デザイナーなら知っておきたい感情移入と思いやりの違い
重要とはいえ、感情移入(エンパシー)という言葉が多用されることで、意味が薄れてきている側面もあります。
Empathy(感情移入)と Sympathy (思いやり) 。日本語だけでなく、英語でも混同してしまいやすいこの言葉。実は大きな違いがあることを分かりやすく説明しているのが上の動画です。RSA で Brené Brown博士が話した内容の一部が、素敵なアニメーションで再現されています。感情移入とは、相手との繋がりを築いた上で共感すること。一方、思いやりとは繋がらずに一歩離れたところからのコミュニケーションと Brown 博士は説明します。
Brown 博士によれば、感情移入には 4 つの性質が含まれているそうです。
- 相手の視点で周りがみれる
- 決めつけをしない
- 相手が何を感じているのかを理解できる
- 相手の視点を理解した上で対話ができる
よく感情移入はデザインに不可欠であると言われます。重要とはいえ、感情移入(エンパシー)という言葉が多用されることで、意味が薄れてきている側面もあります。利用者を客観的な視点でみて彼らができることを提供するというアプローチだけだと、思い込みによる弊害が生まる可能性があります。特に複数人で開発・設計する場合だと、それぞれが思い思いの利用者像を描いてしまって話がまとまらないこともあります。
ユーザーのことを考えてデザインすることは当たり前です。しかし、開発・設計に携わるひと全員が同じような人間像を描いているとは限りませんし、実感が湧いていないかもしれません。利用者が抱えている問題は自分たちの問題だと受け止めることができるように、ユーザーインタビューや、利用者の観察が必要になるわけです。百聞は一見にしかず。自分たちの目でユーザーの姿をみると世界が大きく変わることがあります。
感情移入をしてデザインに取り組むという考え方は、人間中心設計のアプローチのひとつ。IDEOのようなデザイン会社は設立当初から実践しています。ただ、私たちは Empathy(感情移入)と Sympathy (思いやり)を混同したり、Sympathy だけでデザインしていることがあるかもしれません。
動画でも語られていましたが、感情移入とは生まれつきの才能ではなく、身につけることができる技能であり、選択肢です。2014年に発表された 「Addressing the empathy deficit: Beliefs about the malleability of empathy predict effortful responses when empathy is challenging」という調査結果によると、感情移入は訓練で身につけることができると被験者に伝えたことで、行動や考え方に違いが生まれたそうです。私たちも訓練できると信じて、感情移入したデザインを実践していきたいですね。