今時のプロトタイピング
ページベースの Webサイトを制作するのであれば、多くの方が利用出来るということも含めて PowerPoint や Keynote といったプレゼンテーションアプリが最適だといえます。しかし、Ajax や Flash を利用したページを移動することなくデータにアクセスするサイトや Webアプリケーション、ショッピングサイトのような会員/非会員によって異なるコンテンツやフォームを必要とするサービスでは、ページベースで Webサイトを考えるのは困難です。
ユーザーテストをする際も PowerPoint や Keynote では難しい場合もあるでしょう。共に高度な描写が可能になり見た目の質は高くなりましたが、クリックしたときの動作や、「戻る」「進む」のようなブラウザを介した操作、そしてマウスやキーボードを使った操作までテストすることが出来ません。ページベースでプロトタイプを作るのでインタラクションも平面的になってしまい、テストをしながらプロトタイプを改善させるには少し物足りない場合も出て来るでしょう。
以前、「よりリッチなWebサイトプロトタイピング」で紹介した Axure はひとつの解といえるでしょう。Ajax のようなダイナミックなインタラクションをプロトタイプに付け加えることが出来るだけでなく、サイトマップやフローチャートとプロトタイプと連動させて作ることが出来ます。作成したプロトタイプはブラウザ上で観覧出来るのでユーザーテストも難しくありません。
Axure よりハイエンドなプロトタイピングアプリケーションを探している方は iRise は必見です。最大の特徴はワイヤーフレーム、ユーザーテスト、サイトの評価といった UX デザインに必要なことがすべてひとつのパッケージになっているところでしょう。Axure にはないプロトタイプに使うウィジェットの共有や、リアルタイムでプロトタイプを修正/変更することが可能です。サーバーサイドにプロトタイプやレポートがアップロードされているので、メールをつかった無駄なやりとりをせずに情報共有が可能ですし、ユーザーテストもリモートで行うことが出来ます。iRise の唯一の『弱点』は最も安いプランでも 5,000ドルするところでしょうか(Axure は 600ドル)。
プロトタイプを作るツールを決めるとき、誰に何を作るかに注目すると良いでしょう。Webアプリケーション開発でも、プロトタイプに触れる方が同僚やアプリケーションに関する深い理解がある方であれば PowerPoint でも十分です。また、何度も使えるライブラリを用意出来たり、文書化するときに簡単にデータを書き出し出来るかも重要な点になってくるでしょう。プロトタイプを作るのは一見『手間』のように見えますが、ビジュアルやHTMLのコーディングを終えてから変更するコストを考えると有効な投資といえます。