コンテンツをスマートにするための3つの施策
理想ではなく必須の課題
今後ますますマルチスクリーン化が加速していきます。どのデバイスが流行するか … というより、特定のデバイスのためにひとつひとつ作り込むことが難しくなります。アクセスするためのデバイスは増え続けると同時に、デバイスとの接し方も千差万別です。
Apple Watch のようなデバイスでコンテンツを消費するということはないかもしれません。しかし、そこがコンテンツへの窓口になるとしたら、その小さなスクリーンを使った誘導の仕方や表現を考えなければいけなくなります。コンテンツを消費する場が従来と同様パソコン、スマートフォン、タブレットだとしても、キッカケを与えてくれる入り口は多種多様です。まったく新しいデバイスかもしれませんし、聞いたこともないアプリやサービスを経由して訪れる可能性もあります。
どのような形状にも耐えられるコンテンツとデザインが必要とされる時代。従来のような『ページ』という枠組みから、小さくコンテンツを切り分けて管理することは、必須になりつつあります。「可能であればやりたい」という理想を、「どうすれば実現できるのか」という必須の課題として取り組まなければいけなくなりました。
しかし、コンテンツの細分化をして組み合わせが自由な機能が実装されている CMS があれば解決するものではありません。以前、コンテンツ管理で解決しなければならない課題で示したように、現状把握や体制を考慮しなければ、長続きしなくなります。
そう簡単にはいかないからといって、何もしないわけにはいきません。たった 2, 3 年でパソコン中心の世界からタッチデバイス中心の世界に変わったように、突然対応が必要になる可能性があります。
細分化の本当の目的
コンテンツの細分化は、単に小さなスクリーンへの対応のためだけではありません。ページという誰もが同じものを見るという静的な画面ではなく、多様化する人々のニーズに合わせてスマートにコンテンツを提示するためにあります。コンテンツをスマートにするには、細分化だけではなく以下の施策を行う必要があります。
意味のある構造化
ひとりひとりのニーズに合わせてコンテンツを提示するとなると、自動化が必須になります。小さなコンテンツを組み合わせてパッケージングするには、組み合わせるための『部品』を用意するだけでなく、部品ひとつひとつが何を意味しているのかを定義する必要があります。Schema.org はコンテンツの構造化をするためのひとつのアプローチです。
意味のある分類
構造化されているだけでは十分ではありません。その構造化された『部品』をどのように分類するかによって、コンテンツを提示するタイミングがよりきめ細やかになります。
CMS の多くには、コンテンツにメタデータを割り振れる機能が実装されていますが、個々のメタデータの関係性を示すような分類が難しい場合があります。例えば Microsoft SharePoint を使えば、メタデータの階層化や多角的な分類が可能です。フリーキーワードで割り振るだけでなく、意味のある分類をすることでコンテンツがよりスマートになります。
再利用を前提とした管理
『部品』が自由に組み合わさる仕組みとは、その部品が形を変えて何度も利用されることを意味しています。UI やデザイン要素が再利用できるように、スタイルガイドを作りますが、コンテンツも小さな部品にしたライブラリを CMS によって管理することになります。
再利用ができるようにコンテンツを制作・管理するということは、一貫性が増すだけでなく、コンテンツの品質チェックや運営コストの低下にも繋がります。ただコンテンツを細分化するだけだと、大変になるだけのように思えますが、再利用することを前提にして設計することで細分化が大きな負担にはならないこともあります。
文脈に合わせたコンテンツへ
コンテンツマーケティングの世界では、2, 3 年くらい前から Adaptive Content (アダプティブ コンテンツ)という言葉が頻繁に使われるようになりました。様々なチャンネルや、利用者の文脈に合わせてコンテンツを配信していくための仕組みを作りましょうという考え方です。
アダプティブ コンテンツは、オムニチャンネル、パーソナライズといった言葉に入れ替えることもできます。
利用者の文脈に合わせてコンテンツを配信することが必須になりますが、そこへ辿り着くには幾つかの課題があります。ページという枠組みに囚われたコンテンツ管理がされているとすれば、抜本的な見直しが必要です。また、上記したような構造化や分類を小さな規模でもいいので実施いく必要があります。例えばブログの運営の際に、概要を記入するとか、タグの入れ方を工夫するといったところでも第一歩になります。
マーケティングで火が付いたアダプティブ コンテンツですが、運営側だけでなく、デザイナーを含めた制作者にも関わる課題。様々なスクリーンに向けてコンテンツを配信する時代に向けて、準備を始めるタイミングに来たと思います。