スタートアップとデザインについて

Pinterest, Path, Instagram など、アプリのスタートアップでデザインが重要であると言われるようになってから久しいです。しかし、デザイナーという存在の理解はされているのかというと時々分からなくなります。

Startups, This is How Design Works

考えるきっかけを与えてくれたのが、Wells Riley 氏が公開した「Startups, This is How Design Works」というページ。デザインの全体像が分かる素晴らしいまとめではありますが、デザイナーへの期待値を不意に高めている部分があります。

アプリデザインに絞って考えたとしても、そこで必要とされるデザインは、インタラクション、グラフィック、アーキテクチャ、タイポグラフィ、コーディング、ユーザースタディなど多岐にわたります。これらを総括して「デザイン」と呼ぶわけですが、デザイナーも総括した存在ではありません。インタラクションデザイナーはグラフィックデザイナーと呼びませんから。

「Startups, This is How Design Works」以前からデザインが重要であるということは、スタートアップは熟知しています。しかし、彼等が求めているデザイナーの姿は、コーディングが出来る Web デザイナー以上に高いものになっていることもあります。

素晴らしいと言われているスタートアップは、有名・優秀なデザイナー(スーパーマン)を抱えていることがあります。こうした事例をみると、自分たちもすべてのデザインが出来るデザイナーを見つけることが出来るのではないかと錯覚してしまうわけですが、実際見つけるのは非常に難しいです。

すべてのデザインが出来るデザイナーを見つけようとするが故に、半年以上かかってしまったケースも聞いたことがあります。

スタートアップだからこそ、小さな精鋭部隊を作りたいという気持ちがあるでしょう。しかし、「デザインができる人」ではあまりにも範囲が広過ぎます。言い方を替えれば「ビジネスができる人」を探しているのに等しいです。

デザインの課題といっても幾つか考えられます。

  • アプリのユーザビリティを向上させたい
  • ブランディングを見直したい
  • ルック&フィールを変えたい
  • ターゲティングを変更したい
  • Web上でのコミュニケーションを円滑にしたい

それぞれが特化した分野で、求められるデザイナーも異なります。フリーランスを雇うという形でも良いので、まずは自分たちが解決したいデザインとは何かを探し出すのが先決かもしれません。

コミュニケーション能力はデザイナーとして最低限もっているべきスキルのひとつではあるものの、雇われた立場だとデザイナーが主導でファシリテートするのは困難な場合があります。リーダーがデザイン/デザイナーに対してすべてを解決する特効薬のような解釈しかないとすれば、対話はより難しいものになります。

スタートアップの中でもデザイナーが創始者/共同創始者になっているケースを見かけるようになりましたが、これはデザイン主体でプロジェクトを進めることが出来るというメリットがあります。

「Startups, This is How Design Works」のコンテンツにも言えることですが、デザインは制作工程や完成したときのルック&フィールを指す場合が多いです。作る部分以外でデザインが必要とされる場合があります。

生産・制作可能かどうか
限られた予算とリソースで作れるかどうか
エラーからの復帰
アプリケーションのエラーだけでなく、方向転換が必要なときに、どう対応するか
安定性・サービス性
バックエンドとコンテンツ運営との連携

上記のような課題に取り組むには、デザインに理解がある人間が早期に参加しているべきですが、デザイナーは作るフェイズまで参加できていない場合があります。

リーダーになる人は作れなくてもデザインへの理解を深めなければいけません。デザインを理解することで、デザイナーという一人の人間がすべてを解決するわけではないということも分かってくるでしょうし、問題解決へのデザインプロセスを自分の組織の文化に合わせて取り入れることができるでしょう。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。