プロセスから学ぶペルソナ活用法
「ユーザーのためにデザインをする」という言葉はデザインの現場ではよく耳にする言葉ですが、ユーザー像が共有されていないこともあれば、それぞれ異なるニーズやゴールを想像していることがあります。また、ユーザーは「お客様」という少し遠い存在になりがちで、感情移入が難しいことがあります。
ペルソナをつかった共有や活用に興味があるけど、どのように始めたら良いのか分からない人は少なくないと思います。そこで「基礎からはじめるペルソナ活用法」という講座をグロースハックアカデミー主催で開催しました。以前からワークショップでペルソナを扱っていましたが、今回は受講時間すべてペルソナについて深く学べるカリキュラムを組みました。
潜在ニーズや行動が分かるペルソナ
ペルソナはユーザーインタビューや Web 解析など様々な調査データを基にして作られます。ワークショップという限られた時間内で本格的なペルソナを作るのは困難です。そこで、2 つのゴールを設定しました。
ひとつは、ワークショップの参加者が、あとで自分たちで同じようにできるようパッケージングすること。短時間でペルソナを作って共有する流れを紹介することで、仕事場で自分たちがワークショップができるようなノウハウを提供しました。精度は低いかもしれませんが、ペルソナ版プロトタイプを作れるようになることで、短時間でユーザー像の共有がしやすくなるのではと考えました。
ペルソナを作成のために様々なデータを参考にするべきですが、参加しやすく短時間で実践できるということで、ユーザーインタビューにフォーカスしました。ユーザーが何を求めているのかといった具体的な要望を聞くのは避け、どのようにサービスや製品に接しているのかを聞き出すように心がけました。
ただ、単にユーザーの要望を聞き出すためのインタビューだと死の製品サイクルに陥ることがあります。彼等の行動や考えの意図を探るための会話ができるのがインタビューをする最大のメリットです。それを基にして作れたペルソナは単なるプロフィールではなく、潜在ニーズや行動が浮き彫りにされているはずです。
感情移入のためのペルソナ
ワークショップで築いたもうひとつのゴールは、ペルソナを作る前の調査からペルソナを実際使ってみるところまでを体験できること。ペルソナだけではありませんが、UX 調査でつくられた成果物はハードディスクの奥底や、書類の山の中に埋もれてしまうことがあります。せっかく作った共有物が活用されない『納品物』では意味がありません。
ペルソナを活用する方法はいくつかありますが、今回は書籍「Gamestorming」でも紹介されている Empathy Map を採用しました(「ビジネスモデル・ジェネレーション」でも紹介されています)。
Empathy Map は、ペルソナが与えられた状況に対してどのような反応や行動をするのかを書き出すために用いられます。自分とは違う視点や生活をしている人の立場になって考えることは簡単そうで難しいことです。思いやりではなく感情移入をする練習として Empathy Map は有効な手段です。
ペルソナへの理解を深めるためのツールとして Empathy Map があると考えると良いでしょう。ペルソナを単に特徴がリストされている『物体』ではなく、具体的なニーズや感情を抱いた『人』と見なして考えやすくなります。受講者の中から「こんなふうに考えたことなかった」「意外と難しかった」という感想をいただきました。 Empathy Map を作ることは必須ではありませんが、やってみることで新たな発見があると思います。
ワークショップで作成した Empathy Map
どのような見せ方が良いのかといったペルソナの作り方が気になる人も少なくありません。なるべく定型フォーマットを設けていますが、状況によって柔軟に見せ方を変えるのが現実です。講座名に「活用法」と付けたのも、作り方ではなく使い方を学んで欲しかったというのがあります。型に囚われず、作ることを目的としないペルソナ活用のヒントになっていれば幸いです。