イノベーションが続くF2Pゲームの現在と未来
ここ 1,2 年で頭角を現しているソーシャルゲームですが、MMOG (多人数オンラインゲーム) のジャンルから見ると、今の流行の前兆をいくつか見つけることができます。
2005年から運営している Club Penguin (2007年にディズニーが買収) は、ブラウザベースの子供向け MMORPG で、無料で遊べるものの有料会員制も導入しています。ソニーが 2009年か運営している Free Realms は、子供をメインターゲットにしているオンラインゲーム。PlayStation 3, Windows, Mac で遊べる MMORPG で無料から遊べることが出来ます。いずれもノンゲーマーと呼ばれてる人たちからも指示を得ているカジュアルオンラインゲームです。
ソーシャルゲームの定義には様々な解釈がありますが、共にマルチプレイの要素が含まれることがあることから Free to Play (F2P) と混同されていることがあります。Free to Play は無料から始めることができるゲームを指します。無料ではありますが、付加価値を得たり、長く遊ぶにはお金を支払うようになっています。ソーシャルメディアを連携した F2P もありますが、F2P モデル自体は2005年前後から様々な試みがなされています。F2P は正しく使えばゲームの価値を高めますし、未来のゲームを考える上で無視出来ないビジネスモデルです。
MMOGでは、90 年代からある月額モデルから F2P モデルへ移行したゲームも少なくありません。月額モデルでスタートした Lord of the Ring Online、Age of Conan、Champions Online のようなビッグタイトルも、今は無料から始めれるようになりました。ゲームの中には F2P にビジネスモデルを変更したことで利益をあげることに成功しているところもあります。
F2P はアイテム課金によってマネタイズしていると言われていますが、アイテムだけでなくゲームの様々な要素が課金対象になっています。
- ゲームリソース
- 多くの F2P が採用しており、アイテム課金でまず最初に思いつくのがこれ。ゲームをより楽しむために必要な道具や資源を購入できます。
- 時間
- 課金することで遊ぶ時間が増えたり、経験値やポイントの割合が増えるモデル。Battlefield Heroes は、課金すると経験値が一定時間2倍になります。
- カスタマイズ
- 自分のキャラクターの見た目を変えたり、自分の場所をデコレーションすることが出来るようになります。Facebook で話題になった CityVille はこのモデル。League of Legends もキャラクターのスキンを購入できるようになっています。
- コレクター向け
- 普通にゲームをしているだけでは入手出来ない特典付きアイテムの販売。お金で購入したアイテムをオークションできるゲームもあります。
- 機能拡張
- マップやクエストといったゲームを楽しむための要素を販売するモデル。F2P だけでなく、コンソールゲームでも機能拡張できるアイテムを別途販売している場合があります。Call of Duty のマップは「Pack」としてマーケットで販売されています。ゲームによっては、UI を変えたり、ディフォルトでは表示されていないゲームデータが見ることができるアドオンの販売もあります。
- ユティリティ機能
- 広告の削除、キャラクターの作り直し、復活の際のペナルティ排除など、いざというときに便利な機能の販売。これらの機能を買わなくてもゲームは楽しめるけど、じっくりゲームをしたい上級者をターゲットにしていることが多いです。
今後 F2P モデルはどのように成長していくでしょうか。幾つか仮説をたてることができます。
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- コンソールへの移行
- Free Realmsがあるので、新しいわけではありませんが、F2Pゲームが今後コンソールでたくさん遊べるようになる可能性があります。F2Pが単にカジュアルゲームだけでなく、様々なタイプのゲーマーに対して提供できるわけですから、コンソールにあってもおかしくありません。
- 広告モデルの発展
- 特定のジャンルであれば、ゲーム内に広告があっても自然です。Grand Theft Autoは良い導入例ですが、個々のゲーマーにカスタマイズされた広告も今後でてくるでしょう。マイクロソフト社が 2006年に買収したMassiveの技術は、XBOX を中心に様々な場で出てくるでしょうし、広告でゲームの運営することも可能になるかもしれません。
- ゲームの提携/連携
- ゲームAで稼いだお金をゲームBのアイテム課金に利用する・・・そんなことが気軽に出来るようになる日は近いでしょう。コンソールを限定すれば出来ることですが、より大きなネットワークで自分のお金(又はポイント)の利用が可能になるでしょう。
- クリエイティブネットワーク
- 今インディゲームでは、様々なイノベーションが起こっていますが、F2Pゲーム内でもクリエイティブが発生するはず。アイテム・マップ・クエストといったゲームの様々な要素を利用者がつくって売買するためのプラットフォームが出来るかもしれません。
- よりバラエティに富んだギフト
- 様々な形のアイテム課金がありますが、それを友達にあげる手段が限られています。課金したアイテム(時間や機能、カスタマイズなどいろいろ)を人にあげることが出来れば、一緒に遊べる人が増えるはず。オンラインゲームの中にはギフトを可能にしているものも少なくありませんが、バラエティが増えて欲しいです。
今後すべてのゲームが F2P になるかどうかは分かりません。今回紹介したように F2P と一言でいっても様々な価値の提供の仕方がありますし、F2P 以外のモデルも模索されています。Guild Wars 2 のように最初に料金を支払うものの、月額モデルを導入していない大作MMORPGとして注目を浴びています。Star Wars: the Old Republicくらいの大作になると、従来のような月額モデルでも発売1ヶ月でユーザーを 100 万人集めたりしていますし、まだまだ成長できる部分はあるでしょうね。
PC やコンソールで培われた F2P をはじめとしたモデルが、ソーシャルゲームにも採用されていくでしょうし、今後もオンラインゲームは注目していきたいと思います。
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