知識ではなく知恵を養おう
先日開催された3.4.Uで、サイバーガーデンの益子さんにお会いしました。イベントが始まる前に少し話をすることが出来たのですが、そのとき「知識ではなく知恵を大事にしないとね」という話をされていました。サラッと名言を残し姿を消した益子氏でしたが、よくよく考えてみると仕事においてとても重要な考え方だなと思いました。Webデザインという狭い範囲で考えても当てはまることですね。
他の分野と同様、Webデザインにも幾つかのルールが存在します。検索をすると「すぐ出来る」「知っておきたい」「鉄則」「ルール」あたりの言葉が添えられたノウハウがたくさん出てきますし、書籍も似たような感じです。こうしたルールを示す情報があること自体は重要ですが、これによって本当に「正しいこと」が出来ない場合があると思います。
ルールがある以上、例外は存在します。大まかに「Webサイト」とひと囲みしてもそれぞれ目的や作り方が違うので、ルールに当てはまらない場合は出てきます。製作は決断の連続です。様々な課題に対して何をしたら良いのか考えるときに「ルール」は便利なツールです。しかしルールを重んじるあまりに誰にとっても幸せでない結果になることはあると思います。ルールでは語ることが出来ない「正しいこと」を状況に応じて実践することにより初めて良いサイトになると思います。
しかし、毎回ルールを破って思うがママに作るというのも良くないですよね。崩せるルールとそうでないものは当然あるわけです。音楽をしている方はこのルールと咄嗟の判断のバランスが分かるのではないでしょうか。彼等は楽譜という「ルール」に沿って演奏はしていますが、その場の雰囲気や状況に応じて独自のアレンジもします。それが音楽家としての個性でもあり、素晴らしいと言われる理由のひとつでもあります。彼等はそのときに何が「正しいこと」が何なのかを知っているわけです。
Webサイト制作もルールを意識しつつも、状況に応じて少し崩したり思い切った行動が必要です。それを可能にするには経験も必要でしょう。しかし、それだけでなく今まで学んできた「知識」を応用するための「知恵」を働かせる能力も必要とされます。ルールから少し外れることを推奨し、一緒に議論が出来る仕事環境も良いキッカケになるでしょう。ルールや道具が揃ってきたからこそ、もっと知恵が共有できる勉強会が増えて来たのかもしれません。
デザインにおいて当たり前だった「ルール」と「崩し」のバランス。しかし、データがリアルに出てくるだけでなく、膨大なノウハウが共有される Web では忘れがちになってしまう考え方だと思います。動きが速い Web では「ルール」すら変わってしまうこともあるわけです。仕事、教育においてこのバランスをどう伝えるのか難しいと思いますし、様々な試行錯誤が繰り返されているでしょう。答えもなければ終わりもないですが、常に頭に入れながら仕事をしたいですね。