レスポンシブWebデザインから始まる適応への道

レスポンシブ Web デザインは、良くも悪くも Web デザイン/Webサイト制作の根底にあった課題を明るみにしたと考えています。変わりゆく世界に適応するにはどうしたら良いのか。これは制作サイドだけでは大き過ぎる課題です。

2月22日 Web担当者Forum 主催のイベント 企業サイトのスマホ“対応”とその一歩先の”最適化”とは? に登壇させていただきました。今回はレスポンシブ Web デザインの話題を中心に、Web への窓口がますます増える今後にどう対応していけば良いのかを、技術・デザイン・企画・そして具体的なソリューションなど様々な視点で講演されました。

今回は、先月執筆したレスポンシブにデザインするために克服することをキッカケで話すことになりました。「未来へレスポンシブに対応するための設計と戦略」と題して、スマートフォンやタブレットだけでなく、もう少し視野を広げてレスポンシブの実現について話をしました。

クロスオーバーする時期が来た

制作者向けのセミナーであれば、レスポンシブ Web デザインを語るのにふさわしい人は他にいると思うのですが、今回は Web担当者Forum という制作者以外の方が多く参加されるセミナーだったので講演が楽しみでした。

実のところ、Media Queries を利用したレスポンシブ Web デザインの制作自体はそれほど難しい話ではありません。では、何が難しいのかというと、設計の部分であったり、ワークフローであったり、可変するデザインへの理解であったり、ビジネスモデルなど、作る以外のところで、つまずくところが多々あります。

Android 各機種で見た目が違うのは当然ですし、パソコン用に特化したとしても違うものです。Web は利用者のコンテキストに合わせて最適化した形を提供することができる媒体です。つまり、制作者側の都合で見た目をコントロールすることを得意としないわけです。紙媒体がアニメーションをしないのが特徴であるのと同じように、見た目のコントロールがきかないのも Web の特徴であるわけです。

しかし、この Web の特徴がうまく理解されないまま、見た目を同じにする作業が今も発生している場合があります。このままでは、レスポンシブ Web デザインの実装は不可能に近いといえるでしょう。たとえ、レスポンシブ Web デザインにしなかったとしても、この課題はいずれどこかでぶつかります。

今回の講演では、制作者以外の方が多い中、制作者の事情というのを多く語りました。これは、私の中では歩み寄りのジェスチャーと考えています。Webプロフェッショナルから見た今の Web の事情を伝えることで、現状の課題を洗い出し、今までとは違う新しいポジションを作っていこうというのが今回のメッセージです。

作り方、完成品、共有方法など、今までの固定概念を取り払って、今の環境に適応する形で私たちも変わる(レスポンシブになる)必要があることが伝えたかったところです。受注体制、打ち合わせ、役職、部署、書類などコミュニケーションの壁になるところは幾つかあります。これらの壁をなるべく取り払わなくては、レスポンシブ Web デザイン・・・だけでなく、今後の Web サイトの構築は難しくなるかもしれません。触らなければ分からない、体感して気付くことが増えていく中、膨大な書類や静的なカンプは限られた時間を圧迫する要素になるかもしれません。

今までこうやってきたから・・・と言っても、世界はもう変わっているわけです。では、適応するにはどうしたら良いのか。これは制作サイドだけでは大き過ぎる課題です。そこで、今回のセミナーのように様々なポジションの方がクロスオーバーするところでメッセージを投げかけることに意義を感じました。

削ぎ落とされて残るもの

スマートフォン対応、タブレット対応・・・と言っていられるのは、あと1, 2年ではないかと考えています。今年の最初に Everyscreen(スクリーンワールド)というキーワードを提示しましたが、今年からさらに Web の情報が見れる場が増えていきます。今年は Siri の日本語版も出ると噂されているので、昨年執筆した未来のコミュニケーションの意味を実感する機会が増えてくると思います。サイトという枠組みをもつ有形なものから、音声のような無形のものまで『Web』になります。構造がある、レイアウトがあることだけを Web デザインと呼ぶわけではないのかもしれません。

今後ますますスクリーンは増え続ける中、何をデザイン(設計)していくのか、何をブランドアイデンティティとして伝えることができるのでしょうか。それが コンテンツではないかと考えています。そして、マークアップという枠組みをもつことで、デバイス/サービス/ソフトウェアに柔軟に対応できるようになると考えています。レスポンシブ Web デザインより、少し視野を広げて考えるのであれば、コンテンツという資産をどう管理して、様々な場で配信していくのかを設計する作業を今から始めるべきだと考えています。

レスポンシブ Web デザインは、良くも悪くも Web デザイン/Webサイト制作の根底にあった課題を明るみにしたと考えています。制作者側視点だけでなく、広告やマーケティングの視点から見てもそうだと思います。レスポンシブ Web デザインをキッカケに「何を変えるべきなのか」「どうやれば変われるのか」「何から始められるか」といった部分の議論が様々な分野でなされれば良いなと思っています。

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
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