スタートアップとデザインについて
Pinterest, Path, Instagram など、アプリのスタートアップでデザインが重要であると言われるようになってから久しいです。しかし、デザイナーという存在の理解はされているのかというと時々分からなくなります。
考えるきっかけを与えてくれたのが、Wells Riley 氏が公開した「Startups, This is How Design Works」というページ。デザインの全体像が分かる素晴らしいまとめではありますが、デザイナーへの期待値を不意に高めている部分があります。
アプリデザインに絞って考えたとしても、そこで必要とされるデザインは、インタラクション、グラフィック、アーキテクチャ、タイポグラフィ、コーディング、ユーザースタディなど多岐にわたります。これらを総括して「デザイン」と呼ぶわけですが、デザイナーも総括した存在ではありません。インタラクションデザイナーはグラフィックデザイナーと呼びませんから。
特にスタートアップ周辺でデザイン重要と言われてはいるものの、彼らのデザイナーに対する要望が高過ぎて見つからない場合があるのでは。
— Yasuhisa Hasegawa (@yhassy) April 20, 2012
「Startups, This is How Design Works」以前からデザインが重要であるということは、スタートアップは熟知しています。しかし、彼等が求めているデザイナーの姿は、コーディングが出来る Web デザイナー以上に高いものになっていることもあります。
UI出来て、UXへの理解も深く、その上 Web サイト構築もコーディングも含めて出来てしまう。もちろんそういう人いるけど、そんなスーパーマンはごくわずか。
— Yasuhisa Hasegawa (@yhassy) April 20, 2012
そういうスーパーマンは既に忙しくしているので、探そうとしても見つからないのは当然。デザインが重要とは分かっていても、デザイナーは万能薬をもった便利屋さんのように見られていることも。
— Yasuhisa Hasegawa (@yhassy) April 20, 2012
素晴らしいと言われているスタートアップは、有名・優秀なデザイナー(スーパーマン)を抱えていることがあります。こうした事例をみると、自分たちもすべてのデザインが出来るデザイナーを見つけることが出来るのではないかと錯覚してしまうわけですが、実際見つけるのは非常に難しいです。
すべてのデザインが出来るデザイナーを見つけようとするが故に、半年以上かかってしまったケースも聞いたことがあります。
小さく始めたい気持ちは分かるけど、デザインといってもいろいろだから、分野を絞ってデザイナーを見つけるべき。
— Yasuhisa Hasegawa (@yhassy) April 20, 2012
スタートアップだからこそ、小さな精鋭部隊を作りたいという気持ちがあるでしょう。しかし、「デザインができる人」ではあまりにも範囲が広過ぎます。言い方を替えれば「ビジネスができる人」を探しているのに等しいです。
デザインは問題を解決することはある。しかしその前に問題はそもそも何かを探る必要がある。そうすれば、何のデザイナーを雇えばいいのか見えてくるはず。
— Yasuhisa Hasegawa (@yhassy) April 20, 2012
デザインの課題といっても幾つか考えられます。
- アプリのユーザビリティを向上させたい
- ブランディングを見直したい
- ルック&フィールを変えたい
- ターゲティングを変更したい
- Web上でのコミュニケーションを円滑にしたい
それぞれが特化した分野で、求められるデザイナーも異なります。フリーランスを雇うという形でも良いので、まずは自分たちが解決したいデザインとは何かを探し出すのが先決かもしれません。
時々、UX みたいな表現が微妙だなと思うのが、体験という抽象的な表現によって問題提示のフォーカスが緩んでしまい、その上じゃー良くしようという、一種の丸投げお任せ感がでるところ。
— Yasuhisa Hasegawa (@yhassy) April 20, 2012
そうならないようにファシリテートしてくださいってことだけど、それが出来るデザイナーは少ないよ。
— Yasuhisa Hasegawa (@yhassy) April 20, 2012
コミュニケーション能力はデザイナーとして最低限もっているべきスキルのひとつではあるものの、雇われた立場だとデザイナーが主導でファシリテートするのは困難な場合があります。リーダーがデザイン/デザイナーに対してすべてを解決する特効薬のような解釈しかないとすれば、対話はより難しいものになります。
スタートアップの中でもデザイナーが創始者/共同創始者になっているケースを見かけるようになりましたが、これはデザイン主体でプロジェクトを進めることが出来るというメリットがあります。
あとデザインで見落とされがちなのは、生産・制作可能かどうか、エラーからの復帰、安定性やサービス性。見た目どうこう以前に、こうした部分のデザインが重要だったりすると思う。
— Yasuhisa Hasegawa (@yhassy) April 20, 2012
「Startups, This is How Design Works」のコンテンツにも言えることですが、デザインは制作工程や完成したときのルック&フィールを指す場合が多いです。作る部分以外でデザインが必要とされる場合があります。
- 生産・制作可能かどうか
- 限られた予算とリソースで作れるかどうか
- エラーからの復帰
- アプリケーションのエラーだけでなく、方向転換が必要なときに、どう対応するか
- 安定性・サービス性
- バックエンドとコンテンツ運営との連携
上記のような課題に取り組むには、デザインに理解がある人間が早期に参加しているべきですが、デザイナーは作るフェイズまで参加できていない場合があります。
リーダーになる人は作れなくてもデザインへの理解を深めなければいけません。デザインを理解することで、デザイナーという一人の人間がすべてを解決するわけではないということも分かってくるでしょうし、問題解決へのデザインプロセスを自分の組織の文化に合わせて取り入れることができるでしょう。