難易度が高いデザインの仕事で行き詰まらないために

指示されたことを黙って作るほうがよっぽど楽と思えるほど難しい課題がデザインに付き纏いますが、行動をおこさなければ自分も組織も後退する恐れがあります。

やりたいデザインができない理由

「〇〇の見た目を良くする」だけであれば、デザイナーひとりでもできるかもしれません。しかし「UX デザインを実践する」「デザインシステムを作る」といった話になると、ひとりではできません。

デザインの文脈で語られるものの中には「作る」だけでなく「変える」といった意味合いが含まれています。例えばユーザーリサーチひとつにしても、ワークフロー、働く姿勢、体制、評価など「変える」ことが数多くあります。また、必要であれば新たなかたちを設計しなければいけません。

「〇〇デザイン」や「UX△△」といったフレーズで語られる様々なトピックは「実践する」「作る」といった部分はごく一部のことで、入り口に過ぎないことが多いです。手を動かすところ以外の人や組織に関わる課題に取り組まないと、続かなかったり、挫折することになります。

こうして文章にするだけであれば簡単です。一度でも何かを変えようと努力したことがある人であれば難しいのは分かっています。ただ、難しいと嘆いて行動しないままでいるとネガティブな感情が溜まるのも事実。

  • 「重要視されていない」という犠牲者意識が根付く
  • 理解していない人を『敵』と見なして対立関係を作ってしまう
  • 対立関係が責任転換へと発展してしまい、行動しなくなる

指示されたことを黙って作るほうがよっぽど楽と思えるほど難しい課題がデザインに付き纏いますが、行動をおこさなければ自分も組織も後退する恐れがあります。

変化が起こらない原因

ある程度経験を積んでいると「以前挑戦したけど無理だったから今回も無理」といった思考がはたらいて行動できない方がいると思います。できなかったという苦い経験は事実ですが、過大評価していることは少なくありません。

  • 関わる人も過去と今で考え方が変わっている
  • 以前考慮していなかったことがあるとしたら何か
  • 運 / タイミングが悪かった可能性がある

また、人であれば誰もがもっている「恐れ」から行動が起こせないこともあります。たとえ効用・効果があっても失うものがあれば行動を起こさない「損失回避」という理論が行動経済学にありますが、何か変化を起こしたいときに必ずぶつかる問題です。ツールの乗り換えが難しいのも、今まで培ってきたスキル・ノウハウを失うことへの恐れからという場合も少なくありません。

変化には何かを失うことが伴います。一体何を失うことを恐れているのか振り返ってみると行動が起こせない正体が明らかになることがあります。表層的な失うものとは別に自分自身の中にある『何か』という場合もあります。

  • 職なのか、気持ちなのか
  • 収入源なのか、プライドなのか
  • 安心感なのか、地位なのか
  • コミュニティなのか、優越感なのか

それでもやるための第一歩

恐るな!とにかく行動!という根性論では続かないので、変化するために今までやってきたことを 4 つ紹介します。

小さな成功は何か探す

例えば「UX デザインができるようにする」はあまりにも大きな目標で、具体性がありません。また、こうした大きな目標は、そこまでやらないと成功とは言えないという厳しい評価を自身にしてしまう恐れがあります。

短期間かつ一人ででもできる成功は何でしょうか。UX デザインであれば、無料かでも使えるHotjarでユーザーの動きを録画して、チームメンバーと一緒に見ながら会話するだけでも小さな成功です。

現状を明文化してまとめる

コンテンツインベントリーが代表的な例ですが、「うまくいかない!」を明文化すると具体的に何がうまくいっていないか分かることがあります。スプレッドシートでまとめるのもひとつですが、場合によっては Miro のようなツールを使ってマインドマップ / コンセプトマップにしたほうが全体像が分かりやすい場合があります。

ドキュメンテーションする

自分はどうやってデザインしているのか。デザインをしている上で何に困ったのかといったプロセスをチームメンバーがアクセスできる場所にドキュメントします。スペックのような実装に関わることだけでなく、思考や進め方も記録に残すようにしましょう。以前紹介したデザインドキュメンテーションは、今でも作るように徹底しています。

社内外で情報発信をする

こうして外向けにコンテンツ配信するだけでなく、クライアント社内向けのコンテンツ配信もしています。組織の課題をストレートに伝えるだけでなく、今周りではこういう動きがあることを自分のコトバで表現することが重要です。

たとえ途中経過でも外に向けて「小さなことだけど挑戦しています」と宣言することで興味を示してくれる社員もいますし同業者へ良い刺激にもなります。

変化とは大きなプロジェクトを立ち上げることで起こるのではなく、小さな活動の積み重ねだと思います。小さなことであれば、恐れも少なくなるかもしれませんし、たとえ失敗しても「仕方ない、次何しようか」という気持ちになりやすいです。積み重ねは地味で短期的な効果が見えないですが、求めている作り方・進め方をするための近道だと思います。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。