対話から生まれる今後のビジネス観・デザイン観
従来のやり方は通用しない
上図は Economist Intelligence Unit が 2012 年 11 月に発表した Outside looking in: The CMO struggles to get in sync with the C-suite(PDF)から抜粋したものです。CMO が現状、投資に力を入れている分野と、3 年後重要になると考えている分野の割合を比較しています。あくまで CMO の希望ではありますが、今後のマーケティングの青写真といえると思います。
ソーシャルメディアやモバイルといった新しい分野が伸びをみせていて、ブランド広告が大きく落ちているのが分かります。また、CRMという顧客のデータを管理をする時代から、それらのデータをつかってどのような傾向や対策が見出せるのかという視点に変化しているようにも見えます。このデータから仮説する今後のマーケティングの姿は;
- 企業は顧客との長期的な関係を築こうとしている
- 従来のマーケティングでは顧客に響かなくなってきている
- マスではなく個々とのコミュニケーションを作り出そうとしている
- 人々の消費や行動が変わったので、それに対する新しい視点を求めている
一期一会の手法(ブランド広告)から、顧客の要望にすぐに応えれるような手法や窓口(モバイル・ソーシャルメディア)の設計に移行がはじまっています。
無形の価値観をデザインする
「今のやり方は、今後もずっと正しいのか」
これはビジネスだけでなく、様々な分野に当てはまります。今までは技術を開発し、それが使える製品やサービスを生み出し、広告を通して顧客に使う意味を訴えかけていたところがあったと思います。「なぜ」という問いかけをせず、後付けで意味を加えていたのはビジネスだけの話ではありません。
良いモノを作れば良いという時代から、そのモノを作ることの意味、使う人への意味を早期に問いかけなければいけない時代が来たのだと思います。文化が作り出す利用者との関係 でも解説したように、人はモノだけではなく、体験や文化といった無形の付加価値を同時に求めるようになりました。Pinterest と同じようなモノは作れても、同じように成長できないのは、Pinterest には利用者に使うことの意味を第一に考えたからでしょう。「Pinterest のような UI にして、それに新しい手法も加えよう」という視点とは大きな違いです。
最近よく感じるのは、様々なデータを解析して明確な数値が求められていると同時に、「文化・体験」といった無形な価値観の重要性も高まってきているところです。一見、相反する考え方のように見えますが、今後のビジネス(又はデザイン)において、これらが共存することが原則ではないかと考えています。ただ作り出すことがデザイナーの役割ではなく、作り出すことの意味を考え、それを視覚化し、道筋をつくっていくことがデザイナーの仕事・・・と考えるのであれば、これはこれでデザイナーのあるべき姿に回帰しているだけかもしれませんね。