これからのWebデザイン教育
Web Design Education?
Webデザインにフォーカスした教育は、時々頭に浮かぶ話題のひとつ。日本全国に Web デザインに特化した学科をもつ専門学校は幾つかありますし、学ぶための書籍もたくさんあります。ただ多くの場合、スキルセットを習得することが中心というイメージがあります。ソフトウェアの使い方、レイアウト・タイポグラフィ・ドローイングの基礎などを扱うことが Web デザインの基礎教育で軸になっています。デザイン全般にしても、基本的に仕事で即時必要となるスキルセットを身につけることが先行しています。
デザイナーを「Craftman (職人・工芸家)」として捉えるのであれば、それで良いのかもしれません。腕を磨くための情報を収集し、練習・実践を繰り替えしていれば、職人としての価値がより上がるでしょう。そして、スキルを得るための最初のステップとして、ノウハウを教えるという教育は適しているのかもしれません。
しかし、私は Web デザイナーは職人ではないと考えています。
スキルセットを学ぶことが重要ではないと言っているのではなく、そのスキルをつかって形作る理由、そして形作ったものをどう使われるのかを探る部分が抜けていると考えています。この部分は職人が腕を磨くだけでは学ぶことは出来ません。テクノロジー、人、そして社会についての理解が必要になりますし、それらを理解することではじめてスキルも活かされるのではないでしょうか。恐らく腕も磨いてコツコツ作り続けるだけの職人にとって、今のデザインは大き過ぎる領域なのかもしれません。
近年、Web デザインを建築や工業デザインと比較して表現したり、親近感を抱き始めている方が増えているのも頷けます。建築や工業デザインは単に美しいものを作ることを考えているわけではなく、人や社会がどのように作ったものと関わるのかを意識しながら設計しています。また、デザイナーだから技術を知らなくて良いという感覚の持ち主は皆無で、左脳も十二分働かせている人ばかりです。
今ご覧になっているこのサイトではスキルセットに関わる話題はほとんど扱われません。代わりにテクノロジー、人、社会、ビジネスの話題を Web デザインと掛け合わせて語る場合が多いです。その理由のひとつとして、今の Web デザイン教育に欠けている部分を埋めたいと考えているからです。
今月のはじめに Technology Review で、Don Norman 氏のインタービューが掲載されました。ここで Norman 氏は現在のデザイン教育に関する問題を指摘。現在の大学のデザイン科はプログラミングをはじめとしたテクニカルな領域へ踏み切れていなかったり、社会科学を学ぶ余地があまりないことに危惧しています。
Norman 氏が危惧しているものの、状況は既に変わり始めています。大学院向けのプログラムですが UX コースは存在します。また、大企業のデザイナーが生徒と一緒にデザインを考えるクラスも今までのスキルセットを磨くクラスとはひと味違います。当然、日本でも大学が似たようなクラスやコースを提供したり、ワークショップも少なくありません。しかし、もっとあっても良いと思います。
Norman 氏はデザイン教育全般に対する供述でしたが、Webデザインという狭い領域でも同様のことがいえるなとインタビューで改めて思いました。まずスキルセットから入るのではなく、人や社会をはじめとした社会科学の領域も掛け合わせて学べる Web デザイナー1年生コースが必要だなと考えています。もし自分がそういったコースを教えるならこうするかも・・・というメモはとってあるので、時期がきたら共有したいと考えています。
Web デザインの教育であなたが感じる足りないものは何ですか?
Photo is taken by Rainer Ebert