Webのスーパーヒーローになる方法

コミックブックに出てくる様々なスーパーヒーローは、現実からかけ離れた存在のように見えますが、人や社会に影響を与えるデザイナーと幾つか共通点があります。

CSS Nite Shift 8 の様子撮影:飯田昌之

今年で Web は 25 歳になりました。
Web は人類に大きな変化をもたらした革命的な技術です。誰でも情報発信ができるようになったのも、膨大な量の知識や考え方を共有できるのようになったのも、すべて Web があってこそです。そして、Web のもつ可能性をひとりでも多くの方に体感してもらうのが、私たちの仕事です。

これは、デザイナーはとてつもない力を持っていることを意味しています。人々を幸せにするのも、ストレスを与えるのもデザイナーの作り方で決まりますし、時には人の考え方を変えることもできます。この記事の題名にもなっている「スーパーヒーロー」とは、デザイナーひとりひとりを指しています。

とてつもない力を持っているからこそ、私たちは責任をもって力を使わなければいけません。また、クライアントやプロジェクトメンバーに向けて、その力をどのようにすれば正しく使えるのかを伝えなければいけません。

大いなる力には大いなる責任が伴う
“With great power comes great responsibility.”

コミックブックに出てくる様々なスーパーヒーローは、現実からかけ離れた存在のように見えますが、人や社会に影響を与えるデザイナーと幾つか共通点があります。今日はスーパーヒーローから学べる、私たちデザイナーが今実践しなければならない特徴 3 つを紹介します。

巨大な敵に立ち向かう

スーパーヒーローが実践していて、私たちデザイナーもしなけれればならない最初のコトは「巨大な敵に立ち向かう」ことです。スーパーヒーローは弱い敵ばかり相手にしていません。負けるかもしれないと思っていても、自分より強い敵にも恐れず立ち向かいます。私たちも同じように立ち向かわなければいけません。

では、私たちが立ち向かわなければならない『敵』とは誰でしょうか?理解してくれないクライアントですか?それとも無茶振りする上司ですか? 本当に立ち向かわなければならない真の敵は、私たちの頭の中にあります。

「どうせ無理」

私たちはこういう言葉を使うことがあります。 自分は作るだけのポジションだから無理。クライアントが分かってくれないから無理。言ったところで聞いてもらえないからやらない。私たちは行動に移さないための理由を、実に見事に見つけ出して諦めることがあります。新しい技術や手法を学んでも「あそこの会社だからできる」と諦めてしまうこともあるかもしれません。

「どうせ無理」という考えが、デザインを最大限に活かせなかったり、間違った形で使われる要因になります。「どうせ無理」と考えてしまう私たちが最大の敵です。私たちはこれに立ち向かわなければいけません。

自分で言うのはどうかと思いますが、私はクライアントにとって働きにくいデザイナーだと思います。リニューアルしたいですという案件も「すぐにはしません」と返答します。何か作ってくださいという要望も「まずは一緒に考えましょう」と切り返しました。これは違うと思えば、議論もします。「どうせ無理」と諦めず、自分が考える理想のデザインプロセスを実践できるようにしています。結果「作る前に考えることがたくさんあることに気づいた。参考になった。何をすればいいのかわかった」という感想をいただくことがあります。

成功事例や実践した人の話を聞いても「あなたは有名だからうまくいく」 … と「どうせ無理」の思考が働いている方もいるかもしれません。そんな方は、スーパーヒーローから学べる 2 つ目の特徴を真似るときです。

諦めずに続ける

スーパーヒーローは期間限定でスーパーヒーローになっていませんし、一度負けたからスーパーヒーローを辞めることもありません。悩み苦しみながらも、スーパーヒーローとしての役割を果たしています。

私の尊敬している方は、スキルが高い方というより、何年も続けていることがあるところが共有しています。例えば CSS Nite を主催・運営をしている鷹野さんとかどうでしょう。マネタイズも難しい時期もあったかもしれませんし、批判をたくさん受けたこともあったと思います。それでも 10 年続けているから信頼と尊敬を得ているのだと思います。

