皆の「良い」を作り、話し合うプロセス
2012年10月20日、金沢歌劇座で UX Kanazawa が開催されました。先月、basecamp NAGOYA でおこなったプロトタイピングのセミナーの金沢版になります。主催者の @ichigami さんのご好意で急遽金沢で開催することができました。かなりギリギリの告知だったのにも関わらず定員オーバーでキャンセルなしという高出席率の会になりました。
基本的に名古屋で行った内容を継承していますが、3時間半という長い時間を活用して名古屋ではカバーできなかったことを金沢で行うことができました。ワークではチーム別で作ったプロトタイプの意図を発表する時間を設けることができましたし、批評の場をもつことが出来たのが長時間イベントの魅力。私の心配とは裏腹に懇親会に持ち越して話し合いをするという濃い時間になりました。
話し合うための領域設計
目的なしにプロトタイプを作るとコスト高になるだけでなく、話し合いがまとまりにくくなります。作り込んでしまって、現段階で話し合うべきではない項目に長く時間を費やしてしまう可能性もあります。プロトタイプの話は、まず最初に「どのツールが効率的なのか」「ツールで使える機能はなにか」といった部分が注目されがちです。ツールはもちろん大事ですが、その前にプロタイプをする目的を設定しておく必要があります。
プロトタイプを作るためのツールは無数にあります。
つまり、プロトタイプの見た目やインタラクションを作り込もうと思えばいくらでもできる時代です。表現は豊かにできるのは良いことですが、そのために話し合うための核心がズレてしまうこともあります。好きなツールを使うのではなく、目的の対話が達成できるツールはどれなのかを考えなければいけません。
UX Kanazawa で扱った紙というツールも、出来ることは様々です。サッとスケッチするものから、図画工作のように切り貼りして作り込むものまであり、最初に何を目的にしてペーパープロトタイピングをするのかを明確にしないと、論点がズレてしまうことがあります。
今から行うプロトタイピングの目的とは何か?そこからどういう話し合いをしたいのか。結果的に何を見出したいのか・・・こうしたプロトタイピングの領域を明確にすることで、作った人のプレゼンテーションの仕方や受け取り方も変わるでしょう。
お互いの良いを共有
今回特に入れたかったのが「批評」というプロセス。批評は、作ったプロトタイプをブラッシュアップさせるのに重要な役割を果たすだけでなく、十分に言語化されていない「良い」を共有することができる機会を与えてくれます。一言で「共有機能を付けたい」「良い体験を意識したい」と言っても、アウトプットされるものが人によって大きく異なる場合があります。その違いを体感し、作り手の意図を探るためにも批評のプロセスは欠かせません。
しかし、批評は大変難しいプロセスです。「自分は青が好き」「こういう動きはウザい」といった主観的な好みを述べる方がでてきます。ビジネスモデル、機能、インターフェイス、エンジニアリングなど語ろうと思えばいくらでも語ることができるわけですから、つい論点がズレたり飛躍してしまう可能性もあります。
プロトタイプを作る前に目的を明確にしようと先述しましたが、これは批評の仕方にも大きく影響します。あらかじめ何を目的に作っているのかを知っていれば、それ以外の話をするのが難しくなります。批評は、見る側の感想や意見を述べる場というよりかは、作り手の意図を聞き出すためであったり、ゴールへの道筋を導くためのプロセス。作る仕事に携わっているのであれば、批評の仕方を学んでおいて損はないはずです。
ワークショップ中、私のほうからコメントをすることがありましたが、デザイン批評のデモンストレーションになるように気をつけて話しました。デザインの批評について知りたい方は、以前「デザインについて語れる批評をするコツ」という記事を執筆したので、参考にしてみてください。