ネイティブ広告は新たな接点をつくれるのか
昨年頃から注目を浴びている広告形式で「ネイティブ広告(Naitive Ads)」というのがあります。詳しくは Techcrunch(米)のコラム Where You Can Go Right, And Wrong, With Native Ads を参照していただきたいですが、様々なメディア媒体の形式に合わせた広告を指します。例えば Tumblr の右側にある「Tumblr Radar」のように、見た目がサービスのデザインに馴染んでいて、あたかもコンテンツの一部のように見えるものが多いです。
私が最初にこのタイプの広告を見たのは、数年前の Digg でした。昨年に大幅リニューアルしてしまったので今はありませんが、スポンサーのニュースが他と同じデザインでリストに紛れ込んでいました(もちろん Sponsored という表記はありましたが)。最近だと Facebook が Social Graph を利用して広告をタイムラインに挿入したり、Twitter がプロモツイートをつかった広告モデルを実施してます。
自己主張が激しいわりには利用者クリックされないバナー広告とは異なり、利用者に有益なコンテンツを提供している点で大きな違いがあります。決まった場所と大きさの指定が必要だったバナー広告ではマルチデバイス対応が難しいですが、メディア/プラットフォームに沿って作るネイティブ広告は拡張性・柔軟性も高そうに見えます。
ネイティブ広告のユニークな点は以下のとおり:
- 利用者にとって有益のあるコンテンツを提供することが原則
- メディア媒体のライターに書いてもらう広告記事ではなく、広告主側が企画・制作
- 広告のインパクトではなく、共有されやすいコンテンツがつくれるかにかかっている
- 特定のマーケットやユーザー層に向けて広告配信するのに向いている
これらの特徴が逆に難しくさせているところもあります。各媒体の特性に合わせてコンテンツを作る必要があることから、バナー広告よりコストがかかる可能性があるだけでなく、広い視野で何処と組むのかを検討する必要がでてくるでしょう。「パン」という話題をネイティブ広告で出すとしても Tumblr と Pinterest では、表示の方、コミュニケーションの仕方、共有のされ方においてすべて異なります。同じ写真を強調したサービスでも、それぞれの強みやニュアンスを理解していなければ作れないのがネイティブ広告の難しいところです。
まだ目新しい形式だからクリック率が高いのかもしれませんが、利用者のためのコンテンツであること、利用者の行動や視線の邪魔をする形式ではないという点で将来性を感じる広告形式です。
もちろん、バナー広告がなくなることはないと思います。クリック率は 0.1% にも満たないこともあり、エンゲージメントには直結しなくなるものの、屋外にある広告掲示板のように存在をアピールするには適した形式です。ネイティブ広告も一時期の流行で終わらないのであれば、バナー広告とは異なるコミュニケーションの手法として様々なメディアで活用されるかもしれませんね。
広告の世界でもコンテンツの重要性が注目されているひとつの動きといえます。
第75回目のポッドキャストでネイティブ広告を題材にして話をしているので、興味がある方はぜひ聴いてみてください。