知りたい人にも伝わるUXにするために必要なこと

謎のUX

Quantifying the User ExperienceUXを科学する?

今年のはじめ「Quantifying the User Experience」という書籍を読みました。利用者体験をいかに数値化するのかという課題を、統計学と掛け合わせて解説しています。利用者の行動の観察やアンケートといった、ユーザー調査の結果を数値化して UX に活かそうという内容です。所々、数式が出てくるなど、他の UX 関連の書籍とはひと味違う難解な書籍でした。

実は、この書籍がオススメだから記事を書いているわけではありません。これは UX 実践者(もしくは UX デザイナーと呼ばれる人たち)が陥る問題に繋がるのではと思い、この書籍を紹介しました。UX も他の分野と一緒で、深く掘り下げないと理解できないところがたくさんあります。利用者の体験を考え始めると、必然的に社会学や心理学に目が向いてしまうのもそのためでしょう。また、方法論も確立されはじめたこともあり、海外からたくさんの情報が流れてきます。

UX に関わる様々な要素を自分なりに研究して、実践に活かすことが最も重要なことです。そのための勉強だと思いますし、自分と同じよな趣向をもつ人たちと情報共有することも欠かすことはできません。年々、UX への感心は増し続けていますが、同時に内向化していると感じることもあります。分かる人には分かる。分かっている人と分かっていると思うことが心地いい …. ということになりかねないと思います。

横文字と専門用語をつかって、概念図を解説する風景こんなことにはなっていないはずですが...。

学びたい人へのUXはどうか

新しい横文字が表れては消え、分かったかのように思える要素成果物が並ぶようなことがあります。分かる人には分かるから楽しいかもしれませんが、そうでない人にとって近寄り難い存在になっているように思えます。もちろん、勉強したいと思っている側も最低限の知識は必要です。横文字・専門用語を使わないと、かえって混乱する場合もあるわけですから、使うこと事体間違ってないはずです。しかし「もっと知りたい」という方へ手を差し伸べるためのアプローチは模索するべきだと思います。

「うん、そういう問題を解決するために○○デザインの思考を○○で活用して … 」
と、これまた横文字で並べられても、聞いている人にはさっぱり分からないわけです。

たぶん大事なんだろうけど、小難しくて掴み所がない UX と捉えている方も少なくないはず。 それが、UI とセットでしか UX が語れない状態をつくりだしているのではないでしょうか。UI は、UX という全体像の一部に過ぎませんが、視覚的で分かりやすい(入り込みやすい)です。分かりやすいところから学ぶのは良いことですが、その次へ進むための壁が今のところ高いのかもしれません。

自戒を込めて、これからできることを考えてみました。

UXの切り口を増やす
正攻法の解説だけでは、十分ではないと思います。結果的に UX の理解へ繋がれば良いわけですから、語り口や視点を変えて説明してみるのはどうでしょう。UX と言わず、UX を語ることはできます。
作る人を主動にして考えてみる
フロントエンド、デザイナー、プログラマーの視点でUXを語るのもアリです。上流設計を携わっている人だけでは見え難いところや、彼等が抱えている課題もみえてくるはず。
定義や方法論に拘らない
「こうである」「こうしなければならない」「この方法論をきちんと使おう」と凝り固まることはないと思います。UX を熟知しているのであれば、話し手の言い回しやニュアンスを拾ってアプローチを調整することができると思います。
間を提案する
手法・方法論は、とても便利ですし、現場でつかえるものばかりです。しかし、様々な方法論は、プロセスの中にある『点』であることが多いです。プロセスを先に進める、線として繋げていくためのアプローチの共有が足りないです。

昨年くらいに多少『バズった』UX ですが、今は成熟期にはいっていると思います。UX の価値を見つめ直すには、良いタイミングです。UX への理解を深めていくのはもちろん、クライアント、同僚、上司にも伝わる UX も模索していきたいですね。

UX Advent Calendar 2013

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。