随分前になりますが、今年の 4 月に Google の Eric Schmidt が Newspaper Association of America の集会で演説を行いました。また、別のサイトで質疑応答の筆記録も公開されています。新聞の発行部数も広告収入も急激に落ちて来ているアメリカでは、Web サイトに様々なコンテンツを掲載し、開けた印象を作り始めています。質疑応答のほうでは良くも悪くも Google 視点な見解と提案がなされていますね。以下に要約をリストアップしておきます。

  • いずれかひとつではなく、広告、購読、マイクロペイメントの3つが収入源になるだろう。しかし、数円から支払えるようなマイクロペイメントを可能にする優れたシステムがない。現状は無料にするか、月額購読という選択肢しかないが今後は変わるだろう
  • Google News は信頼ある発行者の情報のみ検索するシステムだが、Web 検索ではすべての情報が同じアルゴリズムの中でランキング付けされている。信頼出来る情報でも、有名ブランドではないということで下のランキングになる場合もあるが、こうした課題は慎重に取り扱って行きたい
  • 新聞は早くから Web への取り組みをしているが、導入後の考慮が足りない。 Web の読者は何を求めているのか、どのようなスタイルで読んでいるのかを理解しなければならないし、多くのデマンドはテクノロジーを利用することで解決出来る
  • フェアユースは繊細なトピックだが、多くの場合は消費者のデマンドや問題に対してどう応えるかにかかってくる。消費者に対してビジネスをしている以上、それは昔もこれからも変わらない
  • 著作権はデジタルメディアによって浸食されているではない。ユビキタスなインターネットのことまで考え抜かれていない法律システムを再考する時期にきている。もちろん、コンテンツを盗む人や、国外で同じ法律が通用しないことは問題だが、それはデジタルメディアそのものとは別である
  • Google News は様々なニュースをひとつにまとめるサービスだが、ラジオで流れるニュース番組とさほど変わらない伝達方法であり、まったく新しい形といえない。今後私たちの技術や発行者が書く記事が、読者の次のクリックへ繋がるように工夫していかなければならない
  • クリック数や滞在時間は測定項目として有力だが、産業全体として私たちはまだ「これ」といえる測定値をもっていない。雑誌や新聞もそうであったようにインターネットも確立するまでにはまだ何年もかかるだろう

利用者 (消費者) に応えるサービスを提供するという Google の見解は同意出来ます。ただ、結局のところ私たちが仲介してたくさんトラフィックを提供します、というふうにしか読めないのが残念ですね。もちろん Google 側からいえる解といえばそれくらいしかないでしょうけど、新聞 (発行者) 側からすればそれ以上の解が求められます。

いくら、Google からのトラフィックは重要とはいえ、大きな収入は求められません。現状たくさんの広告を表示させるために様々な『工夫』をして収入に繋げていますが、応急処置に過ぎないので「トラフィック=収入」に今後も繋がるとは限りません。利用者のニーズに応えたコンテンツをつくることで Google の検索結果の精度に貢献したという意味でも、検索結果に出て来た広告の何パーセントは発行者側が得れる権利があるかもしれません。

Newspaper Association of America の講演はしばらく前ですが、つい先週 Search Engine Land というサイトで Eric Schmidt のインタビューが掲載されました。基本的に講演のときと変わらないことが書いてありますが、 最近リリースされた Fast Flip が話題に上がっていますね。新聞や雑誌でよくする流し読みをオンラインで実現出来ないかということで登場したサービスですが、個人的にはあまり解とはいえないですね。ただ、Fast Flip で表示された広告が、発行者側の利益になれば良いかもしれません。また、インタビューでも指摘しているとおり、紙のときとは違う新しいオンラインニュースの読み方を提案しなければならないのでしょう。

今のような紙としての新聞が残るかどうかは分かりませんが、新聞という存在はこれからもずっと残るでしょう。Schmidt 氏も言っていますが、個人ジャーナリズムの可能性は否定出来ないものの、New York Times や Washington Post のように信頼出来るブランド機関はこれからも必要とされます。だからこそ、Google は幾つかの提案をしつつ新聞側と良い関係を保ちたいと考えているのかもしれません。ジャーナリズムは今だからこそ重要なのでしょうけど、生き残るための解は Google さえもまだ模索しているといったところでしょうか。