良い感じに、が通じなくなるとき

小さな組織だと肩書きや世間の定義に囚われることなく、周りとコミュニケーションをとりながら働くシーンがよくあります。そんな現場で働くデザイナーはプロダクトのあり方を深堀するフェイズから入ることが多いですし、実装にまで携わる方もいます。分野を絞ってスキルを伸ばしたい方には向いていませんが、課題発見と解決のための活動に第一線で関わりたいのであれば最高の仕事環境だと思います。

人数が少ないうちは良い感じの間合いをとってコラボレーションする働き方がしやすいです。誰が何をしているかも見えやすいですし、少し話すだけ物事が決まって進んでいきます。

こうした小さな規模で出来ていたことが、人数が増えると次第に難しくなっていきます。組織が大きくなると、様々な領域が重なる兼任業から、特定領域のスキルと経験が豊富な専門業が増えていきます。

小規模で出来ていた『空気を読んで良い感じにコラボレーションする』働き方を、組織が大きくなってからも続けていると様々な課題が浮上します。

  • 期待値のすれ違いで誤解が生じる
  • 新しい人が働きにくくなる
  • 『気が利く人』が便利に使われて消耗する

小さな組織にあるスピード感やコラボレーションのしやすい関係性は大きくなっても変わらず残すべきですが、明文化しなくても通じ合えた『甘え』をそのまま引き継ぐと大きな組織ならではの仕組み、文化、政治によって働き方が制限されることがあります。初期フェイズからしっかり携わっていたデザイナーの仕事も徐々に縮んでいくのもその一例です。

周りが捉えるデザイナーの仕事

初期フェイズから関わることが多かったデザイナーも、組織が大きくなるにつれて次第に「作る」ほうへ比重が高くなることがあります。プロダクトのあるべき姿や施策の優先順位はプロダクトマネージャー(PM)の役割で、デザイナーはそれに対して良い見た目を作るといった関係性にいつの間にかなっていることも少なくありません。

UI と正面から向き合って仕事できるのは素晴らしいことです。デザイナーのあるべき姿のひとつですし、UI デザインに集中できる環境が用意されてるのは人によっては働きやすいと思います。しかし、作る以外にも携わりたいと考えるデザイナーにとっては『閉じ込められた』と感じるかもしれません。

「デザイナー」から「見た目を作る」を切り離して考えられるのはごく一部の方のみです。組織が大きくなり、分業が進むとデザイナーを「見た目を作る担当者」と捉えてしまうのは日本に限ったことではありません。

今年の春に発表された PM and UX Have Markedly Different Views of Their Job Responsibilities は UX デザイナーの立ち位置の難しさが見え隠れします。

Communicating Design and Customer Knowledge
参照: PM and UX Have Markedly Different Views of Their Job Responsibilities 

PM がステークホルダーにデザインの説明すべきだと考える PM は 45% に対し、デザイナーは 5 %。デザインのことはデザイナーが説明すべきだと 76% が考えているものの、周りはそうと思っていないようです。
ユーザーの声の代弁者がデザイナーと捉える PM も少ない (9%)のも印象的です。

Defining IA
参照: PM and UX Have Markedly Different Views of Their Job Responsibilities 

個人的に驚きだったのが、情報アーキテクチャ(IA)について。IA を決めるのはデザイナーの仕事と捉えるデザイナーは 75% と多いですが、それは開発の仕事と捉える PM は 50% いるそうです。デザイナーは「見た目を作るプロ」だから IA は他の方に任せても良いという考えがあるのでしょうか。

このように、デザイナー自身が考えるデザイナーの仕事領域と、組織側が期待する仕事領域にギャップが発生することがあります。組織が大きくなって役割分担が始まると、デザイナーが言う「デザインの仕事」は次第に他のプロフェショナルが受け持つことになります。そうなったとき、デザイナーの居場所はどこにあるでしょうか。

がんばる、では続かない

デザイナーはもっと作る以外の領域へ広げていきましょう!ユーザーと向き合うデザイン提案をしましょう!と言うのは簡単です。多くの方が実践のための知識やスキルはもっていると思います。また、ボトムアップで行動を始めることもできるはずです。

仕事は「やる気」「情熱」だけでは続けられません(なくてはならない大事な要素ですが)。お金や地位など何かしらインセンティブは不可欠ですし、活動をサポートする制度やワークフローを作らなければ、ボトムアップの活動がどんどん沈んでいきます。

上記レポートのようなギャップが見つかった際、デザイナーとして(もしくはデザインチームとして)どうありたいかをリーダー層と共有し、何ができるか一緒に考える機会を作ったほうが良いでしょう。頑張れば誰かが見てくれて、評価してくれるとは限りません。期待値のすれ違いにならないために、組織が期待するデザイナーの役割は何か明文化から始めてるのはいかがでしょうか。