営業から学べる、ニーズを聞き出すためのノウハウ
GitHub には早い時期から営業チームがいたことで知られています。開発者向けの製品やサービスであれば、良いものであれば口コミでどんどん広がるイメージがあります。GitHubもそういったサービスのひとつのように見えますが、より多くの方に使ってもらうために営業チームを作ったそうです。チームで使わないと GitHub のようなサービスは機能しません。また、有料サービス申し込みも PayPal で支払って準備完了!といった簡単作業ではありません。支払い権限をもっている方は GitHub を見たことも聞いたこともない方もいるはず。そういった場合、営業チームが出向いてお客様の特異なニーズを調査するそうです。
「営業」という言葉に良いイメージをもっていない方もいると思います。ハリウッド映画などで描かれている、売るためなら手段を選ばない営業像が先行しているのかもしれません。しかし、優秀な営業は製品やサービスの改善ための重要な役割を果たしています。彼らは顧客の要求、願望、不安を理解するために時間を費やしています。言い方を変えるのであれば、ユーザーインタビューを仕事の一部として取り組んでいるわけです。デザイナーや開発者であれば、営業を遠ざけるべきではなく、彼らのスキルを盗むつもりで接近したほうが良いと思います。
優秀な営業は、以下のことを実践しています。
- 信頼と共感の獲得
すべてを論理的に考えて行動する人は少ないです。多くの場合「この人のことが好きだから」といった感情的な理由で行動をしています。気に入ってもらわなければ、どんなに優れた製品でも買ってもらえないことがあります。一方的に自分のことを話しているだけでは、相手の心はどんどん離れていきます。営業が顧客の欲求を理解しているのは、相手が本音を話す機会をつくっているからでしょう。 - 言葉や行動の真意の理解
顧客の言葉をそのまま受け入れれば理解したとは言えません。聞き入れるだけでは、死の製品サイクルへ陥る可能性があります。顧客が発する言葉は、真のニーズを見つけるための漠然とした輪郭のようなもの。言葉の真意を理解するためにも、もうひとつ突っ込んだ質問が必要とされるでしょう。
営業の会話だけでなく、ユーザーインタビューにも言えることですが「YES / NO」で答えることができる質問をなるべく避けるべきです。例えば「共有機能を使っていますか?」といった質問では、なぜ共有をしないのか、共有をするときに何を考えているのかといったことを理解するのは困難です。また、その質問の答えをそのまま受け入れるだけでは、機能を基軸にした改善案になりがちで、根本的な解決に繋がらないことがあります。使っているか使っていないかであれば、インタビューではなくデータをみた方が正確な情報を得ることができます。
そこで、結論を目指さない、自由な回答ができる質問から会話をはじめるのが有効です。例えば以下のような質問は会話を進めていく上で有効です。製品やサービスに直接関係ないような質問でも、「使っていない」「難しい」という言葉の真意を理解するのに役立ちます。
- 週末はどうでしたか?
- もし今日早く帰れるなら何をしますか?
- 半年、1年後にはどう変わっていると思いますか?
- 仕事(生活)において何か目標を立てていますか?
- 上司(または友人)は、どのように見ると思いますか?
すべての状況において上記の質問が有効であるとは言えないものの、優秀な営業がつかうような会話が進む質問や考え方はユーザーインビューでも使えます。何気ない会話は信頼を獲得することに繋がるだけでなく、データ解析だけでは分からない人間像を引き出してくれます。聞くのが上手なだけでなく、話を進むめることもできる営業。もし近くに営業がいるのであれば、アプローチしてみてはいかがでしょうか。