デザイン作業の効率化のヒントはツールの外にある
自分に与えられた作業領域だけずっと見ているだけだと、全体からみると効果が小さくなる恐れがあります。
作業効率化の限界
私たちデザイナーが効率化したいと考えたいとき、いかに早く仕上げるための手段を探すことが多いです。例えば下記を効率化のための手段と捉えて模索・勉強していると思います。
- 手軽に目的の成果物を作る方法
- ツール特有の機能の利活用
- ショートカットや連携サービスを使った作業短縮
作り上げるという目的をいちはやく達成するために効率化は欠かせません。しかし、上記はどちらかというと自分の持ち場の範囲における効率化です。「デザインを作る」という依頼に対して、早く応えて次の人へ渡すといったニュアンスが強いと思います。
Web サイトでもアプリでも、デザイナーひとりで物事が完結することはマレです。たとえ「デザインする」という仕事を早く終わらせたとしても、工程のどこかでモタつくこともあれば、再び作業が舞い戻ってくることがあります。一所懸命、デザイン作業の効率化しても、なかなか仕事が楽にならないこともあります。
1人のデザイナーとしてできる作業効率化は誰もが試行錯誤しています。ただ、チームの一員として働くデザイナーの効率化はツールや技術をいかに使いこなすかといった視点だけでは達成できません。それに気づかないまま、ひとりでできる効率化に注力しても、求める効果に限りがあります。
効率化を構成する 3 つの柱
プロジェクトを終わらせるという観点から効率化を考えたとき、3 つの柱が効率化を支えていると捉えることができます。
1. 作業
デザイナーやエンジニアをはじめ、何か作る目的がある際に必ず考える部分。ツールや技術に慣れ親しむことでスピードアップしますし、品質向上といった作り切ること以外に時間を割くことができます。
2. 判断
プロジェクトにおける『良い』とは何でしょうか。優先すべきことが何で、どう優先順位が決まったのでしょうか。誰がどのように最終判断を下しているのでしょうか。判断があやふやだと『決め方を決めるための打ち合わせ』といった不毛な時間を過ごすことになり、効率化から遠ざかっていきます。
3. 共有
プロジェクトに関わる情報や成果物はどう共有されているでしょうか。判断基準を用いてどうやってフィードバックがくるでしょうか。プロジェクト中、皆はどのようにコミュニケーションをして、どう信頼関係を築いているでしょうか。「なんとなく言うだけで伝わる」といった関係性は共有がうまくできているからとも言えます。
「作業」「判断」「共有」のいずかが弱くて、効率よく物事が進まないことがあります。たとえデザイナーが高速でモノを作ることができても、判断基準があやふやだと、『決済者の納得感』という謎の基準に合うまでひたすらモノを作るという非効率なやりとりが発生します。判断基準がハッキリしていても、それがドキュメントとしてきちんとまとまっていないことから、デザイナーは手探りでモノを作り続けるといった非効率な状況もあります。
プロジェクトを納得いくかたちで終わらせるための効率化を考えたとき、ツールを使いこなすことの効果はどれだけあるでしょうか。もちろん、ツールを使いこなすことは効率化に欠かせないスキルですが、それ以外の『柱』に取り組んだほうが自身の効率化に繋がることもあります。
共有から始める
ひとりのデザイナーの立場から「判断」に影響を与えるような活動をするのは難しいです。 ディレクターやプロダクトマネージャーが取り組む領域とも言えますし、プロセスそのものの改善が必要になるかもしれないので容易ではありません。だからといって、作業効率化だけ取り組んでいてもいずれ頭打ちします。
ひとりでも始められる活動として、デザイン用のドキュメントがあります。ユーザーの課題は何で、何を解決するための画面を作ったのか明文化に試みると次のステップが見えてくることがあります。ドキュメント共有を起点にして判断や作業効率のヒントを見つけることができます。
ユーザーの課題が分からない場合
- 手段が目的化していないか探ってみる
- 優先すべき課題はどれか聞いてみる
- ターゲットが誰か自分なりに解釈してみる
何を解決するための画面なのか言葉にできない場合
- 課題が間違っていないか確認をしてみる
- 何回か「なぜ」と問いて深堀してみる
- マネージャーと一緒に言葉にしてみる
スケジュールがタイトだと「早く作らなきゃ」という気持ちが先立ちます。早く作ることは大事ですが、少し立ち止まって周りと手を動かす前の思考の共有に時間を割いたほうが良いでしょう。早期から少しでも共有することで、早く作れるスキルがより活きる可能性があります。ドキュメントを作る時間がない(作ることの費用対効果が得られない)のであれば、上記したヒントをチャットに投げてみるのも手段です。
最初は自分にとって使いやすいツールで早く作るにはどうしたら良いかといった、自分の作業領域の効率化で十分です。ただ、自分に与えられた作業領域だけずっと見ているだけだと、全体からみると効果が小さくなる恐れがあります。本当の効率化は自分の目の前以外にあることが多いです。何がプロセスのボトルネックになっているか探してみてはいかがでしょうか。