ソーシャルメディアで変わったwebサイトの役割
Webサイトが起点?
利用者のニーズを考えて web サイトを設計し、ゴールまで導く。
Web サイトに限らずアプリケーションにも言える基本的な考え方です。昔から言われている当たり前の事ではあるものの、「Web サイトへ訪れる」という利用者の行動を大前提にしていることに疑問を感じています。
ブランド名など、何かキーワードが思い付けば検索をするでしょう。人によっては、ふと思い出して訪問することもあるかもしれません。しかし、そういったタイミングが 1 日でどれくらいあるでしょうか。Web サイトへわざわざ訪れるのが面倒と感じることもあるくらいです。
ターゲットにしている市場によっては検索が強かったり、わざわざブックマークしてサイトを訪れる人が多いかもしれません。しかし、そうした能動的な行動ではなく、ニュースフィードで偶然見かけた情報をキッカケに行動する人は少なくありません。ジャストシステムによる「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査」によると、10代のスマートフォン利用者のうち、7割はソーシャルメディアやニュースアプリから情報収集しています。
Web サイトのトップページが入り口であり、利用者の行動の起点として考えることがありますが、本当にそうでしょうか。Web サイトが検索結果に表示されないのは存在していないのと同じと考えるように、ソーシャルメディアに現れない Web サイト(ブランド)は存在していないのと同じかもしれません。利用者がブランドと触れる起点は Web サイトではなく、まったく別の場にあるわけです。
たとえ利用者のニーズを考えて設計された素晴らしい web サイトでも、ただ検索されるのを待つだけ、アドレス入力を待つだけだと訪問されることはないわけです。利用者とのコミュニケーションをデザインしていく上で、web サイトは利用者行動の一部しか補っていないことになります。
日々の生活では LINE, Facebook, Twitter, Instagram ばかり使っているのに、仕事になると web サイト作りましょう、バナー貼りましょうみたいな矛盾が生じている。それって本当に見る?自分見てないよね? #cssnite
— Yasuhisa🙃 (@yhassy) 2017年6月10日
内と外をデザインする
では、どのように web サイトの『外』を考慮してデザインすれば良いのでしょうか。「検索する」という行動だけでなく、他にも利用者との接点はあるはずです。様々なタッチポイントと web サイト・アプリの利用前後について考えやすいカスタマージャーニーマップを作るのも手段です。
コンテンツモデルを設計する際も、web サイトでコンテンツをどう見せるのか考えるだけでなく、ソーシャルメディアなどサイトの外でどう見せたいのか考慮する必要があります。運用や技術の制約があるので、何でも細分化すれば良いというものではありませんが、サイト内の見え方だけに留めないよう心がけたいところです。
The Atlantic の記事写真。どこで使われるかで切り取り方が異なります。
重要な部分が注目されるように編集されているのも注目。
利用者のゴールをどう捉えるかによりますが、web サイトに来てもらうことだけをゴールにしないのも手段です。
私の場合、web サイトへ誘導することをせず、あえてソーシャルメディアに合わせたコンテンツを掲載する場合があります。記事は選定していますが、Mediumのほうに転載を続けていますし、Instagram や Twitter にオリジナルコンテンツを投稿することがあります。今はソーシャルメディアが人々がいる場である以上、そこに直接コンテンツを届けなければ見てもらえないという考えからやっています。もう OGP のティザーでも十分ではない場合があると思います。
Web サイトの運用が重要と言われるようになって久しいですが、web サイトそのもののメンテナンスだけでなく、ソーシャルメディアを交えた情報発信をどう運用するかを考える必要があります。たとえ web サイトを制作するだけだとしても、利用者が今何処にいて何をしているのか知っているかいないかで作り方は変わるはずです。
まとめ
Web サイトは今も必要ですが、10 年前と比べると役割は大きく変わってきています。それは人々の行動や考え方にも大きく影響しているはずです。スマートフォンという情報へアクセスする手段が変わっただけでなく、情報の入り口や消費の仕方も変化しています。2017 年現在、ソーシャルメディアを考慮したサイト設計・運用は欠かすことができないと思います。
Web サイトを作るのも仕事のひとつですが、手段が目的になりがちです。Web 上でのコミュニケーションをデザインするという少し広めの視野をもつことで、web サイトという枠組みを超えたコンテンツ設計がしやすくなるはずです。利用者のニーズだけでなく、彼らの文脈を探るようにしましょう。