諦めずに続けているのは、著名人だけではありません。ふにす株式会社のでぐちさんのブログは良い例です。実は彼、平日毎日ブログを書いています。これは簡単そうで、すごく難しいことです。「どうせ続かない」「どうせ見てもらえない」「続けても意味がない」という考えが頭を過って諦めることもできたと思います。それでも続けていることで、彼の意見に耳を傾けてくれる人が増えたそうですし、大きな案件にも繋がったそうです。

私は彼のように毎日ブログを書いていませんが、10年以上続いていますし、ポッドキャストも続いています。Sketch を使って早く作れるようになりたかったので、ブログ記事に掲載する挿絵はすべて Sketch で作るようにしています。限られた時間で何かを作る良い練習になっています。

「自分が考える理想のデザインプロセスを実践している」と先述しましたが、失敗はたくさんしていますし、実践してみたけど、うまくいかなかったこともあります。それでも諦めずに続けるからこそ、結果に繋がるのだと思います。

誰でも「どうせ無理」と考えてしまいます。
一度うまくいったとしても「次は無理かもしれない」と思うこともあります。それでも、諦めずに続けることが、皆さんひとりひとりが考える「実現すべきデザイン」に近づくのだと思います。では、そこまで続けられる、頑張れる原動力は何かというところが、スーパーヒーローの第三の特徴である「自分以外を考える」ところです。

自分以外のことを考える

スーパーヒーローは、周りからカッコイイ!スゴイ!とチヤホヤされたいから続けているわけではありません。家族のため、街のため、世界のため … 「今の自分にできることは何か」を考えて行動しています。決して自己利益のためだけで行動することはありません。

これはデザイナーも同じことが言えます。同業者から「かっこいい」「カワイイ」と言われたいから仕事をしているわけではありません。デザイナーは同業者ではなく、サイトやアプリを使う人たちのこと、それを運営する会社のビジネスのことを考えて作っています。自分が考える「いいもの」を一方的に押し付けることはしませんし、自分の感覚だけで良し悪しを判断することもしません。少しだけ視点を広げて「今の自分にできることは何か」を考えて行動しています。

「利用者のため、ビジネスのためにつくる」

これは言うほど簡単なことではありません。実際のところ、良いものを一所懸命作ればいいものが世に出るほどシンプルではありません。「納期が決まっているから」「これはもう仕方ないでしょう」「上司が言ったから」という理由で、なんとなくプロジェクトが進んでしまうことがあります。

私たちはよく「どうしてこんなサイトを立ち上げてたのだ」と首を傾げることがあります。しかし、制作者のスキルが低いことが原因ではないことがあります。ビジョンの欠落、手段が目的への転換、コミュニケーション不足が、プロジェクトを不本意な方向へ導くことがあります。

デザインは誰が責任を負うべきなのでしょうか?

当然デザイナーの役割だと思います。誰もが「これは自分の仕事じゃない」「誰かがやってくれる」と思っているからこそ、いつの間にか誰も幸せにならないデザインが世に出てしまうことがあります。それを止めるのはデザインが分かるデザイナーの役目ではないでしょうか。自分自身のことだけでなく、プロジェクトにとって正しいことを考え、守り、ときには戦うことがデザイナーの役割だと思います。

まず始めるという行動から

もちろんひとりでは難しいことがあります。スーパーヒーローも、ときには仲間と一緒に大きな敵に立ち向かうように、私たちも一緒に悩み、考え、行動をしなければいけないときがあります。 Web やアプリの世界は、大小様々なイベントが全国各地で開催されています。そこには、同じようなスーパーパワーをもった人たちが集まっています。もちろん、Web 上でもたくさん見つけることができるでしょう。

働く場所も、立場も、スキルも違うかもしれませんが、自分の知らない場所でどのような仕事をして、何に悩んでいるかを知ることが明日からの仕事の糧になるはずです。

この記事を読んでいる方は、皆デザイナーです。ビジュアルだけであろうと、マークアップエンジニアだろうと、バックエンドのプログラマーでもデザイナーです。会社を経営している人もデザイナーだと思います。皆、とても大きな力をもったスーパーヒーローです。

これからもっと Web を良いものへしていきましょう。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。