未来をプロトタイプしよう

作る人が作業するだけではなく、クリエイトできる場であること。考える人が書類制作に追われるのではなく、モノに触れて考察できること。それを可能にするツールとしてプロトタイプがあると考えています。

基調講演の様子

12月15日に年末恒例のイベント CSS Nite Shift が開催されました。今年はカバーする分野もグッと広がり、合計 9 セッションという大イベントになりました。また、参加者のおよそ半数が都外からの方で、 Web サイト制作に関わる専門家たちが全国から集まった日になりました。

今年の基調講演は 未来をプロトタイプしよう というタイトルで話をしました。今年は何度か プロトタイプをテーマにした話 をさせてもらいましたが、昨年から感じていた課題へのひとつの回答だと思っています。

繋げるためのプロトタイプ

昨年の CSS Nite Shift で、従来の Web サイト制作のあり方は終わり始めているという話をしました。当時は、Web サイトを制作することだけを考えるのではなく、利用者が必要としているコンテンツをどのように開発・配信するのかを考えるべきだということを訴えかけました。コンテンツについてもっと注視するべきという話自体は良かったのかもしれませんが、今現場でサイトやアプリを作り続けている方達がコンテンツについて考えたいというわけではないと思います。

作るのが好きだから作る。
こうした想いをもった方に対する提案を昨年の Shift ではできていなかった思います。

また、Web サイトデザインには以下のような課題があると感じています。

  • デザイン思考や UX といったコトバが流行したわりには制作フローに大きな変化が見られない
  • 『考える人』と『作る人』が分断しているところもあるように思える(コミュニティとしても)
  • 制作者は作業のノウハウに注目してしまいがちで、考えを形にするためのフローが構築ができていない
  • そもそも制作者が考えるフェイズに足を踏み入れることができないこともある

考えたものを、形にできる人も当然いるわけですが、別々であっても良いと思います。しかし、作る人も考えるプロセスに参加するべきでしょうし、考える人も作るプロセスについてもっと知るべきだと考えています。作る人が作業するだけではなく、クリエイトできる場であること。考える人が書類制作に追われるのではなく、モノに触れて考察できること。それを可能にするツールとしてプロトタイプがあると考えています。

間違いを恐れないプロトタイプ

ひとつのツールとして「プロトタイプ」という言葉を用いたわけですが、もうひとつの意味があります。今まで「これが定説・決定版・鉄則」と呼ばれていたことが通じなくなりはじめています。講演で話したような「パーソナルコンピュータ」という言葉の前提であったり、「写真を撮る」という定義であったり様々です。これはつまり Web サイト制作においても同様のことが言えます。「カンプは必要だから作る」という前提も取り払う時期に来ています。

今までの制作フローが『壊れる』ということは、新たな模索の時代に入ることを意味しています。今、世界各地で模索がはじまっています。中にはうまくいっているものもありますし、失敗例を公開しているところもあります。失敗は、学びの糧になるのであれば良い体験として残ります。変化し続ける Web だからこそ、私たちは柔軟性をもって様々なことを試さなければならないと思います。

未来をプロトタイプしていく。仕事そのものがプロトタイプになるはずです。
今回の講演で「Reimagination(再想像する)」という言葉を用いました。前提を取り払い、再度状況を観察し、自分なりのアプローチを試してみようというメッセージが込められています。今、それができる絶好の機会です。

もちろん、今までのノウハウや考え方をすべて投げ捨てることはありません。根本的なところは変わることはありません。「Reimagination(再想像する)」とは、過去を捨てるのではなく、過去も尊重しつつも、捕われないで物事を捉えることだと考えています。

今までのように作り続けるのであれば、これからもっと辛くなるかもしれません。しかし、「Reimagination(再想像する)」して考え、作ることができる時代が来たという意味では、今までの中で最も面白い時期に来たかもしれません。

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
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