アウトプット以外のフィードバックを

記事や Twitter をはじめとしたソーシャルメディアで意見を発しているので、仕事現場でも口うるさい(怖いツッコミが多い)ように見えるかもしれません。ただ、実際は聞いたり観察している時間のほうが多く、細かな指示を出すこともありません。意見を出したほうが良いタイミングがなければ、そのままずっと静かにしていることもあります。

特に事業会社で働く UI デザイナーにいえることですが、単に見た目の良いものを作れば実装されるわけではありません。デザインの知識だけでなく、ユーザー、技術、ビジネスそれぞれ考慮する必要がありますし、周りになぜそのデザインが現時点における最適案なのか伝えなければ先へ進みません。

ときどき UI デザイナーから相談やフィードバックを求められることがありますが、下記 3 点を気をつけるようにしています。

黙って最後まで耳を傾ける

当たり前のことですが、意識していないとついつい言ってしまうことがあります。どんなに言いたいことがあっても、デザイナーに最後まで話切ってもらい、それまで黙って聞くことが重要です。ドキュメンテーションも同様で、成果物だけ注目せず、最初から最後まで読み切るようにしています。

デザイナーは何を重要視して作ったのか。そのときどういう表現を使ったのか。どういう構成で話を進めているのかに注目し、デザイナーの視点を一旦吸収します。

思考プロセスを確認する

何を根拠に UI を設計したのか。どういう順序を辿って結論に至ったのか聞き出します。アウトプットの質は思考プロセスが影響していることが多々あります。なので、アウトプットに対してツッコミを入れるより「なぜその見せ方が良いと思った?」といった質問をしたほうが、アウトプットの課題が浮き彫りになります。

見た目やインタラクションのフィードバックが欲しいと言われない限り、思考プロセスの確認に時間を費やしています。思考プロセスが私をはじめ第三者が理解できるものであれば、その結果で生まれるアウトプットはデザイナーの判断に任せるようにしています。

せめてデザイナーにはそこに責任をもってもらいたいですし、先輩デザイナーとしてそこは『任せる勇気』も必要だと思っています。アウトプットにまで細かなツッコミや指示を続けていると「自分はただ指示通りに作っているだけ」という考えが根付いてしまう恐れがあります。新人を相手にするなら細かな指示やヒントをたくさん提供すべきですが、2, 3 年経ってさらに成長していきたい UI デザイナーに対しては『引き際』の見極めが重要です。

明文化のサポートをする

思考プロセスを聞き出すといっても、誰もがきちんと説明できるわけではありません。ドキュメントを書く習慣がないと、うまく言葉にできないですし、自分の思考プロセスそのものをうまく整理できていない場合があります。

デザイナーの思考プロセスの解像度を上げる手伝いをするのが、作り方や見せ方を助言するより重要だと思っています。アウトプットは考えた末の結果でしかないので、結果の部分だけ助言を続けても大きく成長しません。また、デザインをプロダクトマネージャーをはじめステークホルダーとも共有しなければいけないので、同業者しか分からない思考ではデザイナーの信用を失う場合があります。

うまく言葉にできていないところ。整理がついていないところ。何をどう伝えたら良いか分からないところがあれば、それに対して「なぜそう思ったのだろう?」と質問したり「もしかしてこういうこと?」と確認をとりながら明文化していきます。

また、デザイナーの考えが足りないというより、別の課題が原因のことがあります。例えば必要な情報が揃っていない状態で作り切っていたり、デザインの目的の解釈が異なることでアウトプットの方向性が変わってしまったということもあります。情報をもっている人に確認をとりにいくよう助言したり、散らばった情報を改めて整理した上で「もしかすると、こう作ってみると良いかもしれない」といったヒントを探していきます。

焦らずゆっくり

締め切りが近いなかで上記のようなコミュニケーションをとるのは、時間がかかり過ぎて難しいと思います。たとえできたとしても、目に見える結果がすぐに出るは限りませんし、満足いくアウトプットがなかなか出ないこともあります。ソフトウェアの習得と同様、情報をインプットしたらすぐにスキルアップするわけではありません。

記事タイトルに「導く」という表現を使っていますが、自分のなかでは「引っ張り上げる」ではなく「後押しをする」というニュアンスが強いです。人によって異なる思考プロセスがあることも踏まえて一緒に歩ける関係性を築くことが、UI デザイナーの成長だけでなく、自分自身の成長にも繋がると思います。