分野が、外から見たら謎の領域ということにならないようにするには、隙間を埋める『何か』が必要だと思います。