デザイナーも身につけておきたい意図を引き出す質問の秘訣
質問の仕方を工夫し、相手の見解に興味を示すことで、プロダクトだけでなく、自身の仕事への理解も深まります。
質問の仕方で変わることがある
デザイナーにとって、プロダクトマネージャーやエンジニアとの効果的なコミュニケーションは、良いデジタルプロダクトを生み出すために欠かせません。ドキュメントや打ち合わせを通して施策への理解を深めていきますが、情報のインプットだけでは分からないことがあります。そこで、意図を明らかにするために質問をするわけですが、ただ「なぜですか?」と尋ねても望む返答が得られない場合があります。では、どのように質問すれば良いのでしょうか。
私自身、まだ完全にできているわけではありませんが、質問するときの秘訣がいくつかあります。
相手の見解に興味を示す
良い質問をするために最も重要なのは、純粋な好奇心です。プロダクトマネージャーやエンジニアの見解に興味を持ち、もっと知りたいと思う気持ちが、良い質問を生み出します。抽象的に聞こえるかもしれませんが、形式的な質問を覚えるより、ずっと効果的です。相手の言葉に耳を傾け、その内容に基づいてさらに質問するだけでも、プロダクトに対する理解が自然と深まります。
例えば、プロダクトマネージャーに「施策の目的は何ですか?」という質問をするのではなく、「このプロダクトが解決しようとしている最も重要なユーザーの課題は何ですか?事業課題とのバランスをどう捉えたのか教えてください」といった質問を通して、プロダクトマネージャーの視点を理解できます。
一般的すぎる質問を避ける
ありきたりの質問や、簡単に答えられてしまう質問は避けましょう。一般的な質問は「ユーザー価値を提供するためです」といったありきたりな回答になりやすいので注意が必要です。代わりに、プロダクトの本質や、チームメンバーの専門知識をより深く知ることができるような質問を心がけます。
例えば、エンジニアに「この機能の実装は難しいですか?」と聞くのではなく、「この機能を実装する際に、考慮すべき技術的な制約や課題はありますか?実装するとした場合のトレードオフは何ですか?」と質問することで、技術的な側面からプロダクトを理解し、デザインの実現可能性を高めることができます。
自分自身の見解も共有する
質問をするだけでなく、自分自身の考えや経験も適度に共有することが大切です。失敗談でも良いですし、何に悩んでいるのか正直に伝えると、周りも少しずつ心を開いてくれます。
例えば、「想定していなかった使い方をしている人が予想以上に多くいたようですが、これからどういう方針で設計を進めれば良いか迷っています」といった、自分が置かれている状況を伝えつつ、相手の専門的な意見を求めることができます。
「なぜ」質問は極力避ける
「なぜ」は本意を明らかにするための質問ですが、相手を防御的にさせてしまう可能性があります。特に、デザインの判断や技術的な選択について「なぜ」と問うと、相手を批判しているように受け取られかねません。代わりに、「何」「どのように」「どこで」「いつ」で始まる質問に言い換えることで、少し答えやすくなります。
例えば、「なぜこの機能を優先したのですか?」と聞く代わりに、「この機能を優先するにあたって、どのような基準を用いましたか?検討するときに困ったことはありましたか?」と質問することで、選択の背景にある思考プロセスが理解しやすくなります。
質問して行間を埋める
良い質問は、単に情報を引き出すだけでなく、チーム全体の思考を刺激し、新たなアイデアや解決策を生み出します。質問を聞いている周りも「なるほど、そんなことを考えていたんだ」と新たな発見があるはずです。会話を通じて、デザイナー自身もモノが作られる工程全体へ視野を広げることができますし、皆がどんな悩みや葛藤をしながら判断しているかも少し見えてきます。デザインのアウトプットの質を高めるのは、作り方だけでなく、施策の理解度で大きく変わることがあります。
質問力を向上させるには、日常的な練習が欠かせません。あらゆる機会で出くわすちょっとした引っ掛かりに対して質問をしてみてください。もちろん、先述した秘訣を守らずに質問してしまうこともありますし、うまく考えを引き出せないこともあります。たとえ質問に慣れたベテランでも、失敗は避けられないものです。それでも失敗を恐れずに質問し続けることが重要です。
煙たがれるから遠慮してしまうという人は、まずはChatGPTをはじめとしたAIの活用もひとつの手段です。「〇〇についてモヤッとしているけど、どうしよう」といった悩みを打ち明けることで、自分の考えが整理されることがありますし、質問するヒントを得られることもあります。引っ掛かりを放置しておくと、後々自分の仕事に響くので、まず自分の頭の中から吐き出すことから始めてみてください。
質問はただの情報収集の手段ではなく、対話を通じた協働のプロセスです。適切な質問は、チーム全体の思考を刺激し、新たな視点や解決策を引き出す力を持っています。誰もが考えていることを上手に整理して伝えられるわけではありません。どうしても行間のようなものが生まれてしまうからこそ、質問を通してギャップを少しずつ埋めていきましょう。