本を自由にした Project Gutenberg
Project Gutenberg をご存知ですか?
1971年マイケル・S・ハートによって始まったプロジェクトで、著作権の切れた名作などを無料で公開しています。似たようなプロジェクトは国内外で立ち上がっていますが、これが最も古い電子図書館として知られています。今年の7月でちょうど 40 年になりました。
現在、36,000 冊以上の電子書籍が無料で公開されており、今出回っている電子書籍リーダーほぼすべてに対応しています。ほとんどの電子書籍が HTML かテキストファイルで公開されているので、読めないデバイスはないといっても過言ではありません。数は少ないですが日本語の書籍も幾つかあります。
まるで Wikipedia のように参加型で徐々に電子書籍の数を増やしてきた Project Gutenberg。今なぜこの話題にふれているのかというと、9月6日に創始者のハート氏が他界したからです。享年64歳。
グーテンベルグが15世紀に活版印刷を発明したことによって、一部の富裕層しか触れることができなかった書物が、多くの人へ広まるキッカケをつくりました。今はわずかなお金で買うことが出来、書物は当たり前のような存在です。本の存在を大きく変えたグーテンベルグの名前をとって作られた Project Gutenberg。このプロジェクトは書物ですら届けることが出来なかった人たちへ本(言葉)を届けることを可能にしたという意味で活版印刷に匹敵するインパクトがあると思います。
ハート氏は1995年に「A Brief History of the Internet」という書籍を刊行。Project Gutenberg でダウンロードすることが出来ます。そこにはすべての人へすべてのモノを提供するという ハート氏の思想が書かれています。彼の考えは Web が社会の一部となった今でもインパクトがありますし、それを Project Gutenberg を通して長年実践していたのもスゴいですね。
今、日本でも電子書籍は熱い視線が注がれています。
混在するデータフォーマットやビジネスモデル。「本をひとりでも多くの方へ届ける」「本を自由にする」というハート氏の思想とは真逆にあるようなことがニュースに流れたり製品/サービスとして販売されていることがあります。もちろんビジネスとして成り立たなくては本が流通しなくなりますし、作家も食べていけなくなります。しかし、本を出す側の都合ばかり考えしてまうことで、本そのものの役割が失われることもあるのではないでしょうか。
ハート氏の意思を受け継いだ電子書籍の世界が、日本そして世界で育まれていくことを願います。