ニュースの理解が深まるタイムツリーコンセプト

今のニュースサイトの情報の見せ方は、Web 利用者のニーズに応えているとはいえません。時系列と、派生するストーリーを一望ですことができる「タイムツリー」にすることで、スピードが速く情報量が多いニュースも追いかけやすくなると思います。

リアルタイム時代に必要なニュースUI

新聞サイト・ニュースサイトは、基本的に「記事」という情報の単位をもつことを前提にしています。そして、記事という単位を時系列やテーマ(カテゴリ)別で表示できるように CMS でコントールしています。こうした見せ方は情報サイト全般で扱われていますが、今のニュースのスピードや Web 利用の変化と照らし合わせると、記事という情報単位があまりにも大きく柔軟性が乏しく感じることがあります。現在のニュースサイトのコンテンツに起こっている現象が幾つかあります。

  • 速報ですら記事にしないといけないので、200文字程度のページが存在する
  • 記事というタイトルとテキストを必要とする『入れ物』があるため、テキストだけ、ビデオだけ、写真だけといったコンテンツタイプの格納がしにくい
  • ソーシャルメディアでブレイクしたニュースに追いつけない
  • ニュースサイトのリアルタイムと、人が体感するリアルタイムは異なる。ニュースサイトが提示する「最新情報」が人が感じる最新とは限らない
  • ひとつの出来事が地続きで繋がっているものの、利用者はトピック/タグで絞り込んで検索が必要になる
  • 時系列で記事は見れるが、出来事がどのように進んで発展しているのか分かりにくい
  • 人はセンセーショナルなひとつ話題に食いつくが、話題を取り巻く全体像を読み取れる場が少ない

以前(といっても 2008 年ですが)ニュースの特集ページをモックアップしたことがあります。これもひとつの解決案だと思いますが、よりリアルタイム制が要求されていること、どのように発展しているのかを表現するには、新しいアイデアが必要ではないかと考えています。

ヒントになるのが Facebook の Timeline のような見せ方。あちこちに目が移動するので、ニュースの観覧には適していないものの、時系列の見せ方、大きなイベントが起こったときの扱い方、そして様々な情報体型を取り込む形は参考になります。

時系列に並ぶ縦軸と、ある出来事から派生する横軸

課題になるのが、ニュースは時系列で並べれば良いわけではないという点。例えば 福島原発の話題を扱うにしても、原発の状況から東京電力の対応まで派生するストーリーが幾つかあります。つまり、上から下へ流れる縦軸のニュースだけでなく、ある起点から派生し、発展する横軸の流れがあります。ある出来事をツイートして、その数時間後にコラムとして掲載するという流れも考えられるわけです。

ひとつのテーマを「木」と見立てて、全体像をみることが出来るのではないかと考えています。様々な情報が時系列に流れつつも、枝分かれしていく・・・タイムラインというよりタイムツリーをイメージしています。

タイムツリーコンセプト

タイムツリー側ニュースサイトのUI制作したモックアップ。クリックすると全体像を説明を読むことができます。

タイムツリーは2カラム構造になっています。左側の幹にあたるカラムは、記者やキュレーターが配信するリアルタイムの情報。ここでは記事、メッセージ、ソーシャルメディアの情報など、テーマを知ることができるコンテンツが時系列に並びます。右側の枝にあたるカラムでは、左側での出来事を深く掘り下げたり関連した情報が並びます。YouTube で公開されたクリップが、記者の視点からどう映ったのか、Web で見かけた気になる反応が右側に『枝』として表示されます。

こうしたページをソーシャルメディアで共有したりフォローすることで、自分が追っている情報が、数日後どのように成長しているのか見ることができます。ニュースサイトのトップページのような新着リストでは、「なぜこうなったの?」が理解できないことも、タイムツリーを追うことで、理解が深まる可能性がでてきます。
また、キーイベント前後に何が起こったのかも理解しやすくなるので、遅れてテーマについて読み出した人も追いかけやすくなると思います。

右側にあるナビゲーションを利用することで、キーイベントに移動しやすくなるだけでなく、その周りでどのような情報は発信されているのかも分かりやすくなります。

ニュースを配信する記者も、「記事を書く」という概念に囚われる必要がなくなり、読者が知るべき情報の断片を発信し続けることが出来るようになります。ストーリーが発展した時点で、改めて記事を書いたり、関連リンクを紹介するといった配信も可能です。ひとつのテーマに1人の記者だけが携わっているということも少ないですから、キュレーターを含めた数人でタイムツリーを管理することも考えられます。

ワンソース時代ではないからこそ

新聞サイト・ニュースサイトは、今でも紙の新聞の概念を引きずっています。子供の頃であれば、地元に強い一社の新聞を読んで今を知ることが当たり前でした。しかし、今はひとつの新聞サイトやニュースサイトだけに留めて情報収集するということはまずありません。数十、又は数百の情報を見て自分なりの考えを構築します。

今でも読者は自分たちのサイトだけで情報収集をしているような振る舞いをすることがあるニュースサイト。これは今の情報の消費の仕方とズレを感じます。日本の新聞サイトが次々と有料の壁を作り出して、独自の価値を生み出そうとしてはいるものの、今の Web 活用者の利便性を少し損なうだけで、他にもいくらでも情報ソースはあるという事実から逃れているように見えます(もちろん質の問題はありますが)。

ニュースサイトが Web ならではの価値を生み出すには、記事という箱を取り払うことによって、情報のスピードを上げたり、サービスプロバイダーとしての役割を果たすことだと思います。今もつニュースサイトの課題を解決するひとつの方法として、タイムツリーのようなページは役に立つのではないかと考えています。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。