OpenCUでオンラインゲームについて話しました

8月26日 OpenCU にて WEBの未来はオンラインゲームにあるというイベントを開催しました。昨年の WCAN でゲームをテーマにした講演を行いましたが、Web サイト制作と直接関係ないようにみえるところから、なかなか話す機会がありませんでした。最近は Gamification(ゲーミフィケーション)のような流行語が日本でも聞かれるようになったことから多少話しやすくなったものの、ゲーム的な仕掛け作りだけが学べるところではないと以前から考えていました。今回は仕掛けや UI といった部分以外から学べるオンラインゲーム(MMO)の魅力を話しました。何年も前からオンラインゲームの話をしたいと言っていましたが、ロフトワークさんのご好意でやっと実現した形となります。

オンラインゲームへの興味は、Web にとても似ていたということを発見したところから始まります。常に進化し続けるシステムとコンテンツ、API の公開、カスタマイズ性など、Web そのままという部分が幾つもあります。また、特定のゲームという閉じられた世界ではなく、ゲームの世界を核としたエコシステムが出来上がっているという点も見逃せません。システムが Web と似ているだけでなく、人とのコミュニケーションがゲーム開発と成長の基盤になっているという点もソーシャル時代の Web と共通点があるのではないでしょうか。

もちろん、オンラインゲームといっても千差万別。すべてのオンラインゲームがエコシステムをもっているというわけではありません。中にはゲームの仕組みを利用して、お金儲けだけをするための消耗品のようなゲームもたくさんあります。負の側面はあるものの、Web ブラウザやアプリを触っているだけでは見ることが出来ないイノベーションがオンラインゲームにはありますし、そこから学べるところはたくさんあるわけです。

今回、特に伝えたかったのは(良質の)オンラインゲームにはとも呼べるシンプルな社会構造が存在し、そこでは様々なコミュニケーションがなされています。シンプルなことから複雑なことまで、複数人で何かアクションをするのであれば必ずといっていいほど社交性が必要とされますし、様々な背景をもった人をもった方が同じ世界でゲームをしていることを前提として話さなければいけません。

ゲームを遊んでいる者同士だけでなく、プレーヤーとゲーム開発者もほぼ毎日対話があるのも重要な点。次のリリースに関する情報公開だけでなく、プレーヤーの質問・不満への返答、変更の意図などきめ細かな対応がなされています。ゲームによってコミュニケーションの手法は異なりますが、ブログやフォーラムなど様々なツールを活用していますし、そこでの対話がゲームの改善に繋がることがあります。

石器時代の経済学石器時代の経済学」という書籍に「貧困は 人間関係から生じる」という言葉あります。現代社会において人との繋がりが弱くなっているからこそ、オンラインでの対話が充実と感じるのかもしれません。オンラインのシステムをどう実世界へ繋げるのかが今後の課題です。

オンラインゲームは小さな社会(ソーシャル)であり、社交性をなしに語ることが出来ないジャンル。オンラインゲーム上でのリーダーシップはビジネスにも役立つのではないかと考える方は少なくありませんし、「7つの習慣」のような書籍がオススメ本として紹介される理由は、それほどオンラインゲームには社交性が欠かせないからでしょう。10年以上続くオンラインゲームは幾つかありますが、それでも遊び続けている方がいるのは、実世界に似た社会構造と人との繋がりがあるからかもしれません。

今後、ソーシャルメディアがソーシャルシステムとして実世界にも欠かせない存在になるのであれば、オンラインゲームに存在する社会構造と人々のコミュニケーションの仕方は参考になるかと思います。

私たちWebデザイナーは、ゲーム的な要素を組み込んだ機能を追加していくのではなく、利用者と正面から対話をし、彼等の補助となるような方法を模索しながら作り続けることになるでしょう。

当日流れたツイートはTogetterにまとまっていますし、Ustream で録画も見ることができます。講演のときにつかったスライドも SlideShare にて公開してあるので、参考にしてください。

ゲームプレイの進化を検証するという側面でオンラインゲームをみるのも楽しいですが、開発者とプレーヤーがゲームの世界を中心に、どのような『社会』を形成していくのかを見ることで新たな視点が生まれます。OpenCU で情報を出し切ったわけでもないので、オンラインゲームに関する記事はこちらで書き続けようと思います。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。