Webデザインがつまらなく見えてしまう理由

Webデザインは見た目や動き以外にも魅力・良さがあるわけですが、私たちはそれを利用者や Web デザインを勉強したいと思う人たちへ伝えているのでしょうか。汎用性・拡張性を意識するあまり無難なサイトを作り続けてしまう危うさがあります。

Webでも王道化になりつつあるグリッドデザイン

魅力が伝え難いWebデザイン

Webデザインを説明するのは非常にやっかいです。このサイトでも何度も取り上げては書き続けていることですが、上手く説明しきれていない部分は少なくありません。

最近よく感じることが Web サイトの魅力を伝えるのは難しいということと、そもそも「魅力・良さ」という部分も人それぞれであるという点です。いろいろな意味が含まれていると思いますが、Web における「魅力・良さ」は、見た目や動きに集約されることが多いです。

ときどき、Webデザイン専門学校の先生とお話をすることがありますが、HTML の勉強をずっとしてても、最終的に出て来る作品がフルFlashということがあるそうです。当然 Flash サイトが魅力的ではないわけはありません。良い Flash サイトもたくさんあります。学生さんが Flash を選んだ気持ちも分かります。パッと見たときの魅力やインパクトは Flash サイトのほうが感じやすいのは事実です。勉強のきっかけは誰か目指したいと思えるロールモデルがいるという場合もありますし、「こんなサイト作りたい」と思える単純な思いからです。見た目がいいものが作れる、表現が豊かだから HTML/CSS を勉強しようと考える方は少ないでしょう。

「これはこうだから良いサイトなんだ」と解説しなければ分からないのであれば、それを本当に魅力的と呼ぶべきなのかも難しいところです。

Webサイトの「魅力・良さ」には見た目だけでなく、別の側面もあります。それは情報へのアクセスのしやすさであったり、使いやすさです。紙をはじめ Web 以外でのデザインでは、デザイナー(作り手)の意図や意思をデザインする傾向が強いですが、Web ではそれだけでなく利用者の意図や意思をどれだけ反映してフィードバックするかという部分が加わります。人によっては見た目よりこうした部分のほうを「魅力・良さ」として強調する方もいます。しかしこうした魅力は、ある程度長く使わないと分からないものが多く、見た目のように直感的な理解や感動がないものがほとんどです。「これはこうだから良いサイトなんだ」と解説しなければ分からないのであれば、それを本当に魅力的と呼ぶべきなのかも難しいところです。

ユーザビリティ、アクセシビリティは Web サイトの魅力を引き出す要素ではありますが、見た目ほどの分かりやすくないので伝え難いですし、すすんで勉強したいと考える方も少ないと思います。一度、その魅力を感じることが出来れば、徹底的に追及する方はいますが、そのきっかけが少ないかもしれません。

Flashサイトのほうが凄い点

アーティティックな方向へ突き進みつつデザインされているサイトは少なくありません。その多くは Flash や動画を活用したものが多くアッと驚いたりインスピレーションを与えてくれます。しかし、それらのサイトが Web の特徴を活かしているのかどうか分からなくときがあります。確かに Flash サイトであれば Flash の特徴・機能を活かして作られています。しかし、それが一概に Web らしい魅力を引き出しているかといえばそうと言い切れない場合があります。10年以上前は CD-ROM / DVD-ROM で配布されていたものが Web で配信されているだけと感じるものもあります。
※ もちろん Web という多くの方に伝えることが出来る配信チャンネルを利用しているという意味では『Webらしい』と言えますが。

では、HTML/CSS で作られているサイトはどうなのかというと、デザインへの探求力というか壁 (限界) を目指している雰囲気が Flash サイトより感じられません。最近、HTML5, CSS3, JavaScript への注目度が高いということもあり HTML5 Canvas and Audio ExperimentChrome Experiments のようなおもしろい活動も見るようになりました。こうした様々な実験が国内外でこれからも続けられることが、今後の Web デザインの行方に大きく関わってくると思います。表現を豊かにしつつ、Webの特性を活かした様々な試みが実装レベルでもされた時点でやっと Flash サイトのもつデザインへの探究力に追い付くのかもしれません。

