人の行為をデザインする時代
今年初めて開催された IxDA (Interaction Design Association) 主催のイベント Interaction Awards 2012。既に来年のアワードに向けて作品を募集中ですが、今年の受賞者も素晴らしいのばかりです。デバイスを隣り合わせにするだけで、様々な音を奏でることができる LoopLoop や、地元の食材を使いたい人たちが繋がることができる FoodHub など、ビジュアルだけでなくコンセプトも洗練されたものばかりです。
このアワードが他と異なるところが、カテゴリの分け方です。以下がカテゴリの一覧ですが、他では見ないユニークな視点で分類されています。
- Connecting (繋がり)
- 人と人、人とコミュニティとの対話を円滑にする
- Disrupting (破壊)
- 現存の製品やサービスを再構築し、新しい価値観を生む
- Empowering (力付ける)
- 人々が今まで出来なかったことを可能にする
- Engaging (魅了)
- 喜びや注目を集めるだけでなく、意味を与える
- Expressing (表現)
- 表現やクリエイティビティを助長する
- Optimizing(最適化)
- 日々の活動を効率的におこなう
Distrupting (破壊) は例外ですが、カテゴリはすべて、人の体験や可能性にフォーカスしているのが分かります。ソーシャルやモバイルみたいな流行語も使っていないですし、メディア媒体やビジネスモデルで分類していないのも注目すべき点です。審査対象は製品やサービスではありますが、人がどう関わるのか、そこで人の何が変わるのかなど、人間を中心に置いているという姿勢がカテゴリをみると分かります。テクノロジーでもなく、ビジネスでもなく、人とデザインの関わりを祝うイベントだという姿勢が、カテゴリの分け方に表れています。
Interaction Awards のカテゴリは、未来の価値を表現しているのではないでしょうか。人々が求めているものは、最新のテクノロジーでもなければ、その時楽しめる受動的なものでもありません。利用者が舞台の中心であり、彼等がどう変化するのかがすべてと言えます。
私たち作り手が、製品やサービスを評価するとき、インターフェイスの素晴らしさや、技術的な精度など、製品やサービスそのものに注目しがちです。しかしそれは、これからのデザインの評価の仕方とはかけ離れているのかもしれません。製品やサービスを通して、人がどう変わるのかという点に注目して、はじめて評価ができるようになるといえるでしょう。製品やサービスを作るのではなく、人の行為を作るという見方が正しいのかもしれません。
アワードのカテゴリをみると、人の感情に触れることができるかどうかが重要であることを気付かせてくれます。
- よく人が表す感情とは?それに対して製品やサービスはどう応える?
- ネガティブな感情からポジティブに変えてくれる仕組みとは?
- 特定のニーズに応えることでポジティブな感情に繋がるとしたら何?
アワードにノミネートされている製品やサービスは、これらの疑問に応えているものが少なくありません。これらは、見た目が綺麗、インタラクションが面白いといった表層的な部分を超越した、関係を築くためのデザイン提案です。今後、私たち作り手は、どう作るかだけでなく、人々が製品やサービスと通してどのような感情に触れるのかについて議論してかなければいけません。様々な分野の作り手達の対話を通して、Interaction Awards のカテゴリのような、次の時代の価値観について深く学ぶことができると思います。