デザインが理解されないと言いますが
ビジネスと共生関係の中で
「デザインが理解されない」
「ユーザー調査させてくれない」
「時代に合う作り方を実践したい」
こうした声をオンライン、オフラインでよく耳にします。孤独の戦いを強いられているからこその悩みという場合もありますし、いろいろ模索した末の声ということも少なくありません。また、私自身試行錯誤しながら実践しているところはあります。「理解されない」という声を発する気持ちは共感できるものの、以下の質問にあなたならどう答えるでしょう。
- もし、デザインが『理解』されたらどうしますか?
- 理想の作り方ができれば今よりビジネスに貢献できると言い切れますか?
- 具体的な効果があることを証明することができますか?
デザイナー視点の優先順位がビジネス側の優先順位とうまく噛み合っていないまま「デザインは重要」と言っても伝わりません。そもそもビジネスにおいて、デザインはもちろんエンジニアリングもセールスもマーケティングも経理もすべて重要です。デザイナーはデザインのことだけ考えていたら良いという特別扱いはできないわけです。
私はデザインの仕事はビジネスに貢献するものだと思っています。利用者の欲求やニーズに応えるためのデザインがなければ、売り上げが立たないこともあるはずです。また、ブランディングのような数値化が難しいエモーショナルなところを追求できるのもデザインの強みです。一方、ビジネスへの貢献の見通しがない活動ばかりしていると食べていけなくなりますし、周りからも「あの人、何しているの?」と思われるかもしれません。
特に事業会社ではビジネスとデザインは共生関係なので、デザイナーもビジネス戦略の理解は不可欠になります。そうしないと、独りよがりの意見に聞こえてしまい、結果的に「デザインが理解されない」ということになります。
続けることが理解への近道
昨年から全国各地で「デザインの伝え方ワークショップ」を開催していますが、デザインを語らずデザインを伝えるためのトレーニングとして好評をいただいています(今、東京開催を準備しています)。「ユーザー調査がしたいです!」というストレートな提案ではなく、どのようにビジネスと結びつければステークホルダーが納得するのか考えなければいけません。
例えば、プロダクトの価値をひとつひとつ分解することで、定量・定性調査するべきポイントが見つけやすくなります。プロダクトを良くするための調査をしましょう … では具体性がないですが、プロダクトの価値を分解していくことで何を調査すればどのような効果が得られるのか仮説しやすくなります。
上記のような手法が成功することもあれば、うまくいかない場合もあります。組織の規模、プロダクトの成熟度、自分が置かれている立場などを考慮しながら伝え続けることが重要です。どの組織にも効果的な万能薬(手法)はなく、それぞれ抱えている『容態』をみながら試していくことになるでしょう。うまくいかなくてもすべてが無駄になることはなく、続けることでジワジワと効用があらわれるはずです。
ビジネスの課題を引き出すことが UX デザインの第一歩ですが、デザインの伝え方にも同じことが言えます。自分たちの仕事の重要性を訴えかけるのではなく、ユーザーはもちろんビジネスにどう貢献できるのか伝えるようにしていきましょう。