幸い Flash は、良くも悪くもパッケージングされた技術なので、Flash 内でデザインを完結させることが可能です。つまり、HTML/CSS サイトで抱えるような複数ブラウザでの見た目の違いやバグに苦しむ状況が少ないです。それが Flash サイトで Flash という技術を利用した興味深い試みがコマーシャルレベルでもされやすい要因になっているのかもしれません。HTML/CSS と Flash で求められている役割が年々明確に分かれてきたというのも Flash のおもしろさに拍車がかかっている可能性もあります。

自ら首を絞めている部分もある

効率化や汎用性を意識しなければならない Web デザインであるがゆえに、魅力が半減している部分があります。毎日のように共有される CSS や JavaScript の Tip 集。流行だと言われているレイアウトのテンプレート集。無料で公開されている画像素材集など、それなりの見た目とインタラクションを手軽に実装出来るようになったとはいえ、同時にどれも同じように見えてしまう結果に陥っています。さらに Framework, CMS など同じにような見た目になりやすい技術をたくさん私たちは利用しています。こうした技術を使うとき「どのような表現にするか」より「どうしたら汎用性を高めることが出来るか」を考える場合が多いでしょう。

「どのような表現にするか」より「どうしたら汎用性を高めることが出来るか」を考える場合が多いでしょう。

さらにビジネスや人と人との直接的なコミュニケーションに関わることが多い Web サイトになると、無難な見た目やインターフェイスが受け入れられやすく、さらに同じような見た目が増えてきます。Webデザインにおいて効率化や汎用性は切り離すことが出来ない課題です。公開したあとも育て続けなければいけませんし、最初デザインした人以外の誰かが手を加える場合があるわけですから、汎用性・拡張性を無視して作るのは危険なことです。しかし、それが結果的に見た目が似たり寄ったりのサイトが増え、周りからあまり魅力的に感じてもらえない要因になっているのではないでしょうか。

Chrome Experiment

Webの魅力をもっと伝えたい

今、私たちがしている仕事は Web をデザインしているというより「この要件を満たすためには A と B と C がいる」という組み合わせを探して組み立てているだけに過ぎないのではないかと感じることがあります。紙デザインへの憧れとノスタルジーを感じながら、どうにかして Web へそのまま移行しようと努力していることもあります。そうした試行錯誤をデザインプロセスと呼ぶことはありますが、これらの仕事をする人が Web デザイナーであるとするのは少し寂しいことだと思います。

先に挙げた実験サイトや TypeKit のようなサービスが次々に出てきており、Web デザインがまたおもしろくなってきたのがここ1年くらいでしょうか。日本国内でも積極的に勉強会や Web サイトを立ち上げて実験的な試みがなされています。こうした動きはますます活発になる予感もしており、いい加減に引きこもり体質から脱して私も参加しないといかんとよく考えるわけです。

あと必要と感じるのは、少しだけ実験的な試みを実装レベルで出来る機会を増やすことだと思います。これは CSS3 を使うといった表現の一部だけのことではなく、UI、情報構造、ページ遷移も含めてです。「これはどうせ今仕事で使えないから」という環境に常にいるのであれば、クリエイティブの幅は狭まってしまうのは当然です。奇抜な表現をしようという意味ではなく、少し違ったアプローチを提案して利用者の反応をリアルに感じてみる機会がもっと増えるべきなのかなと。結局、出してみないと分からないことばかりですし、後で修正を加えることが出来るのも Web の良さですしね。

Webブラウザをはじめとしたソフトウェアのレイヤーだけでなく、ハードウェアをみても Web アクセスの多様性が豊富になってきました。この今というおもしろいタイミングで仕事しているからこそ、Webの魅力をもっと伝えたいと感じることがありますし、その機会は本当にたくさん出てきたなと感じます。今だから作り続けないといけないなと強く思いますし、Webデザインへの探求もしていきたいなと思う2010年3月の朝でした。

TypeKit スクリーンショット

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。